Interview

床版維持管理マニュアル、防水ガイドライン、橋面コンクリート舗装ガイドラインの改訂を見据えた情報収集を行う

2024.09.13

土木学会 道路橋床版の設計の合理化と長寿命化技術小委員会

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PC UHPFRC 大規模更新 床版 鋼橋
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>東山 浩士氏

土木学会 道路橋床版の設計の合理化と長寿命化技術小委員会
委員長
(近畿大学 理工学部 社会環境工学科 教授)

東山 浩士

 土木学会 鋼構造委員会 道路橋床版の設計の合理化と長寿命化技術小委員会は、松井繁之大阪大学名誉教授が委員長として立ち上げた「鋼橋床版の調査研究小委員会」から数えて7期目の鋼橋コンクリート床版を取り扱う小委員会である。同小委員会では過去の成果物である「道路橋床版の維持管理マニュアル2020」、「道路橋床版の長寿命化を目的とした橋面コンクリート舗装ガイドライン2020」、「道路橋床版防水システムガイドライン2016」のバージョンアップを図るべく、情報収集、検討、議論を進めている。その内容について東山浩士委員長に聞いた。(井手迫瑞樹)

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3分科会で活動、秋には委員会報告とシンポジウムも開催予定

3分科会で活動、秋には委員会報告とシンポジウムも開催予定

プレキャスト床版の継手工法に関する情報も集める

 ――本委員会の目的および各ワーキンググループの議論の進捗状況を教えていただけたらと思います

 東山 本委員会は土木学会の鋼構造委員会に属し、道路橋床版の設計の合理化と長寿命化技術に関する調査研究を目的とした小委員会として活動しています。松井繁之先生が第1期の小委員会である「鋼橋床版の調査研究小委員会」を立ち上げられてから、第7期目となる小委員会です。

 第6期である道路橋床版の点検診断の高度化と長寿命化に関する小委員会(橘委員長)の成果物としては、道路橋床版の維持管理マニュアル2020と道路橋床版の長寿命化を目的とした橋面コンクリート舗装ガイドライン2020があります。また、もう一つ前の第5期小委員会(大田 孝二委員長)では道路橋床版防水システムガイドライン2016が土木学会鋼構造シリーズとして発刊されています。その後、道路橋示方書の改訂や、学会の示方書等の改訂もなされています。本小委員会としては設計基準類の改訂やここ数年の知見の積み重ねを踏まえて、鋼構造シリーズの将来的な改訂のための情報収集、各機関が発行している示方書等の改訂に参考となる資料になるような形で委員会報告書をまとめていくことを目的としています。

 主な柱としては、委員会名称の通り、設計の合理化と長寿命化技術に関する調査研究が2本柱です。一つ目の設計の合理化に関しては、設計分科会が主となり活動しています。

 二つ目の長寿命化技術に関しては維持管理分科会と、設計分科会の一部、橋面コンクリート舗装分科会の3分科会が分担した体制で進めています。これらの成果は、10月31日、11月1日に予定している第13回道路橋床版シンポジウムで成果報告を行います。現在、報告書の執筆が大詰めを迎えており、委員会の中で、精査しているところです。

 ――設計の合理化についてもう少し詳しく

 東山 設計の合理化に関しては、主に、コンクリート系床版の規定について検討を行っています。

 これまでの研究成果でいろいろな設計方法の提案がなされているわけですが、2方向床版やI型鋼格子床版、最近ですと高強度繊維補強コンクリート床版が出てきています。その辺りの設計方法、あるいは性能評価の検討内容に関する情報収集や論文調査を行い、取りまとめています。

 もう一つは、大規模更新の床版取替えに用いるプレキャストPC床版の継手構造の情報収集を行っています。主に設計方法を調査するほか、どのような考え方で各継手構造が開発されたのか、さらに性能確認した試験方法について情報収集しました。



様々な継手工法①


 長寿命化技術に関しては、設計分科会の方で、床版の材料劣化に関する情報収集を行い、高耐久性のコンクリート系床版についての今後に活用できる情報収集を行っています。維持管理分科会では、維持管理マニュアル2020の改訂に向けた準備を進めています。

 維持管理も含めた床版の補修補強工法に関する選定フローの改訂を検討してもらっています。合わせて床版防水システムのガイドラインも改訂を将来的に見込んでおり、同様に情報収集やアンケート調査なども行い、2016年のガイドライン発刊以降、新技術や不具合事例なども含めてまとめてもらっています。

 もう一つの橋面コンクリート舗装分科会は橋面コンクリート舗装ガイドライン2020の改訂に向けた情報収集を行っています。具体的には、耐荷性、耐久性の評価方法あるいは材料の物質浸透性抵抗試験方法、海外の基準も含めた評価基準をまとめてもらっています。

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改訂そのものは床版防水便覧発刊後

材料・継手工法も多様化 委員構成もそれを意識

 ――ガイドラインの改訂に向けてという話がたくさんありましたが、ガイドラインの改訂そのものは7期委員会ではやらないのですか

 東山 今回はひとまず情報収集を徹底的に行っています。道路橋床版防水ガイドライン2016は、小委員会設置当初、すでに4年以上が経っており、改訂版の発刊も考えましたが、日本道路協会の道路橋床版防水便覧の改定版が遅れており、先延ばしにすることにしました。

 ――床版においては様相が変わっているように感じます。例えばUFC床版が出てきました。床版防水においても従来のアスファルト防水あるいはウレタン防水だけでなく、都市高速では複合床版防水、NEXCOの一部では床版表面だけに超緻密高強度コンクリートを用いることで、通常の床版防水を必要としない手法も出てきています。プレキャストPC床版同士を繋ぐ継手構造も各社各様で様々なものが開発されています。一方で損傷も様々な事例が出てきており、さらに補修方法もUFCを用いるNEXCO3社、ジェットコンクリートや低弾性系の補修材料を用いる都市高速など、対応が割れてきています。そのような状況をどうお考えでしょうか

 東山 UFCは象徴的ですが、そうした変化の内容を網羅して収集することを念頭に行っています。

 委員構成でも意識しており、今回の委員会はゼネコンに所属している方が多くなっています。大林組や戸田建設などのUHPCを取り扱っている会社、または阪神高速が行っているUFC床版による取替事例を意識して阪神高速や鹿島建設から情報収集しています。NEXCO総研でまとめているプレキャストPC床版の継手構造も従来の橋梁ファブだけでなく、ゼネコンも多様な構造を開発しています。また、一時小委員会に参加する橋梁ファブ所属の委員が少なくなった時期がありましたが、今回は設計の合理化ということで、橋梁ファブに所属する委員の方々も多いメンバー構成となっています。


現場打ちUFC

プレキャストUFC床版(阪神高速道路提供)

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