2024年春のNEXCO中日本金沢支社大規模更新シリーズ③ 北陸自動車道滑川IC~魚津IC間岩原橋(下り線)A1~A2間と中島橋(下り線)A1~A2間の床版打換工事

2024年春のNEXCO中日本金沢支社大規模更新シリーズ③ 北陸自動車道滑川IC~魚津IC間岩原橋(下り線)A1~A2間と中島橋(下り線)A1~A2間の床版打換工事
2024.10.30

床版の再構築に厚さ80mmのプレキャストPC底板を採用

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NEXCO中日本 大規模更新 床版
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 NEXCO中日本金沢支社では、今春、北陸自動車道滑川IC~魚津IC間に架かる岩原橋(下り線)A1~A2間と中島橋(下り線)A1~A2間の床版打換工事を行った。両橋とも1983 年に昭和53年道示に基づいて建設、供用されたPCポストテンション合成I桁橋で岩原橋が橋長23.4m×2連、中島橋が橋長34.4m(有効幅員10.66m)である。本工事では各橋梁ともPC合成桁(活荷重合成桁)の床版打換を行う。先に紹介した阿久和橋などと大きく異なるのは床版の再構築に厚さ80mmのプレキャストPC底板を使うことである。これにより型枠施工の設置期間を1週間程度減らすことができ、さらに型枠や鉄筋配置のための中間足場を不要とした。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


中島橋(左)、岩原橋(右)の上部工一般図(NEXCO中日本提供、以下注釈なきは同)

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キャンバーの変化や、床版工の不陸により、舗装が40mm程度と極端に薄くなっている個所も

大型車混入率は3割弱

キャンバーの変化や、床版工の不陸により、舗装が40mm程度と極端に薄くなっている個所も

 同橋は1983年に供用され、41年が経過している。1日交通台数は19,599台で、大型車混入率は29.7%に達する・既設床版の厚さは岩原橋が標準で240mm、中島橋は同230mmである。凍結防止剤の累計散布量も多く、塩化物イオン量の鉄筋近傍値は1.2kg/㎥を超えている個所もあり、実際に鉄筋が発錆している個所や、腐食が生じている個所もあった。岩原橋は床版防水も未施工であり上面および下面増厚などの補強や大規模な修繕は行っていなかったようだ。中島橋も同様であるが、交差道路の直上のみ床版下面と桁と高欄の剥落防止を行っていた。

 損傷状況は、特に舗装が痛んでおり、「キャンバーの変化や、床版工の不陸により、舗装が40mm程度と極端に薄くなっている個所もあった」(元請の川田建設)ことがある。


施工前の舗装状況(中島橋)と舗装撤去後の床版上面(同)


 床版と桁をつなぐスターラップ筋については、大きな錆などは生じておらず、そのまま使えると判断して施工した。伸縮装置は過年度に取り替えられているとみられるが、その周りの鉄筋は被り不足もあり大きく腐食していた。主桁部は健全であった。

 両橋とも4主桁で主桁間隔は両橋とも2,850mmである。

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まずワイヤーソーで壁高欄と張出し床版根元部を撤去

中間横桁の上フランジと、ウエブの上端部は、ワイヤーソーで事前切断

 さて施工である。阿久和川橋と同様に床版は全面撤去する。一方で床版との剛結に必要な主桁と横桁上にあるずれ止め筋までははつり出す必要がある。ずれ止め筋を切断することはできないため、桁直上コンクリートはつりは、全てWJで施工した。


中島橋既設床版撤去図


 

 施工はまず、舗装切削をした後、壁高欄と地覆のコア削孔を行い、橋梁上に搭載した25tラフターを用いて吊って保持し、ワイヤーソーで壁高欄と張り出し床版の根本(主桁から100mm離れた部分)で吊り切って撤去した。地覆高欄の吊り切りは全径間、先行切断、撤去している。壁高欄は片側だけで片側はガードレールであり、ガードレール側も高欄側と同じように切断する。吊り切る高欄の1ブロック当たりの規模は長さ4m弱、重さは大体5.3t程度とした。


壁高欄の切断状況。ガードレール側(右写真)も高欄側と同じように切断


 両側の地覆壁高欄およびガードレールを全部吊り切った後は、床版部をカッター切断していく。まず切断する前に桁下に支保工を組む。次いで中間横桁の上フランジと、ウエブの上端部は、まずワイヤーソーで事前切断する。最後に支保工で床版を受けた状態で、橋軸方向のカッターと橋軸直角方向のカッターで切断していく(まずは床版の撤去のため、足場内に撤去する床版を支える支保工を設置したうえで、床版をカッターで切断していく)。

機械式WJで縦桁と横桁の上フランジ上面の床版部全厚をはつり取る

桁下にも清水槽と散水車を配置し、ポンプアップする手法も並行して採用

 次いで床版を吊り上げ撤去する前にWJの施工を行う。撤去前の既設床版を足場として活用して施工し、縦桁と横桁の上フランジ上面の床版部全厚(230~240mm+主桁上フランジ上面の60mm)を機械式WJで全厚はつり取った。


WJの施工状況


 WJを使うのは桁上のずれ止め筋を保護しつつ、コンクリートを撤去するためである。主桁は往復、支点横桁は片道だけそれぞれ機械式WJを移動させ、はつり取っている。往復施工する主桁部では1回目で露出した不要な鉄筋は切断し、その上でもう一度復路のWJを施工した。密な鉄筋があるとうまくはつれないための処理である。WJ施工に用いる清水槽や浄化槽、ポンプは基本高速道路のヤード上に置くが、高速道路上の散水車の台数を抑えるため、桁下にも清水槽と散水車を配置し、ポンプアップする手法も並行して採用した。

 WJはジェットマスターを用いている。既設床版は残置した状況で施工するため、「切断面に沿って水が伝い落ちることはあるが、WJの高い水圧が下に向かうことはない」(川田建設)。そのため鉄板などの養生は特に用いていない。WJは1橋3台、同時に6台使用したが、確実に施工するため「1年前から機械の使用を予約し、かき集めた」(同)。端部の伸縮装置周りの実はハンドガンタイプのWJを使用する。その際は「防護をしっかりと行い、しっかりとガンを固定したうえで施工」(同)した。

 施工効率は1日1台1.1㎥。中島橋で約10日間、岩原橋で13~14日間かけてはつり終えた。

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