2024年春のNEXCO中日本金沢支社大規模更新シリーズ④ 北陸自動車道富山IC~立山IC間布市橋(下り線)A1~P2間の床版取替

2024年春のNEXCO中日本金沢支社大規模更新シリーズ④ 北陸自動車道富山IC~立山IC間布市橋(下り線)A1~P2間の床版取替
2024.11.28

県道を跨ぐ橋梁、クリアランス余裕も少ない

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NEXCO中日本 大規模更新
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 NEXCO中日本金沢支社では、今春、北陸自動車道富山IC~立山IC間に架かる布市橋(下り線)A1~P2間の床版取替工事を行った。同橋は1980年に昭和53年道示に基づいて建設、供用された2径間連続非合成鈑桁橋でA1~P1が径間長23.3m、P1~P2が径間長29.3m(いずれも全幅員は11.9m、有効幅員は10.76m)で、P1~P2間は富山県道43号富山上滝立山線を跨いでいる。そのため、足場などを組む際や床版の撤去・架設に際し、県道への影響を最小限にする様々な工夫を施している。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)

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床版防水工も未設置、床版下面では浮きはく離、上面は土砂化も

凍結防止材散布量も多く、大混率も3割近くに達する

床版防水工も未設置、床版下面では浮きはく離、上面は土砂化も

橋梁概要および損傷状況
 同橋は1979年12月に竣工し、44年が経過している。1日交通台数は22,009台で、大型車混入率は27.3%に達する。既設床版の厚さは240mm、主桁本数は4本で主桁間隔は3,060mmである。さらに上部工の床版については大きな補修補強履歴はなく、床版防水工も未設置であった。さらに供用以来の凍結防水材累積散布量は1543.7kg/tに達していた。

 損傷状況を調べると床版下面では浮きはく離が生じていた。高欄は表面保護工を施工しており、大きな損傷は見られない。施工にあたり舗装を切削したところ、舗装がポットホールを起こしていた箇所で床版上面が土砂化していた。主鉄筋においては、下側鉄筋はそれほど損傷していなかったが、上面の鉄筋は錆が生じており、一部で水平クラックも出ていた。同IC間で同様に床版取替を行った田添高架橋では大きな水平クラックが生じていたそうだ。


施工前の舗装表面 / 切削後の床版上面(いずれもNEXCO中日本提供、以下注釈なきは同)

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厳しい斜角に配慮した床版打替えを行う

基本直橋配置とし、端部のみ台形版および現場打ち施工部を設ける

構造概要
 同橋は斜角が73°15’と厳しいため、それに配慮した床版取替(一部打ち替え)を行っている。勾配は横断が2%、縦断が1.3%となっている。床版は基本直橋配置とし、端部のみ台形版および現場打ち施工部を設けている。直橋配置となる床版は全て壁高欄一体型とし、全幅員で配置し、設置、間詰めコンクリート打設後は縦締めで標準版部全長を一体化した。端部の台形版および現場打ち部との継ぎ手構造はエンドバンド継手を採用している。さらにA1側は維持管理性の向上を図るため約3mの延長床版を採用しており、同部分もプレキャストPC床版を用い、継ぎ手構造はエンドバンド継手を採用している。


斜角が73°15’と厳しいため、それに配慮した床版取替(一部打ち替え)を行っている

継ぎ手構造はエンドバンド継手を採用(井手迫瑞樹撮影)

取替えるプレキャストPC床版重量は最大約23t

桁下が県道であり夜間交通規制が必要な箇所も

施工はまず足場工を

 施工にあたっては、まず規制前の3月ごろから足場組立を開始した、桁下条件からA1~P1は昼間、P1~P2は夜間に組み立てを行った。

 足場架設完了後、5月21日から対面通行規制による床版取替を開始した。まず路面切削を行った後、既設床版撤去用の吊り孔をつくるためコア削孔を行い、同時に床版端部、地覆・壁高欄はワイヤーソーで吊切って撤去した。


床版撤去状況


 床版撤去は、A1およびP2側の両側に220tオールテレーンクレーンを配置して吊り撤去および取替プレキャストPC床版の架設を行った。まず撤去は、橋軸方向に半分割(6,000mm)、橋軸直角方向に1,900~2,000mmを1ブロックとし、橋軸直角方向と幅員の中央(4主桁の中央部)にカッターを入れたうえで、センターホールジャッキを用いてはく離させ撤去した。


床版撤去図


 床版の撤去架設は取替床版パネル換算で1日平均4枚ずつ施工していった。取替えるプレキャストPC床版のパネルは1枚当たり橋軸2,350mm×橋軸直角11,650mm、重さは最大約23t(定着部を有する端部版のため最大床版厚は320mmとなる、標準版は床版厚220mmで約20t)というサイズである。壁高欄も一体成型した形で架設している。


床版架設図


 本工事では取替プレキャストPC床版パネル換算で24枚分の架設(台形版、延長床版を含む)を行うが、最初にP1を基点とした中央部24ブロック(A1側およびP2側とも12枚ブロックずつ(取替パネル換算6枚ずつ)を撤去しておき、その上でプレキャストPC床版を設置した。プレキャストPC床版の重量を考慮した作業半径で撤去枚数と設置枚数を決めた。


床版架設状況  (上左)壁高欄一体型のプレキャストPC床版の架設、(上右)台形版の架設
(下左)現場打ち部、(下右)延長床版部のプレキャストPC床版

延長床版部(井手迫瑞樹撮影)


 その後はA1ないしP2側にクレーンが下がりながら撤去・架設を繰り返していく。施工は1日目A1側4枚、2日目P2側4枚という順番で施工していった。P1~P2側は基本、撤去も架設とも夜間施工とした。これは、桁下が県道であり、旋回の際にどうしても床版が県道直上を通過するため、第三者被害を想定して施工時に県道の夜間通行規制を必要としたためである。A1~P1側はそれがないため昼間に撤去・架設が行える。

 プレキャストPC床版の目地モルタル打設、縦締め緊張は標準版(20枚)の架設完了後に行った。縦締めPC鋼材はA1~P1が12本、P1~P2が13本配置されている。縦締め緊張後は版下モルタルを打設し、桁と床版を一体化した。

 最後に両端部については台形版を1枚ずつ架設、僅かな部分について調整用の現場打ち打設を行い、A1側には延長床版をさらに2枚架設して、床版架設を完了した。本工事では伸縮装置も取り替えるがA1側は延長床版の背後(パラペットより約3m土工側に設置)となり、橋台部への漏水などを抑止できることから維持管理性の向上が期待できる。

 伸縮装置の取替は、A1側は製品ジョイント、P2側は鋼製フィンガージョイントにそれぞれ取り替えた。

 各工程に要した施工日数は、舗装撤去1日、床版撤去7日、床版架設8日、目地モルタル2日、緊張1日、場所うち床版18日、場所うち壁高欄9日、床版防水工5日、舗装基層5日、舗装表層3日、ライン引き仮設防護柵撤去等3日で、対面通行規制の開放完了は7月24日に行った。

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