コンクリート打設は失敗から学ぶ
50年、100年先の国民にに感謝されるようなインフラ造り
話しを戻しますが、白く均一に仕上がったコンクリートは完成時に綺麗に見えますが、近い将来、ひび割れが多数発生することが少なくなく、そうした駆体はコンクリートに空隙が多いためか雨水や劣化因子を吸収しやすく、いったん濡れると乾きも極端に遅いです。今回紹介した寒冷地のコンクリートにおいて、冬場のコンクリートに水が侵入すると簡単には抜けませんので凍結融解の作用を受けてコンクリートはダメージを受けやすくなりますが、温暖な地域においてもコンクリートを密実とできなければ劣化因子が侵入して損傷を受けてしまうので、出来る限りで結構ですのでコンクリート打設の日だけは丁寧な施工ができる環境を整備していただけたらと願うばかりです。
こうした現場を見る度に様々な気付きがあって、使用材料、施工等について、自分であればどのように是正すれば良いか理解できて勉強になります。今までも自分に知らない事がたくさんある事を感じてきましたが、その気付きは尽きる事がなく、コンクリートの奥深さについて日々感じることばかりです。そして不具合を見る度に「コンクリートの品質は生コン打設のその日の善し悪しでほぼ決まる」という気持ちは一層強くなります。実際、生コン打設以外の行為によって、悪い品質が良いモノとなったというような経験がありませんので、生コン打設とその準備ならびに材料選びがとても重要だと思います。
先日、ある作家さんの番組で、我が国が1945年に終戦を迎え、占領したGHQが日本の産業の現状をアメリカに報告した法令報告書の最後の部分を紹介していました。その最後の文章で、「この国は(日本)は戦後50年経っても1930年の水準に戻らないだろう」と報告したことに触れ、それに対して作家さんは、「我が国は戦後19年後の1964年において東京から新大阪で戦勝国でさえ不可能と言われた高速鉄道を開通させ、オリンピックまで開催した」と誇らしげに言われておりました。新幹線はいまだ世界最高の高速鉄道であり、類似する他国の技術が僅かばかりありますが、その信頼度・技術力は日本が圧倒的に抜きん出ている事が年を追う毎に証明されつつあります。
驚く事に1964年に開通した新幹線(東京から新大阪 約552㎞)をたった5年3ヶ月で完成させたとのこと。私にはとても想像できませんが、先人達の血と汗の結晶の上に私たちの生活が支えられている事を思うと、私たちも50年100年先の国民に同じように感謝されるようなインフラ造りとなっているか考えて行動したいと思うところです。
高品質・高耐久性が効率化の上位にあるのは論じるまでもない
私たちの先輩方が構築された新幹線が世界初の高速鉄道として60年経った今も世界最高だと言われること。そして、廣井勇先生や吉田徳治郎先生の教えはコンクリートの原点と言ってよいかと思いますが、そうした考えで構築されたコンクリートの一部は100年経過しても健全である事を考えると、モノ造りが国家や子孫に与える恩恵は計り知れませんが、皆さんはそうした偉大な先人達が遺されたコンクリート構築について、可能な限り挑戦してみたくはないでしょうか。
いま叫ばれる持続可能性・効率化ですが、高品質・高耐久性が効率化の上位にあるのは論じるまでもないでしょう。両者は国家100年、1,000年と続いて効率化と高耐久が試行錯誤の末に工種毎に昇華される難しい取組みだろうと思います。効率化は産官学で推進していますが、片方の廣井先生・吉田先生のように、コンクリート打設の日に出来る事をやり尽くす、そうした事が難しい現状が続いていけばどうなるかとても心配です。
コンクリートの密実化は手間がかかりますが将来的に国に貢献できる、もしくは世界のどこかで必要とされるのは間違いありません。新幹線等の日本のインフラが世界最高だというのは紛れもない事実、そこに耐久性が加われば日本の技術の立ち位置はさらに高くなり、長きに渡って使える遺産として勝ち残り続けると思いますが皆さんはどう感じるでしょう。
今回も独り言にお付き合いいただきまして、まことにありがとうございました。