道路橋床版の高耐久化を求めて~床版の革命的変化を追求した半世紀~
(3)劣化が進行した場合の対策に関する一考察
国交省ではすでに示した図4.1のような対策区分と提示しているが、RC床版の劣化はたわみあるいはひびわれ密度と比例的に進むものではなく、右上がりであるが時間との関係は双曲線のような関係が多くの実験で得られているので、建設後の時間を横軸にとって、対策は区分をたわみと同様な双曲線を活用した図4.4を提案したい。建設後の経過時間が長くなれば安定した疲労破壊が進むと思われるが、短い期間で劣化は早く進む場合には構造的な問題が有ったり、橋梁が荷重環境の悪い地域に位置する場合には密な点検調査を要求すべきであると提案するものである。
図4.4
(4)たわみの測定方法について
床版たわみは支持桁との相関で計測するので、計測に使用する変位計に、支持桁の変形が入らない工夫が必要である。従来よく使用されていた方法は、変位計を設置する梁を支持桁の補剛材に溶接で取り付けるものであった。この梁の曲げ剛性が大きい場合には問題は少ないと思われるが、支持桁を含む橋軸直角断面は外力を受けて図4.5に例示したような変形が起り、それに伴って変位計支持梁も変形して、正しい床版たわみが計測去れない可能性が生じる。
図4.5
このような可能性を無くするには支持梁を単純梁にすることである。一端可動、他端単純支持にすれば良い。ただし、全体が移動しないように単純支持端をシャコ万(蝦蛄万力、C字型の小型万力)で軽く締めておく必要がある。支持梁が長くてスレンダーな場合には、計測中に風の影響や、自動車の走行によってこの梁が共振したり、撓むことがあるので、この梁をトラス状に補剛することも要求される(図4.6)。
図4.6(上のaとbは不適切な支持梁の例で下の図は適切な支持梁の例)
(5)前田幸雄先生、林 正先生が 昭和55年度土木学会田中賞を受賞される
授賞題目は「橋梁骨組構造の非線形式解析法とアーチの実用計算法に関する研究(総合題目)」であった。
一件関係が無いようであるが、本件、本州四国連絡橋の第三ルートに架けられたアーチ橋の大三島橋の非線形解析によるアーチリブの途中で側タイ(引張部材)によって固定することの構造合理性が認められたものであるが、この構造の合理性を実験的に証明するため、前田先生から是非に実験してくれと依頼され、約2か月で供試体、載荷法、実験装置の図面を製図台5台並べ構造種別毎に図を作成した。板厚3.2mmで供試体を製作する必要があるため、薄物専門の車両会社「大阪車両」に図面をもって依頼した。部材数が多く、アーチ部は一体製作するが、床組み部はハンガーを含めて、試験装置上で一体化する工夫をした。この組上った状態で、鉛直載荷用のトーナメント式載荷装置と面外荷重装置を同時に組み上げた。鉛直載荷と面外荷重も鉛直荷重に変換して合計4基の油圧ジャッキで済ませた。全6ヶ月の大変濃密な業務であった。
写真4.1は出来上がった大三島橋で、写真4.2は実験装置全体と面内鉛直荷重載荷装置、写真4.3は面外荷重載荷装置、写真4.4は林先生自ら油圧ジャッキを操作している状況である。約5年間のコーヒーを頂いたお礼を込めた私の試験法業績の一紹介である。内容は複雑な構造の成立を解析と実験によって解明でき、実橋の安全性・信頼性が確認できたということである。
写真4.1 / 写真4.2
写真4.3 / 写真4.4
次回、話題5で誕生したゴンゴロ号と、実験の特徴を紹介したい。