CORE技術研究所 斜め・直交格子を使用した斜め格子をマーカーに用いたサンプリングモアレ法による橋桁のたわみ測定を試験施工

CORE技術研究所 斜め・直交格子を使用した斜め格子をマーカーに用いたサンプリングモアレ法による橋桁のたわみ測定を試験施工
2025.08.05

京都府の新綾部大橋でPCケーブルの固有振動計測も行う

Tag
維持管理 PC橋
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 CORE技術研究所は、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以降、産総研)と共同で、京都府が管理するPC斜張橋である新綾部大橋を用いて斜め・直交格子を使用したサンプリングモアレ法を用いたPCケーブルの固有振動計測、および橋桁のたわみ測定の試験施工を行った。なお本活動は、京都大学インフラ先端技術コンソーシアムのクラスター活動「インフラセンサネットワークと維持管理基準の構築」の中で実施されたもの。(井手迫瑞樹)



新綾部大橋

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歴史的なPC斜張橋を用いてケーブルの固有振動数と変位、橋軸方向のたわみを計測

橋のたわみをサブミリオーダーの精度で測定

+45°と-45°方向の格子を組み合わせることで、各方向の変位を正確に算出

 対象構造物である新綾部大橋(施工時の旧称は新丹波大橋)は、1987年に当時の住友建設が施工した、国内で初めて支間長100mを超えるPC斜張橋として建設された橋である。同橋は本NETの『橋梁四方山話 第三話』で春日昭夫氏が論じているように「コンクリート斜張橋の斜材張力のクリープによる変動」を使い「精度管理で導入された斜材張力の調整量は、クリープによって桁を変形させながら減少する方向に動く。また、桁のキャンバーは途中許容値を超えてもとにかく折れないように造れば、あとは斜材調整で修正できる。それまでは、コンクリートにとってクリープはある種厄介者であった。しかし、斜張橋の建設を通してクリープによる自己応力調整機能という素晴らしい一面を発見した」(「」内引用)。その最適化を採用している、PC斜張橋の建設史において画期となっている橋である。

 サンプリングモアレ法は、規則正しい繰り返し模様を重ね合わせた際に発生する『モアレ』を活用した構造物の変形量を定量的に評価する方法である。数枚の格子パターンを貼り付ければ、簡便に橋のたわみをサブミリオーダーの精度で測定できる。これまでVFCの一つであるJ-ティフコムを用いて床版補修を行った上吉野川橋(鋼吊橋)のたわみ計測などで実績を有している技術である。


従来型の直交格子のマーカー


 上吉野川橋の時と異なるのは、PCケーブルの固有振動計測に、斜め格子(トラテープ模様)のモアレマーカーを使用したことである。斜め格子のモアレマーカーは従来の直交格子と違い、X方向とY方向の両方に感度を有している。+45°と-45°方向の格子を組み合わせることで、各方向の変位を正確に算出することができるようになったものだ。


直交と斜めのモアレマーカー

斜め格子はより高精度な計測が可能となる




実際の計測実施状況


 今回は同手法を用いて、ケーブルの固有振動数と変位、橋軸方向のたわみを計測した。

 計測手法は図のように橋の左側と右側に1台のカメラを設置し、左側のカメラとケーブル主塔との距離は90m、右側のカメラとケーブル主塔との距離は75m離した位置から計測を行い、ケーブル全数の計測および桁のたわみ測定を精度よく行うことができた。なお精度を確認するため、ケーブル測定においては従来の加速度計、たわみ測定においては、直交格子のマーカーを置いてドローンで撮影したわみを計測するサンプリングモアレ法(上吉野川橋で実績を有する)を採用し、その精度差を確認している。

 斜め格子のサンプリングモアレ法によるたわみ計測は、長手方向に精密に測定できるため、「橋梁はもちろん、トンネルやダム、法面など大きなマーカーを貼れない箇所でも手軽に変位を計測できる手法として使っていきたい」(CORE技術研究所)としている。


トンネル等への適用も今後目指していく

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