新しい時代のインフラ・マネジメント考

新しい時代のインフラ・マネジメント考
2024.04.22

①2024年正月の大地震における富山市の対応

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新しい時代のインフラ・マネジメント考
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鋼材減肉部・孔食部における次世代パテ補修工法! 鋼構造物の再生と環境の調和 循環式ブラスト工法、循環式ショットピーニング工法 人と人とをつなぐ、それはやがて、景色になる
>植野 芳彦氏

植野インフラマネジメントオフィス 代表
一般社団法人 国際建造物保全技術協会 理事長

植野 芳彦

1.はじめに

 新年度あけましておめでとうございます。新たな部署や新たな仕事に疲れた方々も多く、希望に満ちた日々を送られているかと思います。

 もう、3カ月たちますが、1月1日に発生した、能登半島大地震で亡くなられた方、被災された方々には、哀悼の意とお悔やみ、お見舞いの意を表します。

 しかし、私自身、なにもできなかったが、今回の地震では、多くのことが、あらためて見えてきて、幻滅もした。このままでは危機管理は、この国では無理だと感じ、改めて考えさせられ、今後の自分の考え方、行動もさらに変わる。

 良くあることだが、中央と地元、行政、研究者、コンサル、実務者、消防、等など入り乱れての対応であるが、役割分担と時系列での俯瞰的投入計画が必要である。そうでないと現場は混乱するだけで、実際の復旧に支障をきたしてしまう。そもそもが、災害等においてリスクマネジメントが通常時から、いつまでたってもできないのが問題である。「災害協定」等に関しても見直しが必要であろう。
 今回の地震などを含めてインフラメンテナンスに関し感じたことを述べる。違った考えもあり、私は現役ではないので、聞き流していただきたい。

わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です! スクラップ&ビルドからストックマネジメントの時代へ ノアの橋梁。

2.初期対応の混乱

 今回の地震は、1月1日という、お正月におきたために、人的被害を拡大した可能性もある。実家に居た者、旅行中、スキー中と出先に居た者、と言う状況で、なかなか対応も大変であったろう。富山市の職員の話では、地震発生後、準備をして、市役所に向かったが道路がぐちゃぐちゃで、盛り上がっているところ、へこんでいるところと、大変だった。

道路の損傷状況


 何とか、市役所にたどり着くと、毎日出勤しているところなのだが、「ここはどこ?」と言う感じで普段とは違う光景だった。ロッカーや書類棚がたおれ、書類が散乱していた。防火扉も閉まっていたとのこと。翌日明るくなってから道路の状況を見ると、「良く来たな」と思ったと言っていた。そんな状況で暗い中、彼らは懐中電灯を手に、主要な心配な橋を診に回ってくれた。私は電話とメールで確認することができた。地震発生後、一番心配だったオーバーブリッジの、計測を依頼している調査会社の担当に電話したら、「今、現場に居ますが大丈夫そうです。」と言う言葉だった。「ええ?現場にいるの? 気を付けてね!」で安心した。こういう企業もある。大したものだ。土木系の企業、土木技術者は何も言わなくとも使命感で動いているところが普段から強調されている。温度差はあるだろうが、こういう時の使命感が他の企業を含めてもすごい。いちいち言われなくても社会のために尽くそうという気概があると言うことである。

 私の経験でも災害派生後にすぐ対応しなければならないのだが、危険である。地震発生が夕暮れ直前であったから、夜の暗い中での作業は自分の身も守らなければならない。使命感がすべてだろうが、私は、「明るくなってから行け」と言っている。よほど緊急で人命にかかわることは別として、自分たちに事故があれば、本末転倒である。

夜間の確認状況


 常時と異常時の考え方は違って当然である。常時において正しい手順と判断は、正式な方法でしなければならないが、異常時は、判断力と決断力、信念が必要である。ここで時間をかけていれば2次災害を起こすかもしれない。応急対策の判断処置も重要である。それを指揮できる人間も必要である。お客さんでは無理である。早急に対応しなければならないことと、時間をかけてもよいもの。どうしても時間が必要なもの……とさまざな条件下での検討が必要になる。当事者は大変である。遠方で見て、机上で議論している方々には、わからないであろう。しかし、そういう方々の声の方が伝わってしまう。これは、マスコミにも問題がある。

 この辺の報道の仕方も通常時も含めて、考え直さないと、大本営発表が国民市民の判断も迷わせる。もっともそのほうが都合の良い人たちもいるのは事実である。自治体は地域性が強く、中央の考え方が通用するとは限らない。県民性、住民性や地域特有の気候や地形、考え方がある。一律に、こうしろ、ああしろと言われてもなかなかうまくいかない。このことをもっと考えるべきである。地域の文化や個性も考えなければ、ものごとは、うまくは進まない。そこがインフラ・メンテナンスにおいても、ここが難しいところである。

3.液状化

 今回の地震では地震動の強さ、津波など、被害を引き起こす要因は多種類有った。中でも液状化は非常に広範囲に及んだ。富山においても液状化の被害が多い。高岡や氷見と西に、能登半島に近ずくに従ってその被害も大きい。液状化に関しては、阪神大震災時に、大きくクローズアップされた。さらには、東日本大震災においても特に浦安の高級住宅地などでの被害も報告されている。古くは新潟地震(1964年)においても報告され、県営アパートが傾いた。液状化のメカニズムなども研究されているが詳細は分かっていない。この被害が大きい場所は主に、埋め立てられた土地、土砂が堆積されたである。富山市においては歴史上、市役所周辺がそういう場所になっており、今回も、よりによって市役所周辺の被害が大きい。さらに、埋め立てられた住宅街でも起こっている。このような、場所では液状化の被害に注意しなければならない。できればそういう場所には住まないほうが良いが、この狭い日本ではなかなか難しい。

橋梁下部工の点検


 この液状化の問題は対処が難しく、かつては一度被害を受ければ次は起きないという説もあったが実際には再液状化も報告されている厄介な問題である。昔を思い出し、いろいろ調べてみたが、有効な対処法はない。コストをかければできないこともないようだが費用対効果の問題がある。日本国内で液状化対策が有効に行われたのは、浦安の住宅街だけだとも言われている。これは、コストが高いからである。コストをかけられれば問題は無いが、出はそれが本当に全市民から納得されるのか?この辺は資産価値、固定資産等税金の問題にもかかわってくる。

 まず、構造物の新設時には、地質調査を十分に行い、支持層までしっかり杭を打つことが重要である。しかし、ケチって、支持層まで達していなければ、意味はない。また、薬液などによる地盤改良も効果はあるが、その範囲の問題などもあり難しい。この液状化に側方流動などが加わればさらに厄介な問題となる。橋梁なども壊される。

 土中の構造物は浮き上がりが生じ、よくマンホールなどが飛び出た写真を見ると思うがそういうことが生じる。液状化の被害は、さほど大きくはないが、直すのにも有効な手法が無く、厄介であり、中途半端な結果になってしまうし、時間もコストもかかる。そして、住宅の問題が多い。この住宅地の液状化は、購入前に調べないと、被害が出てしまう。埋め立て地が多い。ここで簡単に液状化に関して復習してみよう。

 「液状化」とは、地下水位以下にある、ゆるく堆積した砂質地盤が強い地震動を受けて液体のようになる現象である。ゆるい砂質地盤土は、土粒子間の間隙が大きく、配列構造が不安定であることから、地震のような強い繰返しせん断荷重が作用した場合には、徐々に土粒子が移動して間隙を埋め、安定な状態になろうとする。しかし、間隙が水で満たされている場合には移動が妨げられ、土粒子の噛み合わせが徐々にはずれてゆき、最終的には噛み合わせが完全にはずれて土粒子は水の中に浮いている状態となり、地盤は液状を呈することになる。

液状化が生じるメカニズム


 液状化はこのようなメカニズムによって生じ、周囲から加わってくる力は、間隙水の圧力で支えなければならないことから、地盤中の水圧が上昇する。この上昇した水圧を過剰間隙水圧と呼ぶ。液状になった砂質地盤は、構造物を支持する力を失ったり、地盤が傾斜している場合には、低い方に向かって流れ出す側方流動が生じる。

 砂質土の液状化判定は、液状化に対する抵抗率を用いる方法が広く普及している。この方法は、昭和55年道路橋示方書にはじめて導入され、その後平成2年道路橋示方書の改訂に伴い一部改定された。これは各種の土木関係諸基準類にも準用されてきた。この判定方法は、 1)標準貫入試験によるN値と土の粒度のみにより液状化強度を評価すること、2)地震時外力も地表面最大加速度から簡易に評価できること、3)液状化に対する抵抗率が1より大きいか否かにより液状化発生の有無を推定できること、4)比較的緩い砂質土を対象とすること、等を特徴としている。

 平成7年兵庫県南部地震の発生は上記の判定方法に以下のような課題を突きつけた。
 ① 礫質土の液状化が湾岸埋立地で発生し、これを判定対象に含めるべきである。
 ② 大規模地震の際には比較的密な砂質土も液状化する。

 したがって、適切な評価方法が必要となった。また、従来の道路橋示方書では、液状化の判定に用いる設計地震動と下部構造および上部構造の設計地震動に整合がとれていなかったことも課題であった。
 橋に影響を与える流動化の発生要因については十分解明されておらず、平成8年道路橋示方書においては、流動化の判定および流動化に対する基礎の耐震設計は平成7年兵庫県南部地震のデータに基づいて規定された。
 液状化が起きるような土地においては、さらに側方流動についても注意が必要である。

そして、液状化の対策工法は様々なものがあるが、大きく以下のとおり分類できる。

① 密度増大工法
 サンドコンパクションパイル工法
 バイブロフローテーション工法
 転圧工法
 群杭工法

② 固結工法
 深層混合処理工法
 薬液注入工法

③ 置換方法
 緩い砂地盤を、液状化しない別の材料で置き換え

④ 地下水位低下工法
 ディープウェル工法
 排水溝工法

⑤ 地盤の変形抑制
 連続地中壁
 シートパイル締切工法

なのだが、根本的解決法はないという厄介者で、液状化の対策の成功例を聞かない。

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