NEXCO中日本 北陸自動車道杉谷第2跨道橋を撤去
概要動画Overview Video
NEXCO中日本金沢支社は、9月27日の深夜から28日の未明、富山市の「北陸自動車道杉谷第2跨道橋」の撤去工事を行った。本橋は、橋長59.66m、全幅5.50mのPC斜材付π型ラーメン橋で、昭和50年に小杉IC ~富山IC 間の開通と同時に供用され、約50 年が経過している。平成30年の橋梁点検の結果においてASRによるひび割れが確認され、進行しているものと推定された。ひび割れは、桁及び橋梁の広範囲で確認され、判定区分として健全度Ⅲ(要対策)となり、撤去が決定した。
北陸自動車道杉谷第2跨道橋を一夜間で撤去
NEXCO中日本 金沢支社富山保全・サービスセンター三井貴⾏所長インタビュー
協力会社各社の事前準備のおかげでスムーズな工事に
はじめに、撤去の目的などNEXCO中日本 中日本高速道路株式会社 金沢支社富山保全・サービスセンター三井貴⾏所長(写真右)に今回の工事に関するコメントをいただいた。
――今回の撤去の目的は
三井 NEXCOの管理名称は杉谷第二跨道橋、富山市での名称は鷹の橋です。昭和57年1月に日本道路公団から富山市に移管しています。富山市では、平成30年に道路橋の法令点検に準じた点検を実施し主桁、垂直材、斜材にひび割れが確認され健全診断区分Ⅲと判定され、令和元年の詳細調査によるアルカリ試験結果で残存膨張が確認されました。この結果を踏まえ令和2年に耐震性能照査を実施したところ、合成引張及び斜材引張でNGと判断されたことから、令和3年に富山市とNEXCOで撤去助成制度を活用し撤去する方針で協議しています。一方でNEXCOでは平成30年から撤去までの間、高速道路上から通常点検を行っていました。また、杉谷第二跨道橋は呉羽山を削って切土構造にしその部分に台材で設置をした構造になりますが、平成30年5月に呉羽山のり面に変状が発生し、平成30年から令和元年にかけ、のり面の影響調査および、ひび割れの進行調査を実施しました。
こうした経緯を経て、富山市は耐震性能調査の結果、合成引張及び斜材引張でNGと判断されたことや、利用状況及び北陸自動車道への影響を考慮し撤去を希望されました。
杉谷第2跨道橋 (写真:川田建設提供)
――撤去の際、気を付けたこと、施工者に対して求めたこと(施工時の安全性、施工時間など)を教えてください
三井 安全対策として上部工含めひび割れが多く発生していることからひび割れた状況で撤去するとコンクリートの落下につながることもあり、二次災害が発生する可能性があったため、撤去する前に補強対策を行いました。
撤去の際、近隣に橋梁の切断部材を置く場所がないことから、約1ヶ月前より対面通行規制を行い、施工ヤード、クレーンの組み立てヤードなどを作り、準備に入りました。杉谷第二跨道橋は高速道路の路面から桁下までが非常に高いため、撤去の際の安全対策にも非常に気を使いました。切断中のなんらかの不具合を考慮し、フェールセーフとして橋梁下に支保構造の移動式ベントの設置を行いました。また、700tクレーンを4台稼働していましたが、故障対応のため、1台予備品として、計5台を準備いたしました。また、多軸台車の予備も現場に持ってきていました。もちろん重機も各社違いますので、各社のサービスマンを当日待機していただき、故障対応も万全にしていました。
施工時間に関しては対面通行を事前にしておいて、事前準備を作業ヤードの中で行い、防護柵を撤去し、車両がすぐ進入できるような時間短縮策を実施しておりました。工夫した点に関しては、クレーン4台を用いて橋全体を吊るような形で切断をしていったというようなところでしょうか。
橋梁諸元
――今後このような跨道橋の撤去は管内に何橋ぐらいあるのでしょうか
三井 自治体の構造物ですし、現時点では、支社管内ではしばらく予定はないと聞いています。富山管内においてもほぼほとんどの跨道橋は行政に移管されており、調査を行っているものはありますが、基本的には点検で対応しているというのが実状ですので、今後早々に撤去が必要な橋梁があるとは考えていません。
――最後に今回の工事について一言をお願いします
三井 今回、工事がすごくスムーズに運んだということなのですが、受注者の皆様の技術力と事務所の指導力だと思っています。工事自体は一夜間であっという間なのですが、事前準備と撤去後の処理はものすごく苦労されていました。関係する皆様のおかげでスムーズな工事となり大変感謝しております。
――ありがとうございました。
撤去工事前の事前作業
安全対策のためのIPH工法(内圧充填接合補強)による事前の補強
「北陸自動車道杉谷第2跨道橋」は、上部工含めひび割れが多く発生していることで二次災害が発生する可能性があったため、撤去する前にIPH工法(内圧充填接合補強)による事前補強を施した。コンクリート内部に存在する空気と注入樹脂を置換し、穿孔した穴の内部から放射状に拡散することにより、末端の微細クラックまで充填することができる。本来補修のために採用される工法だが、本工事では安全対策のために採用された。このほか、工事の際、近隣に橋梁の切断部材を置く場所がないことから、約1ヶ月前より対面通行規制を行い、施工ヤードやクレーンの組み立てヤードの準備や玉掛け用吊り孔を事前にコンクリートコア削孔で施工しておく事前作業を行なった。
撤去工事当日
安全対策のため移動式ベントを設置
撤去日当日、20時から北陸自動車道富山西IC~富山IC間の通行止めを開始した。
撤去は各ブロックに分割して行なった(ブロックごとの撤去順序、重量は以下の図を参照)。撤去部材を玉掛けしてワイヤーソー、コンクリートカッターで切断、オールテレーンクレーンで吊り下げ、撤去し、積み込みして搬出するをブロックごとに繰り返す。本工事では700tオールテレーンクレーン4台を撤去に使用した。さらに故障対応のため、予備で1台待機させた。これは700tクレーンの日本全国保有台数のおよそ1/4となるという。
21時より中央分離帯のガードレールを撤去。桁下高さが12.3mもあるためフェールセーフとして(橋梁上部工の落下対策)移動式ベントを設置。700tクレーン用鉄板を敷設した。
移動式ベントの設置(写真:川田建設提供・撮影者:古明地 賢一)
その後、右図の側径間張出①ア 2断面、側径間張出②イ 2断面、側径間張出③ウ 2断面、側径間張出④エ 2断面(下図参照)の切断を開始した。
ワイヤーソーでの切断(写真:川田建設提供・撮影者:古明地 賢一)