国土交通省北海道開発局札幌開発建設部 石狩・空知地域の発展を支えるインフラ整備を推進
概要動画Overview Video
札幌開発建設部は、石狩・空知の全域と上川地方の一部地域を含む計37市町村を所管し、道内人口の半数が集中する地域のインフラ整備を担っている。創成川通事業や道央圏連絡道路などの大規模プロジェクトに加え、治水対策、橋梁の長寿命化など、多岐にわたる事業を展開している。その取り組みについて、同部の平山大輔部長に詳しく聞いた。(井手迫瑞樹)
石狩平野の軟弱地盤対策が大きな課題
石狩平野の軟弱地盤対策が大きな課題
道内人口の半数が集中する重要拠点
――札幌開発建設部管内の地勢的特徴と道路の整備方針および構造物の整備の考え方について教えてください
平山 札幌開発建設部は、石狩・空知の全域と上川地方の一部地域を含む計37市町村からなる広大な地域を所管しており、その範囲は南北約200km、東西約130kmに及びます。全国で6番目に広い秋田県とほぼ同じ面積を管轄し、北海道内人口の半数が集中する地域です。
所管エリアの北西部は日本海に面しており、変化に富んだ海岸線に加え、低地帯には砂丘や湿地帯が形成されています。東部は旭岳や夕張岳に代表される山々や丘陵が位置し、中央部には日本三大河川の一つである石狩川が縦走しており、流域には広大かつ肥沃な石狩平野が広がっています。
この石狩平野の特徴として、地盤が非常に緩く、泥炭層などの軟弱地盤層があることが挙げられます。このため、構造物を建設するにあたって、この軟弱地盤対策をどうするかということが、開拓当初から変わらず、この地で社会資本整備を進める上での大きな課題です。
札幌市を中心とした石狩・空知地域は、道内外から人と物が集まってくる拠点となっており、当地域における事業展開が北海道全体に波及します。特に、道内各地を物理的に繋いでいるのは道路ネットワークになりますから、まさに、道路交通ネットワークが北海道の経済を支えていることになります。
北海道は、農水産業などの食料生産が非常に盛んで、北海道の中で消費するだけではなく、その多くは道路を通じて苫小牧港などから本州に送られています。また、新型コロナウィルス感染症の終息以降、インバウンドも含め観光客数が回復し、玄関口である札幌駅や新千歳空港から道路を通じて各地に観光客が広がっていく状況です。
――第9期北海道総合開発計画について教えてください
平山 令和6年3月に閣議決定された「第9期北海道総合開発計画」の柱は、高い食料供給力、魅力的な観光資源、豊富なエネルギーや資源といった北海道のポテンシャルをさらに高め、それを北海道のためだけではなく、日本の発展のために北海道が貢献していこうという考え方です。
それの実施にあたっては「共に北海道の未来を創る=共創」という言い方をしていますが、我々国や行政機関だけが取り組むのではなく、民間の皆さんや住民の皆さんなど、様々なメンバーで力を合わせて、北海道の価値を高める取り組みをさらに進めていくこととしており、北海道開発局が実施する各種事業や施策は、基本的にこの考え方に沿って進めています。
気候変動に対応した治水対策を推進
北村遊水地や幾春別川総合開発などの大規模事業を実施
――北海道では梅雨はない、台風は来ないと言われていましたが、温暖化の影響によりそれも昔の話となりつつあります。水害から地域を守るために取り組んでいることを具体的にお示しください
平山 気候変動の影響による風水害の激甚化・頻発化や巨大地震の切迫、北海道特有の雪害などから国民の命と暮らしを守るため、「第1次国土強靭化実施中期計画」等に基づき、治水対策や交通網、農業水利施設の強靱化などを継続的・安定的に切れ目なく進めていく必要があります。
治水分野では、北海道初の特定都市河川及び特定都市河川流域に指定された千歳川及び千歳川流域において、千歳川流域水害対策計画に基づく取組を推進しています。また、北村遊水地事業、幾春別川総合開発事業、雨竜川ダム再生事業などの大規模事業を計画的に進めているほか、石狩川本川及び支川の堤防整備や河道掘削等を推進し、河川流域全体のあらゆる関係者と協働し、ハード・ソフト一体となった「流域治水プロジェクト」の加速化・深化に取り組んでいます。
――千歳川流域治水について詳しく教えてください
平山 千歳川は低平地を流れる、水面勾配が極めて小さい河川です。大雨により石狩川本川の水位が上がると、その高い水位の影響を千歳川の長い区間にわたり長時間受けるため、千歳川の水位も上がって浸水被害が発生しやすい、いわゆる背水の影響を受けやすい河川です。そのため、流域の河川整備や内水対策等を進めることはもとより、流域が本来有している保水・遊水機能や土地利用計画等を勘案した千歳川流域水害対策計画を策定しましたので、これに沿って流域治水の実効性を高めていきたいと思います。
具体的には、河川管理者として堤防整備や河道掘削のほか、洪水による堤防への浸透に対する耐久性を高めるため堤防断面を大きくする工事などを実施しておりますが、流域においても、内水を排水するための施設整備や、川への流出を抑える対策を行うなどの流域治水の具体策を、まさにこれから流域の関係者の皆さんと相談しながら進めていきます。
――交通分野での取り組みについて教えてください
平山 交通分野では、国道337号道央圏連絡道路の一部である「長沼南幌道路」や国道452号「盤の沢道路」等の整備による道路ネットワークの多重化に取組むとともに、土砂災害等に対応した道路法面防災対策や橋梁等の老朽化対策などを推進します。また、冬期交通の安全確保や除排雪においては、関係機関と連携し、昨冬の経験等を踏まえた改善や強化を図ってまいります。この他、新千歳空港において滑走路の液状化対策等を推進しています。
――農業分野での取り組みについて教えてください
平山 農業分野では、農業水利施設の耐震対策や排水対策等に取り組み、災害に強い農業生産基盤の整備を図ってまいります。
――北村遊水地事業について詳しく教えてください
平山 北村遊水地は、洪水時における石狩川中・下流の水位低下や、石狩川本川の背水の影響を長時間受ける千歳川をはじめとする中小支川の浸水被害軽減にも寄与する重要な事業です。平成24年度から着手し、令和7年度は周囲堤、囲繞堤、排水門、樋門、揚水機場などの工事を実施しています。

北村遊水地事業概要図
遊水地内の農地は、普段は水田などとしてそのまま営農ができますが、石狩川が氾濫するような大雨の際には、治水対策として、河川の流水を流し込んで貯留するため、地役権を設定しています。

北村遊水地事業詳細
遊水地の周囲を囲む堤防を周囲堤といいますが、高いところでは堤防高が9メートルほどになります。この地域は泥炭地ですので、地盤改良をしても3メートルほど沈んでしまう箇所もあるため、沈下量を見込んで盛土しています。

周囲堤の施工にあたっては、関連する工事車両全体の運行管理システムを導入することで渋滞を緩和し施工の効率化や周辺への振動・騒音の軽減を図るとともに、BIM/CIM(3Dデータ)を活用し排水門の鉄筋干渉チェックを行うなど新技術を導入したICT施工により工事を進めています。
一つ技術をご紹介しますと、周囲堤整備箇所の地盤改良として真空圧密工法を採用しています。通常は盛土による自重で圧密沈下をかけますが、軟弱な地盤では圧密に時間がかかります。そこで、地盤にストロー状のものを埋めて地中の水を強制的に吸い上げ負圧をかけることで地盤を圧密させます。この圧密され沈下したところに盛土をするのですが、その際に、盛土の重さと水を吸引する力をうまく調整し、バランスを取りながら施工することで不等沈下を防いでいます。
――ダム事業についても教えてください
平山 幾春別川総合開発事業として、石狩川水系の幾春別川(いくしゅんべつがわ)では新桂沢ダム、その支川の奔別川(ぽんべつがわ)では三笠ぽんべつダムという2つのダムを整備しています。このうち、新桂沢ダムは既存の桂沢ダムを嵩上げしたもので、令和6年3月に完成しダム管理に移行しています。
三笠ぽんべつダムは、高さが53.0メートル、堤頂長が173.5メートル、堤体積が約21万立方メートル、総貯水容量が862万立方メートルの流水型ダムです。令和7年度から本体の打設を始めており、今後3年ぐらいかけて本体工事を行う予定です。
三笠ぽんべつダムは、日本で初めての流水型の台形CSGダム※です。
「台形CSGダム」は「台形ダム」と「CSG工法」の特徴を併せ持つダムで、材料、設計、施工の合理化を目的に考案された技術が用いられています。
「台形ダム」は堤体積が大きく安定性に優れ、堤体内部に生ずる応力が小さくなるため、堤体材料の強度を比較的小さくできるなどの特徴があります。
また、「CSG工法」は、現地で調達可能な材料を有効に活用でき、簡易な設備で連続的に製造が可能で、打設時にはRCD工法のように面状に材料を巻き出し、振動ローラーにより締め固めを行うことから急速施工が可能となるなどの特徴があります。
※CSG(Cemented Sand and Gravel):砂礫を分級、粒度調整を基本的に行わないで、セメントと水を添加し混合したもの。
また、流水型ダムは、堤体の河床部に洪水吐きが配置されているので、通常時は水を貯めずに川がそのまま流れますが、洪水時に水量が増えると流水を一時的にダムに貯留することで洪水調節を行い、水位が低下すると再び元の空の状態に戻るのが特徴です。
普段は水を貯めずに従来の川の状態が維持されるため、ダム上下流において水質や生態系が維持されるほか、土砂も流水とともに下流に流れていきます。
これにより、自然環境の影響を少なくすることができ、貯水池に堆積する土砂量も軽減できるというメリットもあります。
創成川通事業が本格始動
都心アクセス道路として全線地下トンネルを整備
――進捗中の主要事業の目的と概要、現況について教えてください
平山 まず、道央圏連絡道路の一部である長沼南幌道路は、南長沼ランプから南幌ランプまでの延長14.6kmの事業です。令和7年3月末時点で事業進捗率は約73%です。これは石狩湾新港から札幌の外側を大きく回って、新千歳空港の目の前まで行く道路で、長沼南幌道路が開通することで全線繋がりますので、最後のワンピースとして早期完成に向け鋭意頑張っているところです。

長沼南幌道路で架設中の富士戸跨道橋(ふしここどうきょう)
構造物比率は3%で、現在動いている橋梁は3橋ございます。一つ目が(仮称)長沼ランプ橋で、橋長39メートル、幅員19.75メートルの単純合成鋼鈑桁橋です。二つ目が(仮称)夕張長沼線跨道橋で、橋長48.2メートル、幅員13.5メートルの鋼単純合成床版橋です。三つ目が(仮称)零号線跨道橋で、橋長21.8メートル、幅員7.5メートルのPC単純プレテンションホロー桁です。これらを今年度から実施しています。
また、今後建設予定の橋梁として、(仮称)南幌ランプ橋(橋長18.7メートル、幅員19.75メートル、プレテンション方式PC単純中空床版桁橋)があります。
同じく道央圏連絡道路の一部で、令和7年3月15日に全線開通した中樹林道路は、南幌ランプから江別太交差点までの延長7.3kmで、構造物比率は1%です。
そして、令和7年度から本格始動する大きな事業として、国道5号創成川通事業があります。これは札幌市東区北37条東1丁目から中央区大通東1丁目までの延長4.8kmの事業で、令和7年3月末時点で事業進捗率は約8%となっています。これまで各種設計や協議を進めてきており、いよいよ令和7年度から工事着手を予定しています。
――創成川通事業について詳しく教えてください
平山 国道5号創成川通は南北方向にそれぞれ車線があり、その中央に創成川が流れていますが、都市の発展等に伴う交通需要の変化により、都心部へのアクセス交通に対して渋滞等の課題が顕在化してきました。そのため、現在の道路下の地中にもう一つ、それぞれ2車線ずつの道路トンネルを新たに整備します。


都心アクセス線事業イメージとルート概要
これは都心アクセス道路と呼んでいるもので、国内外から新千歳空港を利用して北海道入りされた方や、道内各地から札幌に来られた方が、札樽自動車道から専用のランプ橋で下り、地下トンネルを通って札幌駅等の都心部へ直接アクセスできるようになります。この事業の構造物比率は札樽自動車道からのランプ橋を含み、全線地下トンネル(ボックスカルバート)のため100%となっていす。
道路トンネルの施工方法としては、まず創成川に蓋をかけ暗渠化して、その上に現道の迂回路を整備して交通を切り替えます。その後、現道を開削で掘り進めながらボックスカルバートを構築し、埋戻した後に現道を復旧して創成川を再び元の状態に戻す、という手順になります。少し手間はかかりますが、道路交通と工事箇所周辺の出入り等を確保しながら進めていきます。

都心アクセス線道路平面図および断面図
令和7年度は都心部に向かう南進方向の道路、北7条から9条間の整備に着手します。整備延長は340メートルを2つの工事に分けて発注する予定です。
事業を進める上での主な課題としては、道路の地下に埋設されている多数のインフラ施設の移設が挙げられます。上下水道や様々な通信・電力管等の施設があり、それぞれ所有者と移設協議を行い、準備が整ったところから工事に入っていくので、どうしても時間はかかってしまいます。

構造物断面図
また、工事を進める上では、冒頭に申し上げたとおり、石狩平野に拡がる泥炭層などの軟弱地盤も課題となります。地下水位も高いため、工事に伴い道路周辺の土地や建物に影響が出ないよう、慎重に進める必要があり、なかなか一筋縄ではいかない工事になります。
――札幌駅交通ターミナル整備についても教えてください
平山 札幌に北海道新幹線(新函館北斗~札幌間)が延伸されることに併せて札幌駅周辺で再開発事業が進められており、この再開発事業と連携しバスターミナルを整備します。再開発ビルの1階部分がバスターミナルとなりますので、札幌市が中心になって進めている再開発事業の中で我々も一緒に関わっていくことになります。札幌にとって大きなバスの拠点整備がこれから動きだすことになります。
――その他の主要事業について教えてください
平山 国道12号峰延道路は、岩見沢市岡山町から美唄市進徳町までの延長6.3kmの事業で、現時点で約1.2kmが開通しており、令和7年3月末時点で事業進捗率は約86%です。構造物比率は1%で、令和4年度から光珠内跨線橋(橋長50.93m、幅員26.75m、PCプレテン中空床版桁)整備をJRにて実施しています。

峰延道路概要図

峰延道路標準定規図

期待する整備効果

施工状況
国道452号盤の沢道路は、芦別市黄金町から旭川市国有林旭川事業区までの延長6.8kmの事業で、令和7年3月末時点で事業進捗率は約62%です。構造物比率は45%で、令和2年度から(仮称)鏡トンネル(延長2,102m、幅員7.0m、NATM)工事を進めています。

盤の沢道路概要図

鏡トンネルの施工状況
鏡トンネルが位置する日高山脈は、東西両側から押されて大きな圧がかかっているため、掘削すると切羽がボロボロ落ちてくるような状態です。そのため、AGFや鏡ボルト等のさまざまな補助工法を取り入れて掘削を進めています。現在の進捗は坑口側から8割ぐらい進んでいます。

盤の沢道路の整備効果
――特徴ある橋梁・高架橋、トンネルはありますか
平山 これまでご説明した事業以外では、特に目新しいという構造形式のようなものはなく、一般的な桁橋などとなります。過去には長大橋の施工もありましたが、今は維持管理がメインになってきています。



.jpg)



