1日3万台が通る宝塚IC出入口の小浜橋を鋼合成床版橋で架替え

1日3万台が通る宝塚IC出入口の小浜橋を鋼合成床版橋で架替え
2024.05.16

NEXCO西日本中国道大規模更新工事の一環

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NEXCO西日本 大規模更新 架替
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概要動画Overview Video

 NEXCO西日本関西支社阪神改築事務所は、中国池田IC~宝塚IC間の橋梁更新工事の一環として宝塚ICランプ部に位置する小浜橋(宝塚IC・Iランプ橋(ONランプ)、同・Jランプ橋(OFFランプ))をRC中空床版桁(以下「RCホロー」)から鋼桁+合成床版形式の桁(NYラピッドブリッジ(日鉄エンジニアリング・横河NSエンジニアリング共同開発))に架替える工事を完了した。同橋は供用後53年を経過しており老朽化が著しいため架替えを行うものであるが、工事の制約は厳しい。中国道に接続するランプ橋であり、桁下は国道176号と交差している。さらに桁上空(上空高さ制限24m)には高圧電線が架かっている。したがって、長時間の規制は難しく空頭制限もあるため送り出しやトラッククレーンベントによる架設は行えない。そのため、桁高を既設RCホロー桁の高さである800mm以内に抑えるとともに、施工は午後10時~午前5時という限られた時間内に既設桁の撤去および新設桁の架設を行わねばならない。このため、移動多軸台車(縦8輪×4列、最大積載荷重800t)により撤去・架設することを計画した。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


RC中空床版桁の劣化状況(NEXCO西日本提供、以下注釈なきは同)

スーパーブラスター工法 急速施工が可能な新形式のプレキャスト合成床版橋 急速施工が可能な新形式のプレキャスト合成床版橋

3径間連続RCホローを鋼合成床版橋に架け替え

中国道中国池田IC~宝塚IC間 次のGW明けには6車線開放

小浜橋 下部工は以前にロッキングピアを巻立て補強

 同橋を含む中国道池田IC~宝塚IC間では約6㎞の延長において橋梁更新を行っている。2021年9月から着手しており、上下3車線を2車線ずつ確保しながら、3分割施工による工事を行っている。中分、上り線は22年度までに完了し、23年度は下り線の施工をしている。工事は24時間体制で行っており、渋滞の起きる昼間の工事を避けて、主に夜間での撤去・架設を行っている。同区間の安倉高架橋、荒牧高架橋においても、クレーンを使った床版の撤去を行い、プレキャストPC床版の架設を行っている。一方で中国池田IC側の川西高架橋においては、伊丹空港の航路に面しているため、上空高さ制限があり、クレーンは使えず特殊な床版取替機を用いて床版の撤去架設を行った。コロナ明け後は8万台と交通量も戻ってきているが、下り線工事も順調に進んでいる。

 さて、小浜橋の既設橋は橋長43.65m(幅員約9~12m)の3径間連続RCホローの上部構造である。適用道示は昭和39年と古い。既設橋脚は過去にロッキングピアだったものをRC巻立て補強し、上部のRCホローと剛結してラーメン構造にした(橋台部は支承構造)。これを橋脚・橋台に沿ってベントを立てて、既設桁を仮受けし、1径間につき1夜間ずつ費やして桁を切断・撤去していった。


既設橋図


 既設桁の撤去は、まずベント設備を組み立てるため国道176号の道路線形を変更し、ベント設備を組立てた。次いで既設桁へのコア削孔を行い、乾式ワイヤーソー切断を国道176号への影響範囲外となるベント上において作業を進めた。次いで、既設桁の転倒防止の為、既設桁とベントをゲビン棒で連結し、移動多軸台車を用いて、夜間の短い時間で撤去していった。夜間に移動多軸台車が通過する時間帯のみ国道176号線を止める必要がどうしてもあったため、1径間につき僅か15~20分ほどに通行止め時間を極小化し、2径間をそれぞれ1夜間で一括撤去した。

 


交通量も多く厳しい施工条件である(右写真は井手迫瑞樹撮影)



既設橋脚およ床版撤去割付図

施工手順図

撤去に用いたワイヤーソー
撤去工の施工状況

切断後の桁を自走多軸台車で運んでいる状況

既設桁撤去の完了状況

never-ending challenge never-ending challenge 高強度繊維モルタルを用いた橋梁用排水溝 YNタフドレーン

プレキャスト鋼合成床版橋NYラピッドブリッジを採用 横桁を設けて剛結構造に

橋台部 桁架設時は支承およびアンカーボルトを一体架設

 既設桁撤去後に、鋼桁を架けるための脚頭部の改造を行った。NYラピットブリッジに架け替えるため、横桁を設けて橋脚部は剛結構造、橋台部も同様に横桁を設けて1支承線につき4基(2主桁につき1基配置する要領)設置する構造とした。中間支点部はラーメン構造とするため、橋脚上部のコンクリートも高さ700mmほど切断し、上部工中間支点部とつなぐための鉄筋をはつりだした。

更新後断面図および側面図

施工完了しているIランプ橋(井手迫瑞樹撮影)


 橋脚部については、脚上に横桁を設けて、横桁と橋脚上に鉄筋を配置してコンクリートを巻立てて剛結する。剛結部については既設の柱梁幅より横幅は大きくなっている。これはRCホロー桁の張り出し量が大きく、新しく架設する鋼合成床版鈑桁の主桁をより外側に配置しなくてはいけないためである。


剛結部については既設の柱梁幅より横幅は大きくなっている


 横桁と主桁は支圧板にスタッドジベルを付けた構造を介して、同様に横桁コンクリートと一体化する。中間支点部は連続合成桁かつラーメン構造となっている。引張側は上フランジ部のボルト連結と床版鉄筋で引張力を伝え、圧縮側の下フランジは支圧板にて横桁コンクリートに圧縮力を伝える構造としている。剛結構造であるため、地震時等に支圧板に引張が作用する場合もあるが、支圧板の引き抜き耐力を確かめた上で設計・施工を行った。中間支点部の(鋼材同士の)現場接合部分においては、急速施工を目的として、日本製鉄(株)の開発した高摩擦接合(アルミ溶射SPL)を採用し、すべり係数を0.60までアップし,ボルト本数の削減を行っている。


小浜橋剛結部イメージ

剛結部細部構造

剛結部の施工性確認(配筋時)(通し鉄筋は解析結果により使用しかなった)

配筋確認試験状況

実橋の剛結部(上面から見た状況)/同(下面から見た状況)(いずれも井手迫瑞樹撮影)

生コン打設時の確認試験も実物大で行った


 中間支点部の横桁下には架設時のみに使う仮支承(上沓)が設けられている。架設時は下部工側に設置した仮設下沓に載せることで位置を合わせるとともに剛結前に一時的に作用する死荷重時の鉛直力、水平力を抵抗させている。仮設沓は溶接にて仮固定し、コンクリート巻立て(剛結)後に埋め殺す構造としている。

 橋台部については、主桁にせん断継手に横桁が接続されている構造で、横桁の下に支承が配置されている。橋台部の支点上横桁は巻立てコンクリート構造であるが、下部工とは一体化しない支承構造としている。工程を短縮するため、桁架設時は支承およびアンカーボルトを一体架設とし、橋台上の沓座のアンカー孔に挿しこむ手法を採った。

打設時は直上の高圧電線に配慮しながら慎重に施工

 桁架設後は中間支点部において剛結部のコンクリート打設を行うが、横桁巻き立てを行う際に型枠が少し桁の外側に出てしまう。しかし養生をしっかりと施したベント内施工であり、さらに橋梁背面ヤード等からコンクリートポンプ車で剛結部を打設する為,路下交通への影響は生じない(NEXCO西日本)ということだ。剛結部と床版間詰め部の打設は50Nの高流動コンクリートを用いて一体施工するが、直上に高圧電線があるため、打設ブーム高を事前に検討し、万一の事故が起きないよう慎重に打設した。


コンクリート打設計画図/直上に高圧電線が走っている(井手迫瑞樹撮影)

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