元気なインフラ物語

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2024.09.09

③インフラ整備と脱炭素

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>細田 暁氏

横浜国立大学大学院
都市イノベーション研究院教授
豊穣な社会研究センター長

細田 暁

はじめに

 インフラ整備のように、膨大な資源やエネルギーを使う営みは,いわゆる「脱炭素」とか「カーボンニュートラル」という騒ぎと無縁ではいられません。本稿では,これらの造られた世の流れの中で、我々がどう振る舞うべきか、私が勉強してきて到達した考え方を示します。真に日本社会が良くなるためのヒントにしていただければ幸いです。なお、下記の文章は、私のブログで2021年11月29日に公表したものを加筆修正し、写真などを付け加えたものになります。私の考えは当時から変わりません。

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整備するときの資源やエネルギーを節約することが重要

 このエッセーでは、私個人のCO2削減や脱炭素という社会の大きな流れに対する考え方を述べます。

 まず、私は脱炭素、CO2の排出総量削減、ということ自体を目的として社会を運営すること、研究を推進すること、に反対です。

 私がそう考える根拠は、渡辺 正 著の「地球温暖化狂騒曲」-社会を壊す空騒ぎー に定量的なデータとともに整理されているので、ぜひご一読ください。

 以下の具体的な説明を始める前に、「CO2の排出量」と「CO2の排出総量」は異なる概念であること、にご注意ください。例えば、日本国家の「CO2排出総量」であれば、日本国家のありとあらゆる活動から排出されるCO2の総量になります。私が反対する「CO2の排出総量を減らすこと」は、現代社会で言えば、GDPが減ることとほぼイコールになります。すべての社会活動は炭素エネルギーを母体としていると言って過言ではなく、現代ではほぼイコールになります。遠い将来は、実力のある代替エネルギーが出てくれば、状況が変わってくるでしょうね。

 さて、具体的な説明を始めます。

 CO2の大気中の濃度がこの50~60年、増えてきているのは間違いないようです。それが悪いのか?ということですが、CO2の濃度が増えたから気温が上がっているという短絡的な因果関係には反対している科学者がたくさんいます。そして、CO2の濃度が高くなったことで、実は森林の面積も世界全体では大幅に増えています。農作物が育ちやすくなる(CO2は生物にとって恵みの物質です)ので、人間が生活する環境としては、良くなる方向に進んでいます。詳しくは上述の著書をご覧ください。大気中のCO2の総量を減らそうとする「CO2の排出総量」を削減する、という方向性は、農作物の生産性が低下するなど、生物にとって生きにくい方向に進むため、この観点からも私は「CO2の排出総量」の削減に反対です。

 ですが、気にせずに「CO2排出量」をどんどん増やしてよい、資源は好きなだけ使ってよい、などとは私は微塵も思っていません。

 現代社会は、コスト≒CO2排出量(エネルギー使用量)と考えてよい状況です。例えば、ある土木工事をやるとして、同じ成果物を得るためにかかるコストを削減する、ということは、その土木工事で消費されるエネルギーを減らす、ということです。より少ない資源、エネルギー、時間、コストで同じ成果を得ることになるのです。これを「生産性向上」と言います。これが今の日本に最も求められていることです。それは、生産年齢人口が急減してきている状況なので、自明でしょう。高速道路や新幹線など、新たなインフラを整備することには膨大な資源やエネルギーを使いますが、その整備の後、私たちの社会の生産性が向上するのです。整備するときの資源やエネルギーを節約すれば、トータルではより効率的になりますね。

 個別のプロジェクトでは、CO2排出量を減らす方向性が良いのです。この点が、「CO2の排出総量」の削減に反対を唱える私の主張が、世の中の大半の方々になかなか理解されない点なのですが、極めて重要なポイントです。

 ある例を示します。例えば、1兆円もかかる巨大土木プロジェクトがあったとしましょう。羽田空港のD滑走路の工事はそのような規模でした。結果的には、様々な工夫により、6,000億円程度で完成したようです。40%程度ものコスト削減は、最先端技術を組み合わせたことによる技術者たちの工夫が最大の要因でした。当然、CO2排出量も減ったことでしょう。さて、「浮いた」4,000億円をどうすればよいのでしょうか?ドブに捨てれば、CO2排出総量は減ります。そんなバカなことをする人はいないでしょうね。4,000億円は、新たな投資に使えばよいのです。災害が激甚化している、というのであれば防災対策に投資すればよいではないですか。(温暖化で災害が激甚化している、というのもどうも怪しい話で合って、渡辺先生の著書にいくつものデータと考察が示されています。地球の温度を下げようなどと考えるのではなく、災害対策にしっかり投資されてはいかがでしょうか?)


写真1 建設中の羽田D滑走路(奥の桟橋構造のスラブに,繊維補強の超高強度モルタルのプレキャストパネルが使われ,
桟橋を支える杭の本数が劇的に減少し,施工費が大幅に低減)
写真2 桟橋構造(杭も防食のためのチタンの塗装がなされている。メンテナンス費用の削減のため)

写真3 左側の桟橋構造と右側の埋立て盛土構造の接合部
(すべてコンクリート。左は鹿島の柳井さん。横浜国立大学OBで,筆者が主査で博士号を取得)

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