PC建協 堤忠彦会長インタビュー
カーボンニュートラル プレキャスト化して運搬する場合と現場施工のCO2排出量の比較が必要
人材育成や活用について協会の果たしている役割は非常に大きい
カーボンニュートラル プレキャスト化して運搬する場合と現場施工のCO2排出量の比較が必要
――協会としてPRしていきたい部分は
堤 PRについては他の建設業団体と比べても活発にできていると思います。
当協会の会員会社に所属する社員の人材育成や活用について、資質面、ノウハウの伝承面で協会の果たしている役割は非常に大きいと思います。新たに入職してくる人たちに対しても、きめ細かな育成を当協会では実施していきます。
――カーボンニュートラルへの取り組みは
堤 カーボンニュートラルはサプライチェーン全体で考える問題です。我々が使うセメントや骨材、混和剤などの材料についても各メーカーの製造過程において低炭素化が進められています。我々はそういう材料を使った製造過程においてですね、まず工場においては、プレキャスト製品を作る過程において低炭素化を図る必要があります。当協会としては、カーボンニュートラルを進める上での大きな施策としてプレキャスト化を推進しています。現場工期の短縮や、仮設材料や型枠材の低減などにより効果が出ると考えています。
その一方でプレキャスト製品の運搬時のCO2排出という議論が必ずついて回ります。しかし現場施工においても資機材運搬によりかなりのCO2が排出されると考えています。プレキャスト化して運搬した場合と、現場で施工した場合のCO2排出量をそれぞれ定量化し、評価していくことが必要であると考えています。また、化石燃料から天然ガスあるいは再生可能エネルギーに変えていくということも重要であると考えています。
特殊車両やクレーンなど大型重機の運用を意識した工期設定を働きかけていく
運送業界と意見交換し、発注者へ効果的な提案をしていきたい
――働き方改革に伴う資機材やプレキャスト製品の運搬、稼働時間の減少が現場でも生じていますが、大規模更新については、その時間的制約から影響は深刻になることが予想されます。その対策をどのように考えていますか
堤 基本的には個々の現場において対応すべき問題です。ただし業界全体にとって大きな課題であることも間違いありません。運搬については、法律を守りながら、対応していくためには、それを前提とした工期設定を発注者に働きかけていくことが当協会として必要なことであると考えています。運送問題に対して我々が直接的に対応していくことは非常に難しいですが、意見交換をすることで、解決策や要望を見出していき、発注者へ効果的な提案をしていきたいと考えています。
人に依存しない生産力の形成を考えることは、避けて通れない問題
JIS桁を3D化して、コンサルタント会社に提供
――担い手不足の中で外国人労働者の有効活用をどのように考えておられますか
堤 現在、技能実習制度を中心に、外国人労働者への依存度というのは高いということは間違いありません。ただし、この形が続くかについては非常に不透明です。世界情勢の問題であったり、為替変動(円安)、あるいは業界間の賃金格差など、我々だけではコントロールし難い課題であり、将来も含めて外国人労働者に依存する形で生産性を維持していけるかということを考えますと、なかなか難しいかなというふうに思います。
人に依存しない生産力の形成を考えることは、避けて通れない問題であると考えています。その意味ではi-Construction2.0などでうたわれている、DXの推進を図ることで、生産性を上げる余地はたくさんあります。当協会のDXは、デジタルツールのスタンドアローンにとどまっているところがあると思いますので、今後はBIM/CIMなど3次元データを中心としたプラットフォームをベースとして仕事を繋げていくことで、本格的な建設DXを推進していくことが必要であると考えています。
――建設DXの進め方について
堤 競争領域と協調領域を分けて進めることが必要と考えます。
現在、BIM/CIMを進める中で、協会としてJIS桁を3D化して、コンサルタント会社に提供するという形など、共同してやれるような部分はたくさんあると思いますし、見出していかなくてはいけません。
もちろん、個社の特徴を出す部分は、競争領域ということで尊重していかなくてはなりません。ただ、全てを個社対応していくことは、合理的ではありませんし、大きな革新を起こせるようなものが生まれ辛いと思います。PC建協会員各社が知恵を合わせながら協調領域を充実させていくことで、それがDX推進、生産性向上のスピード感を早めるのではないかと考えます。
――個人的に好きな橋梁は
堤 関門橋です。吊り橋の雄大さがとても好きで学生時代から気に入っています。PC橋では、大分自動車道の高崎橋です。PCコンポ橋のはしりになった橋であり、私自身同橋については現場に携わったこともあり、愛着を持っています。
――ありがとうございました