第三京浜道路 新田谷高架橋の床版延命化にFSグリッド工法を初採用

第三京浜道路 新田谷高架橋の床版延命化にFSグリッド工法を初採用
2025.08.29

軽量で施工性、死荷重影響を軽減でき、下面からのみで補強可能

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床版 NEXCO東日本
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FRPによる既設床版延命化工法 FRPによる既設床版延命化工法 FRPによる既設床版延命化工法

1区画当たり2時間でリフトアップまで施工可能

1区画当たり2時間でリフトアップまで施工可能

必要な作業者は5人程度

 施工はまず、現場の床版下面の手直し(清掃および不陸調整など)を行った後、主桁に横桁設置用の孔明けを施す。次いで横桁設置用のブラケットを設けた。ブラケット設置面の鋼桁塗膜は鉛を含有していたので、剥離剤で除去したうえで、ブリストルブラスターでケレンしたうえでブラケットを設置している。


墨出し

ブリストルブラスターを用いた素地調整


コンクリート面の下地処理状況

現場での孔明、ブラケット設置状況


 そして、縦桁設置部位のコンクリート下面の表面研掃を行い、下からウインチで縦・横桁を吊り上げ、横桁と縦桁の地組を行う。地組を行って一体化した部材をリフト付き台車で所定の高さまで上げ、弾性シール材を介して5mm以上20mm以内(本現場では横断勾配2%のため5~15mm)に隙間を収めて、そこにエポキシ系の充填剤を入れる。充填部は一体化しないように縦桁とエポ材の間はフィルムを入れて縁切れを施している。縁切れの理由は前述のようにあくまで床版と桁の接着を避けるためである。


FSグリッドを下から荷揚げする状況

FSグリッドのHFRP横桁設置状況

GFRP縦桁設置状況

リフトアップ状況

高力ボルト本締め状況

シールおよび注入材(エポキシ樹脂)の施工状況


 今回は、1ユニット(今回4ユニット/区画)で約20~30分、1区画あたり約2時間で地組から運搬~リフトアップまでの施工を行うことができ、加えて弾性シール材の施工に1日、同硬化養生に3日、エポ材の充填に半日程度で全ての補強工を完了できる。取り付けに必要な作業者は5人程度(作業員4人+世話役1人)であった。



施工が完了したFSグリッド(井手迫瑞樹撮影)

FRPによる既設床版延命化工法 FRPによる既設床版延命化工法 FRPによる既設床版延命化工法

20tトラックの走行試験やCOM3Dによる延命シミュレーションも実施

ひび割れの開閉がほとんど無くなり、高い拘束効果を発揮

 施工後は、20tトラックを用いた走行試験およびCOM3D(コンクリート構造の高サイクル疲労損傷を再現する履歴経路積分型の疲労非線形有限要素解析)を用いた延命シミュレーションも行っていく。走行試験ではM式3方向クラックゲージ『CET-2S001』などを使って確認した結果、ひび割れの開閉がほとんど無くなり、高い拘束効果を発揮していることが明らかになった。また床版の活荷重たわみも 減少していることを確認した。COM3Dの活用に当たっては、床版のコア抜きも行ったが、IHIが開発した『モバイルコアシステム』を活用し、通常はφ100×h200の資料が必要なところをφ33×h66でも調査可能とすることで、母材の損傷を最小限にしつつ、コアを採取し、COM3Dによる劣化予測、延命化年数の予測に役立てている。


走行試験に用いる20tトラックのイメージ

実際の試験車両と計測時の機器設置状況

たわみ測定位置図

M式3方向クラックゲージを使ったひび割れ変位測定


 NEXCO東日本関東支社は、今回の試行の効果を検証し、首都圏の交通量が多く、床版上面からの補修補強が難しい箇所や床版取替までの設計検討・関係機関協議等により工事着手まで一定以上の期間が必要な箇所の床版(特に床版下面の疲労に起因したひび割れ損傷が卓越している箇所)の延命化工法の1つとして活用してすることを検討している。

 なおFSグリッドによる補強以外で、本工事ではコンクリート剥落による第三者被害を抑止すべく剥落防止工を施工している。玉川高架橋約6,000㎡、川崎高架橋約37,000㎡(合計約43,000㎡)で剥落防止工事を実施する予定である。2軸メッシュのビニロン系シート+エポキシ含浸工法(VEライニング工法)を採用している。

 元請はショーボンド建設。下請はIHIインフラ建設。

FRPによる既設床版延命化工法 FRPによる既設床版延命化工法 FRPによる既設床版延命化工法

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