Interview

WJ削孔研究会 鉄筋を傷つけず安全に削孔可能 10年間で200件以上の実績

2025.08.25

WJ削孔における最高の技術集団でありたい

Tag
WJ
Share
X Facebook LINE
安全・安心で、豊かな社会創りの実現に取り組む コンクリートを”はつる” コンクリートを”はつる”

WJ削孔の試験法やWJ削孔の要求性能の明確化についても取り組む

WJ削孔の試験法やWJ削孔の要求性能の明確化についても取り組む

施工認定を研究会で行いたい

 ――WJ削孔の試験法やWJ削孔の要求性能の明確化についても、研究会で取り組んでいるようですが。WJのはつりや表面処理については、要求性能をNEXCOが明確に定めており、さらにその資格についても人と使用する機械をセットにする形で取得するように枠組みを決めています。削孔もそのような資格や(資格取得のための)試験法、削孔に関する要求性能の明確を定めていきたいとお考えですか

 矢川 NEXCOの構造物施工管理要領の削孔に関する記述や、旧JH423-2という基準はあります。それらに基づき、WJのはつり性能試験と同じような試験体を製作し、その試験方法や要求性能の明確化を削孔でもできないか、試験施工してみました。それで、確かに要求性能を満たすことや、施工できることを示すことはできますが、それを現場ごとにやっていたのでは、恐ろしいコスト高になってしまいますので、表面処理およびはつり性能資格の際に示される領域(I~Ⅳ)に相当するものを、削孔という分野でも決めて戴いて、人(技能オペレーター)と機械の有する性能を(表面処理やはつりと同様に)セットで承認していただけるような方法を模索する必要があります。当研究会には施工総研の谷倉泉技師長に顧問として在籍していただいており、そのお知恵も拝借しながら、要求性能の明確化や、施工資格の標準化を実現していきたいと考えています。

 ――仮に要求性能やそれを確認するための(施工資格取得のための)試験方法を研究会と施工総研で作ったとしたら、施工認定などについて、この研究会で行っていくというお考えですか

 矢川 そうできれば一番良いと思います。現行のNEXCOの要求性能を満たした人と機械のセットに与えられるWJのはつり処理認定証明書と同様なものを、当研究会で発行することができることが理想であると考えています。


人と機械のセット

削孔状況(拡大)

コンクリートを”はつる” 安全・安心で、豊かな社会創りの実現に取り組む 日常も、いかなるときも社会インフラの安全を守り、安定した社会を支えます

ダメ孔係数を積算に予め盛り込む

孔径によってダメ孔が生じる可能性を明確化

 ――次にWJ削孔の積算資料の作成や積算歩掛の明確化についての進展はどうでしょうか。これも技術普及の観点からは非常に重要であると思われますが。特に従来の削孔技術と大きく異なる点として、施工の際のダメ孔(鉄筋に当たってしまい、使えなくなった孔、補修モルタルを充填しなくてはならず、その数が設計の際の想定工費と実際の施工工費において大きな差異を齎してしまう。)の少なさが、WJの大きな利点であり、それを織り込んだ(ダメ孔係数)歩掛も示す方針であると聞いていますが

 矢川 歩掛の際にまず必要なのは、何よりも鉄筋探査の精度を挙げることだと考えています。100%WJで削孔を行うのであれば、探査もアバウトで良いのですが、現実はそうではありません。電磁誘導法による鉄筋探査は、横方向も誤差が少なく鉄筋探査を行うことができます。電磁誘導法を用いた鉄筋探査報告書が上がってきて、それに基づいて削孔する例が多くなっています。

 しかし電磁誘導法はご存じのように第一鉄筋までしか分かりません。その奥にも鉄筋があると削孔中に当たってしまいます。電磁波レーダー法の深さ方向の精度は残念ながら誤差が大きい状況です。場合によっては30mmも誤差があったことも経験値としてあります。電磁波レーダー法の精度を上げていただくと共に、もっと深く、40mm以上まで鉄筋位置を確認できるようにすることで、ダメ孔をつくらないような努力をしていくことが、まずは当研究会としても大事であると考えています。

 ――ダメ孔係数についてもう少し詳しく教えて下さい

 矢川 開けたい孔のサイズと配筋のピッチを考慮して、1日の工事を完成させるために、どれくらいの手間と時間がかかるかを示す係数です。WJの場合、通常のダイヤモンドコア削孔などと比べて、「ちょっとずらし」ができ、鉄筋を誤って傷つけることがないため、ダメ孔をつくって、補修モルタルを使用する量は飛躍的に減ります。さらには、鉄筋を傷つけることもありませんから、鉄筋補修も必要なく、さらには施工効率も向上するため、実際の施工費はダイヤモンドコア等と比べて、大きく縮減できます。それを歩掛として明確に示したのがダメ孔係数です。

 現状では、ダイヤモンドコアで削孔する場合、100%削孔できることを見込んだ積算になっています。しかし実際にそのような現場はなく、鉄筋に当たって抜き直しが必要になった場合、再度施工する費用だけでなく、ダメ孔を補修するモルタルも施工業者の持ち出しになっています。これは、施工業者にとっては圧倒的な不利益であり、施工品質に悪影響を与えるような状況も懸念されます。

 例えば、当社(長栄工業)では、中越地震の時に被災した橋台に落橋防止装置を付ける工事が過去にありました。コアボーリングマシンで削孔して、取り付けようとしたのですが、鉄筋位置の図面と現実の差が大きく、結局、削孔箇所が増えすぎて蜂の巣のような状況になったことがありました。この時も発注者からは、抜き直しの分も、補修モルタルの費用も全然見てもらえず、全て持ち出しになってしまいました。

 我々はWJの利点を生かして、ダメ孔を極小化すると共に、今までの実績から、どのような鉄筋ピッチで、どのような孔径であれば、どれくらいのダメ孔が生じる可能性があるか、ということを示し、それを積算に反映することで、施工効率、品質の向上、真の意味でのコスト縮減を図り、合わせて、不利益を是正することで持続可能な業態にしたいと考えております。

 ダメ孔係数を考慮したWJ削孔の歩掛、積算については、既に当研究会のHP上に掲載しており、どなたでもご覧になれるようにしています。建設コンサルタントさんや元請受注される会社さんにご利用していただければ幸いです。それにより実績も増えていくと考えます。

コンクリートを”はつる” 安全・安心で、豊かな社会創りの実現に取り組む 日常も、いかなるときも社会インフラの安全を守り、安定した社会を支えます

安全対策……作業手順書(削孔)リスクアセスメントを制定

現場への合同パトロールの実施、事故事例・ヒヤリハット情報の共有なども行う

 ――WJ削孔についての安全対策への取り組みについて

 矢川 WJ削孔は、機械式WJを用いるため、ハンドガンを使用するWJと比べると、はるかに安全上のリスクは低くなっています。しかし、施工前後の準備や段取りなどについては、絶対に人が介在します。その時にWJが誤作動すれば機械施工でも人身事故を引き起こしかねません。機械式WJでもリスクゼロにはならないのです。そのため、当研究会でも安全委員会を設置して、作業手順書(削孔)リスクアセスメントを制定しています。それをいかに運用して、事故発生をゼロに近づけるかを模索しております。


リスクアセスメント実施例


 ――具体的にはどのような内容でしょうか。やはり準備時や段取り替えの時の誤作動防止が主でしょうか

 矢川 それらに加えて、WJでは超高圧に耐えられるホースを用いていますが、そのホースの外れ止めがしっかりと設置されているか、また、損傷のあるホースを使っていないか、など基本的に他の機械式WJと同じような対策を施しています。

 ――研究会独自に安全に対しての施策は

 矢川 研究会としてのリスクアセスメントはHP上に公開しております。これをできれば先ほど申し上げた、WJ削孔の施工認定の際に取り入れることで、安全も含めた施工品質を担保していきたいと考えています。そしてその認定がなされていない業者は、WJよる削孔ができない、あるいは所定の施工品質を担保できないのだ、という認識まで高めていければと考えております。

 また、会員各社の現場への合同パトロールの実施、安全教育資料も提供および事故事例・ヒヤリハット情報の共有も行っています。

コンクリートを”はつる” 安全・安心で、豊かな社会創りの実現に取り組む 日常も、いかなるときも社会インフラの安全を守り、安定した社会を支えます

新入会員は研究会側が見極める

WJ削孔における最高の技術集団でありたい

 ――会員は正会員が6社(久野製作所、ケミカル工事、第一カッター興業、長栄工業、テクノジェット、日進機工)、賛助会員が1社(流機エンジニアリング)となっていますが、今後、WJ削孔の普及に合わせて、会員を増やしていくことは考えていますか

 矢川 会員数が多ければ良いものではないと思っています。入会したい人が自由には入れるのではなく、入会できる技術を本当に持っているのか、当研究会側が見極めるという方式を当面は維持していきたいと考えています。

 生意気でしょう(笑)。でも会員の総意として、相当な技術力と高い志を有した企業でなくては、入ってもらっても困ると考えています。なぜなら、我々はWJ削孔における最高の技術集団でありたいからです。

 また、研究会内は様々な規模を有する会社、WJ専業だけでなく、他の補修補強材料・工法や切断工法を有する会社も入っています。それらがアライアンスを組むことで、良い仕事をする会社の人材・機械等のリソースを効率的に提供し、全国の必要な箇所に満遍なく、高いWJ削孔技術を提供できるようにしていきたいと考えています。削孔は当然、その後の工事を伴いますから、RC橋脚の耐震補強やPC橋の補修補強、上部工耐震の橋、塩害などで桁端部が損傷している橋などの補修補強が今後増加していくと考えています。そうした分野へ、どんどん採用を働きかけていきます。


WJ後は必ず補修補強がある


 新しく会員として参加を希望される会社は、こうした分野へのWJ削孔に対する技術力を有し、高い志を持つ会社であれば、受け入れていきたいと考えております。

 ――ありがとうございました

コンクリートを”はつる” 安全・安心で、豊かな社会創りの実現に取り組む 日常も、いかなるときも社会インフラの安全を守り、安定した社会を支えます

pageTop