大阪国道 国道26号の住吉橋を耐震性、供用性に優れた構造へ架替

大阪国道 国道26号の住吉橋を耐震性、供用性に優れた構造へ架替
2024.11.20

3径間を単純プレビーム合成桁にし、河積阻害率も低減

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国土交通省 塗替え
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 国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所は、現在国道26号住吉橋の架替えを進めている。同橋は、堺市中央部を横断するフェニックス通りの愛称で知られている国道26号の土居川渡河部架けられている橋梁で、令和3年度道路交通センサスでは交通台数5万台を誇る府下有数の国道橋であり、大型車混入率も23%に達している。一方で、建設年次は第1期が昭和6年、第2期が同39年、さらに同55年に大阪行きの拡幅桁を架設しており、いずれも昭和55年道示前の設計で耐震性能的に合っていなかった。今回、上下線ごとに橋長34m、下り線幅員20.7m、上り線幅員24.1mの単純プレビーム合成桁に架け替えるものだ。既に下り線3車線は架替えを完了しており、上下2車線の仮運用を行っている。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)

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耐震性能的に不適格、経年劣化も生じていた

昭和6、39、55の3回に分けて建設、増築

耐震性能的に不適格、経年劣化も生じていた

 同橋は増築を繰り返している少々複雑な橋梁でもある。昭和6年に中央部を架設、さらに昭和39年に橋梁の最外部、昭和55年に上下線の間に上り線のみの拡幅桁を架設している。橋長も異なり、昭和9年に架設(大正15年道路構造令に基づく)しているRC橋梁は、橋長は14m程度で、両側はアバットも兼ねたカルバート構造である。桁高が高いため、H.W.Lとのクリアランスも心もとない。


桁下クリアランス状況(国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所および奥村組提供、以下注釈なきは同)

したがって足場のクリアランスも非常に厳しいものとなる(井手迫瑞樹撮影)


 昭和39年にかけた鋼桁橋(昭和33年道路構造令)は橋長39mの3径間鋼鈑桁橋であるが、中央径間は昭和9年のRC橋とほぼ同じ径間長であり、さらに下部工は耐震的に問題のあるパイルベント橋脚を用いている。昭和55年に拡幅した鋼鈑桁部(昭和45年道路構造令)も、構造は昭和39年のものとほぼ同様であり、河積阻害率の観点からも課題がある橋梁と言える。さらに下部工のパイルベント橋脚は腐食が生じており、昭和6年建設のRC橋台部もコンクリートの剥落、鉄筋露出、伸縮装置近傍で床版コンクリートの損傷があった。架替えの必要性としては、耐震性の不足が理由と言える。


既設橋損傷状況

概略図と上下部工形式


パイルベント橋脚を採用していた


 そうした諸条件を鑑み、詳細設計を担当したパシフィックコンサルタンツは、「市街地かつ狭隘空間での施工方法および施工手順が大きな課題であり、BIM/CIMを活用しつつ、周辺環境に合致した工法検討、施工計画を立案し、これらの課題を解決」(同社)する設計に努めた。

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既設杭は河床高より下は残置が認められた

 さて、今回の橋梁架け替えは上下線いずれも上下部工全て撤去して架替えている。その中で課題となったのは、既設鋼管杭の撤去である。河川内橋脚の杭の撤去にあたっては、杭長全てを抜くか、河床高などを基準に切断し、残置するかでその難易度や労力が大きく変わってくる。

 橋台部においても架替え橋をつくるに当たってどうしても干渉する部分の杭は撤去するが、それ以外の部分は残置する方針とした。新しい住吉橋の橋台は「河川区域内ではあるが、通常では鋼矢板を打設して、河川を締切りしてから施工に入っているため、撤去および新設という点では難しくなかった」(元請の奥村組)。

 一方で、既設橋脚の撤去は、「河床のヘドロが多く、杭を掘り返して撤去することは困難であった。河川管理者にご理解いただき、河床高を確認したうえでその高さで杭を切断した。これによって労力も工期も大幅に減らすことができた」(同)。


橋台部(左)、橋脚部(右)の撤去計画図

橋台部の撤去状況

橋脚部の撤去状況

施工時に片側の橋で上下4車線を確保

濁水対策はコルゲート、シルトフェンスを使用

 さて、杭も含めた既設橋の撤去は、下図のような施工フローである。まず、①排水構造物、吊足場を設置したのちに順次上部工を撤去していく。さらに既設橋の昭和39年、55年に作った下部工および鋼管杭を撤去していく。


施工フロー図


既設上部工の撤去状況


 撤去に際して配慮したのは、交通規制、濁水および騒音対策である。

 交通規制に関しては、上り線施工時は既に設置した下り線の住吉橋に上下2車線対面通行させた状態にして、上り線の施工エリアを確保して施工した。下り線施工時も同様であったが、上り線は堺市道の歩道240mを閉鎖する必要があり、協議に時間を要した。通行量は5万台程度を有する府下有数の重交通路線であり、元々も6車線であったため、渋滞も予想された。しかし、「たまたま切り回しを行うタイミングにコロナ禍が重なり、交通量が減少したことにより、切り回しによって4車線に減少したのちも容量的には問題なく、渋滞もせず、切り回すことができた」(大阪国道事務所)。


上り線施工時の道路切り回し状況


 次に濁水対策である。同橋付近には漁業権が設定されているため、コンクリート切断時の濁水やノロ、ガラなどの処理には細心の注意を払わねばならない。そのため、吊り足場に全面シート貼りすることで、切断時のノロやガラの落下を防止した。さらに切断時に生じた水やノロなどは、遊歩道沿いに仮設したコルゲート管を設置して、排水やノロやガラが河川内に落ちることを防止している。また下部工を撤去する際は、仮桟橋を設置した範囲は、シルトフェンスを設置し、フェンス外への汚濁水の流出を阻止している。コルゲート管を伝って運ばれた濁水やノロ、ガラは濁水処理装置でpHやSS(浮遊物質量)を適切に処理した後に、下水へ放流した。


吊り足場設置範囲とコルゲート管設置状況

汚濁防止膜や排水処理装置の設置状況

騒音対策 旧桁は大ブロックで搬出、現場外で処理

 騒音対策においては当初設計から切断・撤去方法を変更した。当初設計は、旧桁を切断して現場で小割にして運ぶものであった。しかし現場は高層マンションが多く、住民の理解を得ることは難しい。そのため設計変更し、大割のままダンプに積みこんで、産業廃棄物処分場で砕いてもらうことにし、現場での騒音を極力抑制している。

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