NEXCO大規模更新シリーズ② 中央道北市場高架橋、欠梁橋の床版取替

NEXCO大規模更新シリーズ② 中央道北市場高架橋、欠梁橋の床版取替
2025.06.20

溶融亜鉛めっき鉄筋、半断面床版取替機など新材料新技術を導入

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NEXCO中日本 大規模更新
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橋梁金物から建設まで、すべてを集約 北市場高架橋 他1橋床版取替工事 世界で信頼されるVSL工法

施工手順と課題及びその対策

北市場高架橋においては直下に市道

施工手順と課題及びその対策

 さて、実際の施工である。床版の切断~施工は基本的に半断面床版取替で行う際の一般的な施工フローを採用している。橋軸直角方向と橋軸方向をまずロードカッターやワイヤーソーで切断する。さらに、センターホールジャッキで既設床版を剥離し、半断面床版取替機で既設床版を運びだし、桁上フランジをグラインダーで研掃した後、シールスポンジを配置し、新しい床版を架設、スタッドを溶植して、床版継手部(横目地の橋軸直角方向)のコンクリート打設、およびスタッド部のコンクリート打設を行う。半断面のため、次のステップ(第2、第4ステップ)では(半断面同士をつなぐ)縦目地が発生する。縦目地をコンクリート打設後(2.2mごとにある横目地部は打設しない)、横締めPC鋼材で全断面を一体化した後、残った横目地を打設して床版部は完成となる。第1・第2ステップ間および第3・第4ステップ間の横目地の打設の際は先行ステップ側の接合部を目粗ししたうえで、横目地のモルタルを打設していた。


北市場高架橋および欠梁橋の床版取替要領図



舗装の撤去、床版の切断状況

床版の撤去状況

上フランジ上面の研掃およびシールスポンジの設置

床版の架設① 運搬台車で床版を運び、床版架設機に吊り変える(井手迫瑞樹撮影)


四本のワイヤーを用いて吊り上げた後、架設する形状に応じて回転させていく(井手迫瑞樹撮影)

回転は介錯は必要なく非常にスムーズだ(井手迫瑞樹撮影)

位置が定まったら吊り降ろして架設していく(井手迫瑞樹撮影)

PC鋼材による横締めとグラウト工


 床版撤去・架設は壁高欄の切断をワイヤーソーで行い、床版部の切断は全てロードカッターで施工した。撤去のサイズは半断面を橋軸2.2mごと、約10tの重量になるよう切断し、半断面床版取替機で撤去していき、さらに架設していった。撤去・架設の搬入、搬出は、北市場高架橋の終点側および欠梁橋と北市場高架橋の基点側で異なる。終点側は進行方向也にヤード内に入り、そこからトレーラーをバックさせ、床版架設機の脚間に突っ込んで床版の撤去・架設を行うことができる。基点側はトレーラーをバックさせて脚間に突っ込むことができないため、床版設置場所から100~150m離れた箇所に備え付けてあるリフター付近に待機する。床版の搬出入は専用の床版運搬台車を用いる。運搬台車は100~150m移動するもの。床版の搬出は床版架設機から撤去した既設床版を運搬台車上に荷下ろし、運搬台車からリフターで吊り上げ、運搬台車がリフター下から退出した後にトレーラーが頭から突っ込み、撤去床版を吊り降ろし、場外へ搬出していく。新設床版の架設はその逆の手順となる。


リフターを用いて床版を運搬台車やトレーラーに移し替えた


 既設床版切断の際に課題となったのが、北市場高架橋においては直下に市道があり、さらに人家と近接していること、欠梁橋は桁下に農業用水のため池があることである。

 切断の際にはワイヤーソーやカッターの養生水が必要となる。また橋台部の改良に伴い、ハンドガン型のウォータージェット(WJ)もはつりに用いている。基本的には通常の防炎シートを2重、3重にして対応しているが、市道および民家の直上部については特に防水シートを設置して対応している。さらに人家近接地については防音シートを設置した。欠梁橋にも防水シートを設置して対応した。


橋台部の改良にはハンドガンを使用した

養生状況



床版や高欄の切断状況


 さらに欠梁橋は、濁水処理装置が設置できないため、切断水を集めるノッチタンクのステージを現場に造り、そこで切断水をいったん受けて、バキューム車で回収し、汚泥の処理場までもっていくという水処理対策を行った。北市場高架橋の方は、高架下に濁水処理装置を置き、処理後に水を河川に放流するという対策を行っている。

横目地の打設状況(下面からも締固めを行った)


 床版架設後の間詰めモルタル打設上の課題は縦横断勾配である。北市場高架橋は縦横断とも平均して3%の勾配がある。さらに欠梁橋は横断勾配が4%、縦断勾配は4.3%に達する。打設時に下り勾配へ間詰めコンクリートが流れることを防ぐため、左官仕上げを通常の1人から2人に増やし、対応した。「欠梁よりさらに激しい勾配の場合は、混和材を入れて固めのスランプにして対応することが必要になったかもしれない」(大成建設)としている。
 また、床版上面の仕上げは、丁寧に行った。鋼繊維を使っているため、その毛羽立ちやひび割れは、高性能床版防水の品質を阻害してしまう。そのため200mmを打設した後、硬化しきらないうちにさらに20mm厚を打設し、繊維を寝かせるように仕上げることで、床版防水工への悪影響を無くしている。

 本現場では、床版と桁接合面のモルタル打設も工夫する必要があった。場所によって100mmもの打設厚が必要になったためだ。これは「横断勾配が厳しく、しかも勾配が一定ではなく北市場高架橋では0.7~5%の変曲点があり縦断勾配が急に変わる厳しい線形」(大成建設)になっており、高い調整高が必要となったためである。そのため同箇所にはひび割れ防止筋を配置したうえでスタッドを溶植し、打設時の品質を確保している。


伸縮装置の設置工 / 伸縮装置の止水工

舗装までが完了した欠梁橋

高性能床版防水の施工状況

基層および表層の施工状況

求められる事を形にする為、型枠より自社製作します SEFジョイント100 進化した鋼製フィンガージョイント 下地処理から床版防水までの一貫施工

溶融亜鉛めっき鉄筋 運搬コスト縮減、施工性も良く、防食性能も従来同等

支承は44基で取替

防食鉄筋

 今回、PCaPC床版の防食鉄筋には溶融亜鉛めっき鉄筋を採用した。「従来のエポキシ樹脂塗装鉄筋と防食性能はほぼそん色なく、さらに製造できる工場が比較的多いため、運搬に要する費用も少なくて済み、コストを低減できる。さらに金属結合しているためキズがつきにくい、施工時に傷ついても防食性能が落ちないというメリットがあることから採用した」(大成建設)。同社は、今回の2橋以外でも、東日本高速道路の鬼怒川橋などでも採用しており、状況に応じて使い分けていく方針だ。


溶融亜鉛めっき鉄筋を採用


その他の補修補強

 同現場では桁の補修補強や塗装の塗り替えも行っていく。非合成鋼鈑桁であるが桁の補強が必要であるのは、端部床版の打ち下ろし部が痛まないための桁補強など「最新の基準に合わせるための補強」(NEXCO中日本)を施している。また、支承取替(鋼製支承→免震ゴム支承に全44基取替え)のためのジャッキ支点部の補強や仮設ブラケットの設置等は併せて行っている。

 塗装に関しては両橋合計5,197㎡を塗り替える。既設塗膜は1979年、次いで88年に塗替え、今回が3回目となる。過去は3種ケレンでの塗り重ねのため、鉛などの有害物質が残存している。そのため塗膜はく離剤か循環式ブラストを用いての塗膜除去を行った上で塗り替えを行う予定。(塗膜除去工法は循環式オープンブラスト工法、塗替え塗装は有機ジンクリッチペイント、変性エポキシ樹脂塗料(下塗り)、ふっ素樹脂塗料用(中塗り)、同(上塗り))

 元請は大成建設。一次下請はKITAGAWA(架設工)、ベステムサービス(切断・撤去工)、大成ロテック(舗装工)、本村工業(防水工)、駒運輸機工(運搬)、ナルックス(床版製作)、唐橋塗装(塗装工)など。

 Head-bar鉄筋の製作はブイ・エス・エル・ジャパン。床版取替機製作は北川鉄工所。床版間詰め材製造はデイ・シイ。溶融亜鉛めっき鉄筋の製作は興和工業所、ガルバ興業。支承製作は東京ファブリック。ジョイント製作は横河NSエンジニアリング。

求められる事を形にする為、型枠より自社製作します SEFジョイント100 進化した鋼製フィンガージョイント 下地処理から床版防水までの一貫施工

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