2024年春のNEXCO中日本金沢支社大規模更新シリーズ② 北陸自動車道鯖江IC~福井IC間天王第一高架橋(下り線)P5~A2間の床版打換

2024年春のNEXCO中日本金沢支社大規模更新シリーズ② 北陸自動車道鯖江IC~福井IC間天王第一高架橋(下り線)P5~A2間の床版打換
2024.10.15

A2橋台背面の盛り土部の撤去、再構築も行う

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NEXCO中日本 大規模更新 床版
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 NEXCO中日本金沢支社では、今春、北陸自動車道鯖江IC~福井IC間に架かる天王第一高架橋(下り線)P5~A2間の床版打替工事を行った。同橋は1976 年に昭和39年道示に基づいて建設、供用された橋長123.8m(有効幅員10.510m)の橋梁で、今次工事ではそのうちP5~A2間のPC合成桁(活荷重合成桁)の床版打替を行うものだ。先に紹介した阿久和川橋と大きく異なるのはA2橋台背面の盛り土部の撤去、再構築が生じることである。同橋も4主桁であり、桁間の他、桁フランジ上面も同様にはつる必要があり、その後も現場打ち施工で、床版を再構築している。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)

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撤去ブロックを小割にして使用するクレーンの吊り能力を小規模化

凍結防止剤の累計散布量は約990t/km、塩化物イオン量の鉄筋近傍値は約1.9kg/㎥

数か所で小規模な砂利化

 同橋は1976年に供用され、48年が経過している。1日交通台数は28,043台で、大型車混入率は21%、凍結防止剤の累計散布量は約990t/kmに達する。既設床版の厚さは標準で210mm、塩化物イオン量の鉄筋近傍値は約1.9kg/㎥で、舗装にはポットホールが生じ、床版下面には過去に浮き・剥離が発生していたが、現在は剥落防止工などを施工しており、エフロレッセンスなどの症状は生じていない。また、壁高欄も剥落防止工がしっかりなされていた。舗装を剥いでみても、上面のかぶり不足状況はなかったが、数か所で小規模な砂利化は生じていた。床床版防水は2004年度にGⅠ相当の防水工を施工していた。


施工前の橋面舗装と舗装撤去後の床版面



張出部および主桁間の床版下面劣化状況


 4主桁で桁間隔は2.8m。斜角は50°に達する。縦横断勾配は縦断が1%、横断勾配が2%とそれほどではない状況である。同橋もPC合成桁であるが活荷重合成桁のため施工中の補強は必要ない。


同橋上部工一般図

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撤去ブロックを小割にして使用するクレーンの吊り能力を小規模化

工数は増えるが施工人員を増やすことで対応

 さて施工である。阿久和川橋と同様に床版は全面撤去する。一方で床版との剛結に必要な主桁と横桁上にあるずれ止め筋までははつり出す必要がある。ずれ止め筋を切断することはできないため、桁直上コンクリートはつりは全てWJで施工した。


主桁直上面のWJ施工状況

WJによって鉄筋がはつり出された状況


 施工手順としては、まず、既設舗装を切削し、WJにより縦横桁直上のコンクリートをはつり、次いで桁間の既設床版を撤去した。既設床版の撤去に際しては、「A2側は踏み掛け版の部分を撤去する必要があるため、吊り撤去のためのクレーンは大型化してしまい採算的に厳しい。しかし、P5側にクレーンを据え付けるには、P5側の中空床版橋のボイド部がクレーン搭載荷重に対して構造的に厳しい。さりとてA2側からの一括撤去はクレーンの極端な大型化が必要になるため、コスト的に厳しい」(元請の日本ピーエス)。

 そのため、撤去ブロックを小割にすることで使用するクレーンの吊り能力を小規模化した。具体的には吊り重量を福井IC側に100tオールテレーンクレーン(以降、ATC)、鯖江側に70tATCで届く範囲とした。撤去ブロックのサイズは壁高欄を1,300~4,600mmピッチ、床版部は橋軸方向に1,600mm~3,800mm、橋軸直角方向には桁間(2,000mm)とし、最大1.8t~4.8tの吊り重量とした。その反面ブロック数が増加することで、切断距離が長くなり、工数は増えるが、それは「施工人員を増やすことで対応」(同)した。


クレーンの配置および撤去ブロックの割付図

撤去工詳細図
 

床版撤去状況(近景)
床版撤去状況(遠景、左は施工中盤状況、右は桁上の床版が全部撤去できた状況)


 WJの施工は、桁間の床版の撤去に先立って、既設床版を足場として活用して施工し、縦桁と横桁の上フランジ上面の床版部全厚(200mm+主桁上フランジ上面の60mm)を機械式WJで全厚はつり取った。WJを使うのは桁上のずれ止め筋を保護しつつ、コンクリートを撤去するためである。主桁は往復、横桁は片道だけそれぞれ機械式WJを移動させ、はつり取っている。

端横桁支点のみ、3本のPC鋼材を斜角なりに密なピッチで配置

鉄筋は全てエポキシ樹脂塗装鉄筋(安治川鉄工製)を採用

 その後、主桁ウエブに削孔してハンチ筋を挿入し、底面に型枠工、配筋工を施工し、横締PC鋼材を配置していく。


型枠や配筋の施工状況①(井手迫瑞樹撮影)

型枠や配筋の施工状況②



ハンチや壁高欄形状に合わせやすいような型枠を設置している


 基本的には直橋のような形で、PC鋼材を配置し、無理のない施工になるよう配慮している。PC鋼材は600mmピッチで配置しており、全部で63本使用した。さらに端横桁支点のみ、3本のPC鋼材を斜角なりに密なピッチで配置することで、縦横桁の一体化を増し、50°の斜角の分力に対応する構造としている。



鉄筋およびPC鋼材配置図


鉄筋およびPC鋼材の配置状況

端横桁支点のみ、3本のPC鋼材を斜角なりに密なピッチで配置


 なお、床版の長期耐久性向上を図るため、鉄筋は(高欄部も含め)全てエポキシ樹脂塗装鉄筋(安治川鉄工製)を採用、PC鋼材(住友電気工業製)はプレグラウトタイプとした。

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