NEXCO大規模更新シリーズ④ 東名清見寺橋上下線および薩埵高架橋上下線の大規模更新
軽い仮設鋼床版、上部にはノンスライド加工を施す
軽い仮設鋼床版、上部にはノンスライド加工を施す
夜間通行止めが12時間という限られた時間で施工を行うため、様々な工夫を施している。まずは、仮設鋼床版の採用である。仮設鋼床版は新設床版設置までの中継ぎではあるが、サイズはほぼ同等の大きさ(12,000mm×2,430mm)である。しかし6~7.6tと非常に軽く設置しやすい。
仮設鋼床版、サイズは本設床版と同等の大きさであるが、6~7.6tと非常に軽く設置しやすい(井手迫瑞樹撮影)
ノンスライド加工層を3~4mmほど設けている(井手迫瑞樹撮影)
構造は本設さながらの12mmのデッキプレート厚を有する。その上にはあらかじめ舗装代わりのノンスライド加工層を3~4mmほど設けている。これを床版に設置するわけだが、1~2日間で取り外すため、設置しやすく、かつ供用中の安定性があり、さらに取り外しやすい接合構造としなくてはならない。そのため、床版のリブ高は一般部で263mm、支点部で300mmとした。仮設鋼床版1パネルにつき8点の支持(今回の場合2箱構造のため、1主桁に4点の支点を設ける)とし、鋼床版とフランジをボルトで締め込み(人力施工)、スプリングワッシャーで緩み止めを行い、レバーブロックで鋼床版全面を箱桁下面から引っ張る形で安定させている。鋼床版と既設ないし新設パネルとの間は仮舗装で多少のテーパーを取る必要は出てくるが、それほどではなく、ほぼレベルで調整できたという事だ。なお、この仮設鋼床版は撤去した後、また次に場所に設置して転用できるものとなっている。
スプリングワッシャーで緩み止めを行い、レバーブロックで鋼床版全面を箱桁下面から引っ張る形で安定(井手迫瑞樹撮影)
橋軸方向の継手には、コッター床版工法を採用
壁高欄は、プレキャスト壁高欄「EQ-WALL」
橋軸方向の継手には、コッター床版工法を採用し、継手部を大幅に縮め(幅20mm)コンクリート打設を省略した。時間短縮のため、床版下箱桁部の無収縮モルタル用シールスポンジ貼付け部には重防食シート『メタモルシート』を採用することで、同部分についてはケレンを行うことなくシールスポンジを設置できるようにし、養生の手間を省いている。
スタッドの設置
コッター継手の施工 / モルタルを打設
壁高欄の施工については、プレキャスト壁高欄「EQ-WALL」を採用し、夜間通行止め後の昼夜連続車線規制時に構築した。
EQ-WALLの施工 / SEFジョイント100の設置
なお伸縮装置は高耐久性鋼製フィンガージョイント「SEFジョイント100」、床版防水工は高性能床版防水「HQハイブレンAU工法」(ニチレキ製アスファルトウレタン塗膜系床版防水工法、グレードⅡ適合)をそれぞれ採用し、施工した。
床版防水の施工
床版防水以降の施工については、車線規制の切り替えを行いながら床版設置後の仮開放時に施工した仮舗装を撤去し、高性能床版防水および本舗装の施工を行った。
基層および表層の施工
こうした難しい工事であるため、実施工前には実地を想定した床版取替の試験施工を行った。さらには進捗管理システムを活用し、作業の進捗状況を現場に設置したデジタルサイネージで表示することにより、タイムスケジュール管理、工事遅延対策を行った。
清見寺橋今次施工完成状況写真
合成桁とりわけ2室の箱桁部はウエブやフランジの板厚が10mmと薄い
床版増厚は約3,900㎡で実施、10mmはつってSFRCを60mm増厚
さて、次いで残りの床版取替区間である。合成桁とりわけ2室の箱桁部はウエブやフランジの板厚が10mmと薄く、施工にあたって鋼板による補強が必要になってくるため、慎重に設計・補強を進めながら床版を取り替えていく必要がある。
合成桁とりわけ2室の箱桁部はウエブやフランジの板厚が10mmと薄く、施工にあたって鋼板による補強が必要になってくる
残る床版増厚は、薩埵高架橋の鋼桁部全面2,978㎡と清見寺橋P4~A2の920㎡で施工する(清見寺橋P4~A2は完了している)。基本的に既設のRC床版(厚さ170mm)を10mm程度WJではつり、SFRCを用いて60mm増厚する。SFRCと基層界面の接着はKSボンドを額縁状に塗布し、一体化させている。なお、薩埵高架橋の鋼桁部はA1~P0間24.91mが鈑桁、P0~P2間54.282m+66.007mが鋼2主箱桁である。活荷重合成桁であるため、同部分は事前補強が必要になる。さらには鈑桁部および箱桁部とも東海道本線および国道を跨いでいるため、施工に際しては特別の配慮を必要とする非常に難易度の高い工事となる。
床版増厚施工図
床版増厚の施工状況
床版取替以外にも、既存鋼製支承のゴム支承への取替(清見寺橋のみで52基)、塗替え塗装(2万5千㎡、既設塗膜除去は塗膜剥離剤を2~3回塗布して剥がす予定、研掃は素地調整程度1種)などを行う予定だ。
基本設計は清見寺橋上り線および薩埵高架橋上り線がワイ・シー・イー、薩埵高架橋下り線がアジア共同設計コンサルタント、詳細設計は西松建設。施工元請は西松建設・極東興和JV。主要一次下請は躯体工・仮設工が岡村建設工業、鋼構造物工がキーマン、塗装工が野佐和、舗装工が三井住建道路、揚重工が長尾レッカー、切断穿孔がコンクリートコーリング、床版架設工が原組、規制工がシンコーハイウェイ。床版取替時には昼夜合わせて作業員100人、JV職員20人が従事した。