高専発、インフラメンテナンス人材育成・KOSEN-REIM(高専レイム)の挑戦
第3回 私がKOSEN-REIMの理事長を引き受けたわけ
一般財団法人高専インフラメンテナンス人材育成推進機構(KOSEN-REIM財団)
理事長
西川 和廣氏
はじめに
2023年6月、一般財団法人高専インフラメンテナンス人材育成推進機構(KOSEN-REIM財団)の発足に際し、理事長をお引き受けすることになりました。この話を聞いて、意外に思われた方も少なくないと思いますので、まずはその経緯についての説明から始めたいと思います。(冒頭写真は©ElinaYamasaki)
高専との出会いとつながった縁
2010年6月3日ですから14年以上も前のことですが、香川高等専門学校の太田貞次教授(当時)が主催されていた実践的橋梁維持管理講座で講演させていただきました。講演のタイトルは「社会資本ストックの戦略的維持管理~管理者が知らなければならないこと~」で、実践的という言葉を意識してお話しました。四国内の高専と回線をつなげて聞いていただいたように記憶しています。
太田教授はかつて大手鋼橋メーカーの技術者で、鋼道路橋が専門であった私とは、土木学会の鋼構造委員会などで親交がありました。当初はその縁で講師として声をかけていただいたものと理解していました。
そういえば高専の卒業生は土木研究所にも少なからず在籍していました。私の所属していた橋梁研究室だけでもすぐに数人の顔が浮かびます。皆実務に長けていて、頼りになる人材であることはそのころから認識していました。ちなみに90年代、橋梁研究室長だった時期に、2台の輪荷重走行試験機を導入してRC床版の疲労試験を精力的に実施しましたが、担当してもらった研究員は、香川高専の前身である高松高専の出身でした。これも何かの縁?家業を継ぐために香川の実家に戻っていた彼は、私の高専での講演に聴講に来てくれました。生まれて初めて訪れた高専では、大学とは全く異なり、礼儀正しく規律のある雰囲気について印象深く感じました。
この講演の2か月後に、太田先生から同じ内容で良いからもう一度講演してほしいと依頼されました。それが2010年8月2日の、全国11の高専による橋の老朽化対策研究会のキックオフ会議での基調講演だったのです。今から考えると、これがKOSEN-REIMにつながる最初の一歩だったように思います。
舞鶴高専 iMecフォーラム
その後、橋の老朽化対策研究会で活動する中で、舞鶴高専において社会基盤メンテナンス教育センター(iMec)設立事業が高専改革経費として採択され、2014年1月にiMecが設立されました。そして2016年12月、第1回の舞鶴高専 iMecフォーラムがキャンパスプラザ京都にて開催され、そこに特別講演者として招かれました。ここではiMecの教育活動について話を聞いていたので、「総合診療医 Dr. General に学ぶ橋の維持管理~橋の研修医制度のすすめ~」というテーマで、私が(一財)橋梁調査会時代に実践し、効果を確証していた診断員のスキルアップ手法について講演させていただきました。
この時に私に声をかける役を担ってくれた舞鶴高専の助教(当時)は、元国土交通省の職員で、国総研在籍中、企画部門で研究方針の取りまとめをともにしていた女性で、国交省を退職し、故郷の京都に戻ってきていたとのことでした。彼女は、土木ではありませんが、私とは大学院の同窓となります。ここでも不思議な縁でつながっているように思いました。
そしてKOSEN-REIMへ
ちょうど6年後の2022年12月、恒例になっていた舞鶴高専 iMecフォーラムが京都キャンパスプラザで行われ、再び講師として呼ばれることになりました。前回は第1回フォーラムでのキックオフ講演という位置づけでしたが、行ってみるとKOSEN-REIM準備のためのフォーラムということになっていました。
私の記憶が正しければ、この時に財団設立の話を聞き、設立された暁には理事長にと打診されたように思います。ちなみにこの時の講演テーマは「土木研究所が開発する診断AIシステムについて」でした。
当初はこの形での資金集めはなかなか難しいのではないかと思ったこと、そして後述するもう一つの理由で即答が難しかったことを覚えています。
それでも翌年7月20日、(一財)KOSEN-REIM設立記念フォーラムで理事長としてご挨拶したときに、それまで4回の講演を行ってきたご縁を考えれば、理事長を引き受けるのは必然なのかもしれませんとお話しすることになりました。
今年7月、東京で開かれたKOSEN-REIMフォーラムにて