橋梁四方山話
橋の低炭素化を希求するプロジェクトの最適化
橋にとってサステナビリティは「性能」である。これをどう最適化するかがfib(国際コンクリート連合)で議論が始まっている。社会的側面、経済的側面、環境的側面という異なる物理量をどうやって最適化すればよいのであろう。最も難しい社会的側面は、橋の建設や橋の機能不全が社会に与える影響を定量化する必要がある。
一つ考えられることは、これらのイベントが起因となるCO2排出量をプライシングしてコストに換算し、ライフサイクルでの経済的評価に変換する方法である。コストは分かり易いし意思決定の合意形成で受け入れられやすい。コストはサステナビリティの最適化の目的関数に十分なり得るのである。そのためにもCO2排出量のプライシングとカーボンクレジットの市場形成は不可欠である。インフラではこのような議論がまだ日本でなされていない。日本が様子見をしている間に世界はどんどん先を行き、枠組み作りが進んでいることを認識しなければない。
橋の長寿命化は新設を減らし市場を縮小するのであろうか。カーボンニュートラルは経済成長を縮小するという経済学者もいる。しかし、これからのインフラ建設による経済発展は、低炭素、脱炭素技術で構築していかなければならないことは必然である。技術革新により新しい市場が生まれる。低炭素、脱炭素につながる技術革新により、経済発展とカーボンニュートラルを両立することは可能なのだと、土木技術者が世の中に示すことが何より重要なのである。
参考文献
1)畑山義人、井上雅弘、菅原登志也、高橋敏五郎と木コンクリート橋、CS4-013、土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
2)菅原寛文、野澤伸一郎、流出した鋼桁に対する再利用の判定 -八戸線大浜川橋りょうの復旧を例として-、日本鉄道施設協会誌2022年8月
3)泉満明、プレストレストコンクリート橋の建設における環境問題、プレストレストコンクリート技術協会、第12回シンポジウム論文集、2003年10月
4)泉満明、建設事業における省エネルギー、土木学会誌、1984年10月
5)泉満明、プレストレストコンクリート構造物の建設に関連した環境問題、プレストレストコンクリート、Vol. 47、No. 6、2005年
6)Arifa Z. Kasuga A. LCA of a challenging low carbon ultra-high durability non-metallic bridge. Proceedings of the fib Congress, Oslo. pp 2100-2109, 2022
7)Haist, M., et al., Nachhaltiger Betonbau – Vom CO 2 – und ressourceneffizienten Beton und Tragwerk zur nachhaltigen Konstruktion, In: Bauphysik-Kalender, Schwerpunkt: Nachhaltigkeit, Fouad, Nabil A. (Eds.), Ernst & Sohn, Berlin, 2023, pp. 259-363
8)Mariia Nesterova, Reliability of structures exposed to traffic and environmental loads, Thèse, University Paris-Est Marne-la-Vallée, Doctoral School of Science, Engineering and Environment, 2019 October