名高速 高速16号一宮線一宮中入口~清洲JCT間(上り線)延長約8.9kmのリフレッシュ工事を実施
名古屋高速道路公社は、2024年11月2日~11月10日にかけて高速16号一宮線一宮中入口~清洲JCT間(上り線)延長約8.9kmのリフレッシュ工事を車線規制及び全面通行止めして施工する工事を行った。RC床版では床版の補修、複合防水の設置、舗装の打換え、路肩コンクリート撤去、鋼床版では舗装の打換えおよび路肩グースの撤去を主とするリフレッシュ工事を実施するもの。通常は1週間程度全面通行規制下での施工であるが、今回は延長が長く、一宮中入口を閉鎖するため、同東入口からダンプなどの入口や、Uターン路を確保しなければいけないことから、リフレッシュ工事期間中には手を入れることができない東入口付近および、一部の走行車線部を先行して補修した。工種は舗装打換えがメインで、それ以外にジョイントの取替えを2か所、高欄補修、電気設備の点検、補修を行っている。その現場を取材した。
事前施工状況(井手迫瑞樹撮影、以下注釈なきは同)
舗装打換え総面積は83,110㎡ 横断勾配が低い、走行車線側の地覆近傍に損傷が集中
舗装打換え総面積は83,110㎡
横断勾配が低い、走行車線側の地覆近傍に損傷が集中
内訳は舗装打換え総面積が83,110m2で、そのうち表層のみの打ち換え部分が30,460㎡、基層まで全て打ち換える部分が52,650m2である。基層まで打ち換える部分は鋼床版が約14,700m2、RC床版が約37,950m2である。舗装のほか、構造物点検、路肩コンクリート撤去、床版上面の断面修復、床版防水、ジョイントの交換(2か所)、その他の付属工事、電気設備の維持管理も合わせて行った。リフレッシュ工事に係わるのべ人員は6,000人強に達する予定だ。
16号一宮線一宮中入口~清洲JCT間(上り線)の1日平均交通量は約3.2万台/日、大型車混入率は約10%となっている。供用年次は平成17年2月であり、設計は平成8年道路橋示方書に基づいている。「床版防水のうち、アスファルトシート系は約半分ほどの面積で行われていた」(名高速)
同区間は今までリフレッシュ工事の履歴はなく、今次施工区間の基層までの切削は初めて。RC床版厚は240mmとなっている。損傷はそれほど激しくはなく、WJによるはつりが必要な面積は約95㎡程度」(名古屋高速道路公社)である。ただし、実際に舗装を剥がしてみると、横断勾配が低い、走行車線側の地覆近傍に損傷が集中していた。
横断勾配が低い、走行車線側の地覆近傍に損傷が集中
WJとベビーチッパーを損傷規模に応じて使い分け
床版防水はデッキコート複合床版防水工法と橋面リフレッシュ工法(タフシールプラス)を採用
さて、施工はまず切削機で舗装を切削する。舗装撤去時のRC床版損傷対策として机上調査および事前調査で床版被り厚が薄い箇所の当てを付ける。
たたき点検状況
次いで舗装基層の切削は床版上面に1cm程度残す形で行い、コンクリート部を切削しないようにした。その上でバックホウを使って残ったアスファルトを剥ぎ取るが、鉄筋が引っかかったことを刃先に感じれば直ちに止めるよう指示している。見落としを避けるためにバックホウの作業時は必ず監督員が現場に配置するようにしている。以前、鉄筋損傷時の復旧工事で活躍したエヌダブルに万が一鉄筋損傷が生じた際のバックアップを委託して施工に臨んでいる。
バックホウでの残アスファルト剥ぎ取り中に鉄筋露出箇所が発見された場合は作業を一時中止し、5m程度離れた位置で再度バックホウによる剥ぎ取りを実施する。そこでも鉄筋が露出するようであれば、その径間のバックホウによる舗装版撤去は中止することにしている。鉄筋が露出した場合の対処をあらかじめ定めることで、舗装版撤去作業に注力し過ぎ、鉄筋を巻き上げてしまうといった事故を防ぐとともに、監督員が迷わず作業中止を判断できるよう配慮したものである。
舗装撤去後は、床版全面を目視および打音などにより点検し、損傷部については、1m2以上の比較的大きなものについては、WJを用いてはつり、1m2未満の比較的小さなものについてはベビーチッパーで脆弱部をはつりとった。
ベビーチッパーによるはつりとガラの吸い込み
その上で、鉄筋防錆材の塗布、損傷している鉄筋の補修、溶接、母材と断面修復材の界面に接着剤を塗布したのちに、低弾性ポリマーセメントモルタル(リフレモルセットSFまたはPDセット)を用いて断面修復を施した。さらに5時間程度養生した後に、床版防水工未設置の箇所はショットブラスト(投射密度100kg/㎡)を施して脆弱部を除去、床版防水設置部についてはWJを用いて防水の残滓を除去することで、複合床版防水のひび割れ含侵樹脂が浸透を確実にすると共に、床版上面コンクリートの脆弱部を除去している。
リフレモルセットSF工法の施工状況
PDセット工法の施工状況
断面修復工の完了状況
ショットブラスト工(RC床版部)
WJによる表面研掃
床版防水については、基層までの打換え部の内、RC床版部(37,950㎡)全面で複合床版防水を施工した。今回はデンカの「デッキコート複合防水工法」と東亜道路工業の「橋面リフレッシュ工法(タフシールプラス)」を採用している。
デッキコート複合防水工法の施工状況
橋面リフレッシュ工法の施工状況
最後に基層(密粒度As(13)改質Ⅲ型-W)を35mm厚、表層(排水性舗装)を40mm厚打設し、完了となる。
舗装基層(左2枚)、表層(右2枚)の施工状況
鋼床版部舗装はIHを用いて剥離し、バックホウで撤去
バックホウの腹の部分に緩衝材
鋼床版については、通常の手法では大きな騒音が発生するため、基本的に全面でIHを用いてはく離し、バックホウで撤去する。
IHを用いて舗装を剥がす
バックホウによる舗装剥ぎ取り(鋼床版部)
その際、夜間施工の際には鋼床版とバックホウの間の擦過音を抑制するため、「バックホウの腹の部分に緩衝材を付けさせ」(同)、舗装撤去時の騒音を抑えた(右写真)。その後、ビーストなど乗用タイプの大型剥がし機やチッパーなどを用いて、舗装の残滓を除去した後、ショットブラスト(投射密度300kg/㎡)で研掃した。今回の鋼床版は「パネル同士の接合はほとんどが溶接構造であり、添接構造はほとんどない」(同)ため、舗装厚を抑えることができている。基層は35mmのグースアスファルト、表層は40mmの排水性舗装を採用している。
鋼床版上のショットブラストの施工(フタミ)