和歌山県 サンブリッジの耐震補強に着手

和歌山県 サンブリッジの耐震補強に着手
2024.11.20

桁内コンクリートはつりの打撃音軽減策を実施

Tag
耐震補強 自治体
Share
X Facebook LINE

概要動画Overview Video

 和歌山下津港湾事務所は、和歌山県和歌山市毛見地先の和歌山マリーナシティと本土を結ぶサンブリッジの耐震補強を進めている。同橋は橋長410mの2径間連続鋼斜張橋(補剛桁鋼床版箱桁)で、A1~P1間が170m、P1~A2間が240mという不等径間であり、A1、A2側は6%の縦断勾配を有し、横断勾配も最大6%に達する。さらに両側とも橋台直前で極端な曲線(R=80m)を有している。さらに民家や観光施設が近傍にあることから、施工の際の騒音や振動に配慮する必要がある。その耐震補強の第一弾として、上部工及び橋台の補強を進めている現場を取材した。(井手迫瑞樹)


全体一般図(和歌山県提供)

浜の宮ビーチから写す(井手迫瑞樹撮影)

橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 国土強靭化への第一歩! 超緻密高強度繊維補強コンクリート『J-THIFCOM』 わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です!

支承交換は事実上不可能な構造

不等径間 A1側は橋台部に斜張橋ケーブルを定着 現況

主桁は全ての径間で降伏 超過程度は最大5倍

 同橋は昭和55年道路橋示方書に基づき設計され、1990~92年の3年間で建設された斜張橋(93年竣工)で1本主塔の左右にケーブルが配置された構造である。基礎は橋台部が場所打ち杭、橋脚部は鋼管矢板井筒基礎を採用しており、下部工はいずれもRC構造である。

 上部工は両橋台方向とも曲線を有しているため、ケーブル長はA1~P1側の主塔左右で長さが異なり、ケーブルの素線も、A1~P1側の最上段部はφ7×301本のPC鋼より線を用いている。さらには、定着部についてA2側は桁上にあるが、A1側は長さが足りないため、定着部を橋台に設けているなど構造が異なる複雑な橋梁である。


A1側は長さが足りないため、定着部を橋台に設けている。それだけでなく地中部に定着部を設けている個所もある。
(井手迫瑞樹撮影)

A1、A2橋台の近傍および箱桁内写真(和歌山県提供)


 施工場所は、同橋のA1、A2橋台の近傍である。A1橋台の方は、浜の宮ビーチの駐車場内で民家も近接している。A2側は和歌山市のマリーナシティの中の遊歩道近傍にある。箱桁内部は本土からマリーナシティに向かって、NTTや関電などのインフラ設備が通っている状況になっている。

 現橋の耐震性能を照査した結果、以下のことが確認された。①主桁は全ての区間で降伏し、その超過程度は最大で5倍に達する。その中でも直角方向加振時の超過程度が大きい。②主塔はほぼすべての柱区間で降伏し、その超過程度は最大で約2.5倍に達する。橋軸方向と直角方向では、直角方向加振時の方が超過程度が若干大きい。③主塔基部アンカーボルトも最大で約1.4倍程度超過する。④主塔橋脚は曲げとせん断両方とも満足せず、最大で約4倍超過する。⑤既設支承も全ての支承線で照査を大幅に満足しない。鉛直支承では正反力と負反力が照査を満足せず、水平支承では水平力が当初設計計算書の設計条件よりも大幅に大きい。⑥桁端部の移動量は最大で800mmを超え、現在の桁遊間量300mmを大きく超過する。


耐震性能を照査した結果

主桁断面照査結果概要図

主塔断面照査結果概要図

スクラップ&ビルドからストックマネジメントの時代へ コンクリートを”はつる”

負反力対策としてカウンターウェイト代わりのコンクリートが充填

支承交換は事実上不可能な構造

一方で、同橋は不等径間であり、A2側に対してA1側が短いため、A1側の支承の負反力対策として桁内にカウンターウェイト代わりのコンクリートが充填されており、今回、これを撤去しなければ補強部材を取り付けることができなかった。また桁内にはライフラインが多く設置されている。

 加えて、A1橋台側においては一部のケーブルが橋台に定着されているため、常時において主塔部や橋台部の水平支承に常に水平力が作用している状態にある。これは主塔部において顕著で橋軸方向に約7,000kN、直角方向に約300kNの水平力が死荷重時に作用している。そのため、既存の水平支承を分散支承に取り替えることは、支承を撤去した段階で橋梁全体の形状を保つことができないため、事実上不可能であった。

 そのため、既存支承は交換せず、免震・制震的な対応で耐震補強を行う方針とした。

 今次の耐震補強のメニューは以下のとおりである。


補強一般図


 ダンパー工(A1側:2,000kN±300mm基、A2側2,000kN±350mm基)、水平力分担工10基(A1、A2に5基ずつ、厳密にいうと上部工の水平力分担構造が2基、下部工の水平力分担構造が3基ずつ)、横変位拘束構造が2基(A1,A2に1基ずつ)、段差防止構造が4基(同2基ずつ)、さらに増設ダイヤフラムの設置と桁内補強(上下の横リブを面でふさぎボルトで接合するもの)に合計32tの鋼材と8,970本のボルトを用いる。さらにA1側の補強工設置の邪魔になる桁内コンクリートを26㎥はつり、A1側には下部工の耐震補強対策として189㎥のコンクリートを充填する。

  今次耐震補強のメニュー

pageTop