インフラ未来へのブレイクスルー -目指すは、インフラエンジニアのオンリーワン-
④便利さの裏側に何かが失われている ‐ 進歩とは必ず改善を意味するものではない ‐
4. おわりに
昨年度公開された定期点検要領等の改定について、個人的に国の担当者に対し言いたいことがある。実は昨年の春、私は道路橋定期点検要領改訂の話を大学の先生から聞き、国で改定に関与しているTさんに「〇〇さん、定期点検要領を改定するとの話を聞いたのですが、どのような内容かを教えてもらえませんか?」と問い合わせたことがある。
Tさんは、電話越しでも分かる面倒くさそうな態度で、「髙木さん、未だに点検要領の改訂に関心があるのですか?・・・・・点検要領の改定は行いますが書式改訂の話であり、要領自体は変えません」との回答であった。確かに今回の改訂は、見方によっては変えてないともとられるが、よく読むと結構種々な面でまで変えている。私としては、わざわざ私が個人的に問い合わせたのであるから、以前から付き合いのあるTさんからもう少し丁寧な説明が聞きたかった、非常に残念な気持ちと私に対する対応に腹立たしい気持ちで一杯となった。そうか、Tさんは、私が民間人、民間企業人になったことから付き合い方を変えたのかもしれない。Tさんもいずれ退職する時が来るはずで、その後にどのような技術者になるのか楽しみである。
今回解説した道路橋関連の定期点検要領改訂については、点検要領改訂に携わっている種々な人々に聞きまわった内容と、その後公開された改定を熟読した結果である。私が民間企業へ転職したこともあってTさんは、私個人の評価を国の施策に関与し発言する可能性は低いと判断した結果であろう。Tさんが改定の趣旨、最新技術の扱いや専門家の参画などについて、考え方や判断基準等を説明していれば、もう少し早く読者に情報提供が出来たと思う。非常に残念である。
今回の連載の最後に、管理者へ苦言を呈して終わりとする。苦言の内容は、 「何とかならないですか!高架橋の見苦しい景観」である。
ここ数年、大規模修繕施策が高速道路株式会社の主たる事業として公開され、テレビ放映の数も非常に多い。私が今回問題視しているのは、道路施設に目立つ、見苦しい景観に関する注文・要望である。確かに鋼桁の再塗装にはお金がかかるのは分かるが、写真-5,6に示すような劣悪な状態を見るたびに心を痛めている。鋼桁の塗膜劣化には、最大の配慮を行い、塗装の塗替えを行っていると聞いているので、鋼製橋脚には心が回らないかもしれないが、それにしても汚い!
写真-5 鋼材の腐食が目立つ鋼製橋脚 / 写真-6 著しい塗装の劣化と腐食:鋼製橋脚
また、市街地の跨道橋に目だつ劣化状態に遮音壁外面の腐食があげられる。特に、高架橋の騒音対策として、既設橋梁に遮音壁を跡付けした外面の中には、写真‐7に示すように画面パネルが腐食し、錆び汁が垂れている状況が散見される。景観重視と公言している割には、当該組織の職員はこのような状況に関心が無いのか、又は見て見ぬふりをしているのではと思う。非常に残念である。
写真-7 著しい塗装の劣化と腐食:遮音壁
鋼桁も鋼製橋脚も防食機能の劣化、鋼材の腐食、そして断面欠損となり、対策手遅れとなれば部材交換となる。自動車専用道路を跨ぐ鋼製橋脚、上り車線及び外回り車線と交差する下り車線及び内回り車線交差部の鋼桁など塗替えに多額の費用と手間がかかる範囲は、塗替えに多額の費用が必要となるのは分かるが、道路利用者や周辺住民にとって不快を感じ、苦痛となっている状況を忘れてはならない。
今回の連載は、私自身が執筆時期を誤っていたことによる短期サイクル、2カ月経過後での話題提供となった。このようなことから、私の連載を楽しみにしている読者に取って今回の話題提供等は、キレがなく、興味をそそる内容では無かったとの評価を受ける可能性が高い。
さて、次回の本連載の私からの話題提供は、いつもの3か月後、4月1日(火曜日)新年度初めに掲載の予定である。私が忘れなければ次回連載の話題提供は、今回も少し触れたICT技術に関する話題提供を予定しているが、それまでの間に大事故が発生し、話題提供変更とならないことを私は強く祈っている。最初に触れた、今年の干支、「乙巳」に反する事態が起こらないことを祈願して終わりとする。(次回は2025年4月1日に掲載いたします)