Interview

日本ウォータージェット施工協会 設立30年が経過、より安全かつ確実な品質を確保

2024.05.16

國川正勝会長インタビュー

Tag
WJ
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アクアジェット工法 全てのコンクリート構造物の調査・診断・補強・補修に関する総合エンジニア スクラップ&ビルドからストックマネジメントの時代へ

昨年からWJ施工管理技士という資格を新設

昨年からWJ施工管理技士という資格を新設

資格を有している人が現場を管理

 ――ハンドガンはそうした規格がないわけですね

 國川 ですので、それは、協会が独自に規格を定めています。

 ――それは安全に対する資格ですかそれとも最低限の品質管理についての規格ですか

 國川 品質というよりも操作手順をしっかり覚えて、安全に施工できる技能者に資格を認めています。それについては実際に機械を動かしてはつらせているわけではありません。

 ――実技試験では実際に供試体のはつりをしていますか

 國川 はつりはしていません。鉄板に色を付けておいて、WJを適切に操作することで、除去する場所の色を適切に消すことができればよいとしています。それまでの操作の手順もチェックして。あくまで施工品質の底上げではなく、安全を意識して手順通り作業を行えているか? というところに重きを置いています。さらに昨年からWJ施工管理技士という資格を新たに作りました。


ハンドガン安全操作講習


 ――それはどのような資格ですか

 國川 これで品質を担保しようと考えています。WJの施工に関する知識を問う難易度の高いペーパーテストを行い、合格した人に施工管理技士の資格を認めます。この資格を有している人が現場を管理することで、WJの施工品質を高めようというものです。


施工管理技士の資格認定試験も行っている

スクラップ&ビルドからストックマネジメントの時代へ 超高圧水を安全に 日常も、いかなるときも社会インフラの安全を守り、安定した社会を支えます

事故を抜本的に防ぐ

施工管理技士の配置が事実上の標準になっていく

――WJの現場を管理する知識がある人々が現場を仕切るというのは重要ですね。これは現場を仕切るために必ず配置するような資格になるのですか

 國川 現在のところ必須条件ではありません。ただ、こうした知識を有する管理者がいるだけで発注者は安心すると思います。当協会自体の評価も大きく変わりうると思っています。現在は必須ではありませんがこうした現場が増えれば、施工管理技士の配置が事実上の標準になっていくと思っていますし、そうしたいと考えています。
 例えばコンクリート診断士だって、国が認定している資格ではありませんが、立派な資格として今や成立しています。WJの現場においても施工管理技士の資格が尊重されるような実効性のある資格にしたいと考えています。

 ――試験はどのような人が作成されているのですか

 國川 当協会の技術委員会の委員が作成しています。

 ――NEXCOや施工総研の関係者に試験づくりに参加してもらえばより実効性があがるような気がします

 國川 そうですね。ただまずはやってみることが大切だと考えました。結構難しいと評判です(笑)。

――なるほど、こうした施工管理技士を始めた理由はどこら辺にあるのでしょう

 國川 1つはやはり事故が未だに無くならないことが念頭にあります。その実態を受けて、技能だけの資格だけでなく、事故を抜本的に防ぐためには管理できる知識を有した人が現場にいる体制にしなくてはならないのではないか? と考えました。

絶対に事故を起こさないという高い安全意識を植え付ける

ボトムアップを業界全体で図っていく

 ――施工管理技士の試験を受けるのはどのような方々ですか

 國川 施工会社の人たちです。施工会社といっても直接施工する人ではなく、あくまで施工を監督する立場の方が資格を取得しに来ます。業者の方々にも我々協会も危機感があります。事故がない年というのはなく、一方で協会に入会する会員企業は増えています。増えるのは全然悪いことではないのですが、安全が担保されなければせっかく構造物に負担を与えない工法であっても評価は下がるわけです。協会は安全を担保しているわけではありません。あくまで安全を担うのは個々の業者です。協会はそのアシスト、安全のマニュアルを出したり、講習会を行ったりハンドガンの技能研修を行ったりしているわけです。最終的には施工する各社が絶対に事故を起こさないという高い安全意識をもって現場に当たらねばなりません。そうした意識を植え付けるべく、頑張っています。

――技術的な発展、今安全性の話あったじゃないですか。それはそれで安全意識を高めるとか、操作性の向上とかですね、そういったのはわかるのですが、例えば御社のハンドガンアシストアームとかも出ていますよね

 國川 技術的な発展はロボット化が最大のテーマですが、協会として取り組むレベルにはなっていません。



ハンドガンアシストアーム(ケミカル工事提供)


 ――ロボット化やハンドガン施工の際の負荷軽減を進める委員会などは立ち上がっていないのですか

 國川 今のところありません。協会には、安全と技術と広報の各委員会がありますが、安全は講習したりマニュアルを作ったり、技術は現状の課題を反映した資格づくり、WJ特有の濁水処理をどのように行うか? という課題への対応を行っています。そもそも当協会はメーカー発の工法協会ではなく、ゼネコン、とりわけ鹿島建設さんが中心になって作った協会です。といってもゼネコンが直接行う仕事ではないですよね。下請けで施工していた会社が結局は主体になって運営している協会ですから、協会として工法を開発する、という姿勢ではありません。あくまで安全や環境などボトムアップを業界全体で図っていこうという姿勢です。

濁水の処理方法、硬度の処理方法、温度の下げ方.......

再利用も含めて環境対策を行うことがWJの効率化、環境負荷の低減につながる

 ――さて、広報委員会ではどのようなことを行っていますか

 國川 年に1、2回、ニュースレターを発行し、ホームページを更新して工法の普及に努めています。現場見学会などはコロナ禍で止めていましたが、これから再開することを検討しています。ただ、ロボットはともかく、ハンドガンの現場で見学会を行うのは、安全面から少し難しいというのが実際の所です。

――なんとか国や自治体に広げたいですね

 國川 NEXCOさんに広がったのも、前身である日本道路公団(JH)が導入に強い意志を出していただいて、さらには施工総研さんも技術的に支援していただき、NEXCOさんも継続的に必要性を感じていただいて、使っていただいた賜物です。現在もNEXCOさんや施工総研さんとは様々に意見交換しながら、WJの技術や安全性を高めている事実があります。そうこうするうちに、今や20年もたってしまいました。



機械式もハンドガンタイプも様々な場所で使われている(長栄工業提供)


 ――さらなる安全や技術的な底上げ、すそ野の拡大を期待したいところですが
 國川 そうですね。協会の中で、技術的な底上げや国や自治体への普及を考えるための機会づくりというのも必要な時期に来ているのかもしれません。協会の中の個社あるいは有志が集まって技術開発や、NEXCO以外に対する積算に関する取り組み、技術的な向上策を立てる。あるいは、発注者側や元請側から当協会に委託する形で工法開発や安全対策などの向上策に予算をつけて一緒に行うというやり方があると思います。JHの導入時のような、そうした「形」があれば、我々も動きやすいのですが。

 ――新しい取り組みは

 國川 環境対策でちょっと面白い取り組みを行っています。当社(國川会長が社長を務めるケミカル工事)個社としての取り組みですが、ウォータージェットの濁度と浮遊物質量の相関関係について、調査しています。ウォータージェットで使用した濁水を基準値以下(浮遊物質量:150mg/L以下)にして処理するのですが、その基準となる浮遊物質量は現場測定ができません。そのため、現場では濁度を測定して、濁度から浮遊物質量に換算(換算値1:1~1:3)して運用しています。今年の土木学会で調査結果を発表する予定ですが、これは個社だけでなく、業界全体に寄与する知識情報であるため、協会全体として公式な取組みにしたいと考えています。また、使用水を再利用する技術にも今後取り組んでいきたいと考えています。


濁水処理設備(ケミカル工事提供)


 ――面白い取り組みですね

 國川 はつった後の使用水の処理は、みんな気にしています。本当は循環的に使えれば良いのですが、濁水の処理方法、硬度の処理方法、温度の下げ方等、難しい課題が山積していました我々は今まではつることだけを考えてきましたから。

 ――硬度が高い水はやはり、機械が詰まって故障するとかそういう原因になりますし、再利用できれば環境にも良いですものね

 國川 そうですね。近い将来実用化できればと考えています。
 再利用も含めて環境対策を行うことがWJの効率化、環境負荷の低減につながると考えているわけです。

 ――この取り組みは重要ですが、こうした取り組みに注力できる会社は限られていますね

 國川 そうですね。比較的大きな専業者でも性格が異なれば開発の志向も変わりますから、必ずしも一致しませんが、この技術については大小さまざまな専業者のほぼすべてに寄与すると考えています。当社も専業者ではありませんが、WJを用いる業者として施工品質と安全、さらには環境に対する意識は重要だと考えています。そして、SDGsなど世間の趨勢を考えれば、ただ単にpH処理して流すのではなく、できるだけ水を有効利用しつつ環境にも配慮するという考え方は、WJを施工する業者の生命線にも成りうると考えています。

 ――ありがとうございました

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