まちづくり効果を高める橋梁デザイン

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2025.02.17

Vol.5 手を動かし、見て触れて考えるー模型による検討のススメ

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人と自然が微笑む社会へ コンクリートを”はつる” 近接目視点検 非破壊検査 おまかせください

明日から使える模型のつくりかた

検討過程における模型の果たす役割をお読みいただき、模型を作ってみようかなと思った方がいるかもしれません(だとしたら、とても嬉しいです)。そんな方のために、簡単な模型のつくりかたを2つ説明しておきます。

 ひとつは、スチレンペーパーやスチレンボードでつくる全体模型です。前回の税関前歩道橋の模型や今回の太田川大橋の橋梁計画の模型がこれです。前後の道路や河川、周辺のまちとの関係をおおまかに掴みながら、橋梁形式や支間割の検討をするのに適しています。

 スチレンボードに平面図を貼り、必要な桁高分をスチレンボードもしくはスチレンペーパーを重ね合わせれば桁は完成です。アーチやエスクトラドーズド橋のアーチリブやタワーは、木の棒材やスチレンボードでつくります。ケーブルは、模型だとテンションを入れるのが難しいので、プラバンなど張りがあるものを用いたり、スケールによっては省略することもあります。大切なのは、各パーツのサイズにリアリティを持たせることと、うまく省略すること、車や人などサイズがわかるパーツを置くことです。省略は意外に難しいのですが、太田川大橋の1/500模型の高欄(省略している)や、税関前歩道橋の模型の高欄(クリアファイルをカットしたもの)のように、製作する縮尺と検討したい項目を照らし合わせ、大きな影響を与えないものは省略すると考えると良いと思います。

 また、周辺状況は、スチレンペーパーを重ねて地形を表現し、平面図を貼るのが楽です。高低差のある場所では、厚みのあるスチレンペーパーを使うなど、労力を減らす工夫を検討すると良いと思います。余裕があれば、樹木を植えるとより雰囲気が掴みやすくなります。写真20は、あるプロジェクトの橋梁計画時の模型で、上記の方法がベースになっています。

写真20 S市での橋梁計画時の模型(当研究室小林大燿くん(当時学部4年)作成)


 もうひとつが、ケント紙とスチレンボードでつくる断面模型です。写真21は、本学の演習科目「景観デザインの基礎B」で学部1年生が製作したものです。この演習は、模型の基本的な作り方を学ぶ科目です。大学に入るまで模型をつくったことのない学生がほとんどですが、丁寧に取り組むことと、型紙を準備することで、初めてとは思えないほどうまくできています。高欄と橋上は自由としているので、それぞれ工夫しています。

 この模型は、図2のように、スチレンボードによる芯材を、ケント紙で包むことでつくります。ケント紙は、山折りを基本とし、折り目線に沿って優しくカッターでなぞることで、きれいに折ることができます。スチレンボードの芯材をつくる際には、ケント紙の厚み分だけ小さく型紙をつくるのがコツです。

写真21 学部1年生の橋梁断面模型(左:落合優くん、右:佐藤航輝くん)

図2 組み立てのイメージ

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気分が上がる大人の模型道具

 模型材料3)や基本的な模型道具4)については、先ほどのドボクノモケイでも紹介しています。それらと被る道具もありますが、やる気を高めるために、まず道具を揃えてみるというのもありだと思います。

 僕が使っている道具からおすすめできるものをいくつか紹介します。写真のカッターは、グランツカッターという製品で、刃先がぐらつかず、適度な重みもあり使いやすいです。また、作業のストレスを減らす上で重要なのはピンセットです。写真のものは、クニペックスの製品で、細かいものでもしっかりと掴むことができます。

 模型では、スチレンボンドという接着剤を使うことが多いのですが、仕上がりに大きく影響するのが糊付けです。スチレンボンドは固まると少し膨張するので、できるだけ薄く、必要最小限につける必要があります。その作業を助けてくれるのが、ぞうさんと呼ばれる注入器です。先端にピンを刺すことで蓋することができます。ただ、使った後で、きれいに掃除しないと、スチノリが固まって使えなくなってしまいます。そんなときは、消毒用のエタノールにつけてあげると、スチノリがきれいに溶けて、また使えるようになります。小型のニッパーもプラ棒や針金の切断など、あると便利です。カッターマットには、ハーフサイズのものや、折りたたみのものもありますので、デスクで作業する際には便利です。


写真22 おすすめの模型道具

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おわりに

 今回は、目指す橋のかたちを描くために役にたつ模型を取り上げました。先述した「ドボクノモケイ」の執筆から10年以上経過しましたが、まだ土木分野では、模型を使った検討はごくごく一部にとどまっています。

 その一方で、実際のプロジェクトで模型を見た行政担当者のほぼ全ての方は、模型があるとわかりやすいですね!とおっしゃいます。しかも、打ち合わせで模型が出てきたのは初めて、という方がほとんどです。

 つまり、多くの方が、模型の価値を実感できるけれど、模型による検討を経験したことがない。だから、模型による検討が広まっていかないという構図になっています。

 そこで、これをお読みになっている行政担当者、建設コンサルタントのみなさんにお願いです。もし、この原稿をお読みになって模型による検討に価値を感じていただけたなら、ぜひ発注時の仕様に模型による検討という項目を加えていただけませんでしょうか?また、建設コンサルタントのみなさんには、まずは大事だと思う橋を選び、自主的に模型による検討を取り入れてみるのはいかがでしょう。次の10年までには、模型による検討が当たり前になるのを目指しませんか。

 今回もご覧いただきありがとうございました。次回の内容はこれから考えますが、3月末頃を予定しております。次回もどうぞよろしくお願いします。

脚注・参考文献
1)飯沼一雄:「籾山模型の魅力」 ~ 創業100年 父子二代で生み出した珠玉の艦船模型 ~,デジタル造船資料館,2012.
https://zousen-shiryoukan.jasnaoe.or.jp/column/2437/

2)EA協会WEB機関誌「ドボクノモケイ」
https://www.engineer-architect.jp/serial/cate/model/

3)EA協会WEB機関誌「ドボクノモケイ」 下部に模型材料
https://www.engineer-architect.jp/serial/cate/model/1050/

4)EA協会WEB機関誌「ドボクノモケイ」 下部に模型道具
https://www.engineer-architect.jp/serial/cate/model/1067/

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