床版維持管理マニュアル、防水ガイドライン、橋面コンクリート舗装ガイドラインの改訂を見据えた情報収集を行う
継手工法は評価や試験のディテールを精査
継手工法は評価や試験のディテールを精査
15の実績ある工法が集まる
――委員会の期限は今年の9月末ということですが、当然第8期もあると思います。補修一つとってもNEXCOはSFRCによる増厚を止め、UFCによる上面補修に舵を切りつつあります。首都高も低弾性ポリマーの方向性ですが、ポリマーの部分をラテックスコンクリートに変えつつあります。補強に関する思想が全く違ってきているこの状況をまとめるのは大変そうですが
東山 委員会としては長所短所を示すことは行いません。あくまで判断材料としての情報を収集することにあります。
――床版取替のプレキャストPC床版に用いる継手工法は、昨年の土木学会全国大会の委員会の中でもかなり情報収集している感じが伺えましたが、これをどのように整理していくのか教えてください
東山 継手工法については、工法そのものの情報収集はもちろん、評価項目やそれがどのような試験方法を用いて評価されているのか、その収集がメインと考えています。アンケート調査では、フォーマットとなる質問項目に記入してもらい、それをまとめて整理しています。
様々な継手工法②
2方向PC床版(縦締め)
――傾向というのはありますか
東山 各社、輪荷重走行試験は必須のようですが、それ以外は各社各様で横を見渡しながら評価項目や試験方法を模索している形です。委員会としてどのような方法が良いとか悪いとかは言うつもりはありません。あくまで情報収集とその例示に徹しています。現在は15の実績ある工法が集まりました。
試験方法という裏には、継手構造としてのメカニズム、荷重伝達機構について、どういうふうなことに注意して継手構造を検討しておくべきかという点を少し整理する必要があると思います。
床版の設計に関して、輪荷重走行試験結果を踏まえ、疲労耐久性を満足したことを評価するのがほとんどです。一方で設計の合理化をもう少し考える点はないかというところで設計分科会を今回作ったという経緯もあります。
施工上の不具合事例や品質管理についても取りまとめ
道路橋床版防水システムガイドライン2016の改訂に向け
――道路橋床版防水システムガイドライン2016の改訂に向けてはどのようなことを行っていますか
東山 前回のガイドラインの中で不足していたところを充実させようとしています。例えば施工上の不具合事例や品質管理をどのようにしていくのか、これもアンケート調査を行って、取りまとめています。
高性能床版防水施工例
――2016やその延長線上の2020年までは、高性能床版防水、通常防水、複合床版防水までは触れられていました。しかし、改質グースやUFCレイヤーなどについては触れられていなかったと思います。これらについても触れていくのでしょうか
東山 NEXCOや都市高速の方にも委員に入ってもらっており、出しうる範囲で施工の不具合事例などは例示しています。一番はやはり便覧との関係性なので、施工の不具合を例示しながら留意点を示す、あるいは施工時の品質管理の方向性を示すようなガイドラインを作っていくことになると思います。施工時の品質管理は、下地処理から舗装との接着まで、の各フローでの品質管理上の留意点を示していきます。
改質グース施工例(福岡北九州高速道路公社提供)
複合床版防水施工例
樹脂防水一体型アスファルト舗装の施工状況(福岡北九州高速道路公社提供)
いずれにしてもタイミングとしては、便覧が出た後、その内容を確認したうえでガイドラインもそれに沿う形でまとめ、発刊したいと考えています。
橋面コンクリート舗装 要求性能や試験方法をまとめる
UHPCを用いた舗装など新たな取り組みも収集
――道路橋床版の長寿命化を目的とした橋面コンクリート舗装ガイドライン2020の改訂については
東山 橋面コンクリート舗装の我々の目的としては、床版の耐荷性、耐久性を上げるために橋面コンクリート舗装をするわけです。現在は既設の床版が対象ですが、米国では新設でも施工しています。米国同様日本でも新設床版上をターゲットに入れていきたいという希望があります。しかし現在は前回からの流れで既設床版について耐荷性、耐久性を上げるということを主たる目的にしています。
橋面上におけるコンクリート舗装の施工 左は新屋橋(富山市)/右は天王山古戦橋(大山崎町)
(土木学会 道路橋床版の設計の合理化と長寿命化技術小委員会提供)
橋面コンクリート舗装を施し、耐久性を上げると言ったところで、その耐荷性、耐久性の評価項目や評価手法の考え方も取りまとめておかないといけません。橋面コンクリート舗装に求める機能も整理しておく必要があります。例えば物質浸透抵抗性、すなわち既設床版に劣化因子が届かないようするといったことも当然考えておかないといけません。橋面コンクリート舗装に求める要求性能といったものを中心に考え、材料としての試験方法もまとめていますし、基準についても海外の情報を含めてまとめてもらっています。国内でも施工事例が出てきていますので、施工事例の経過観察もしていただいており、そうした情報も盛り込んでいます。その中にはUHPCによる橋面コンクリート舗装も収集しています。
すべり抵抗性や、(滑り抵抗性を維持できる)耐久性、ひび割れ抵抗性なども引き続き、収集しています。これは純粋な舗装としての性能であり、これをクリアしなければそもそも舗装として使えません。
――海外は米国以外では
東山 韓国です。欧州も入れようとしましたがまだできていません。
――日本にコンクリート系舗装を普及させるに当たって注意すべき点はどこにありますか
東山 国内でコンクリート舗装自体がアスファルト舗装に比べれば遥かに少ない状況です。
この橋面コンクリート舗装に限っては、その舗装をどう捉えるのか。というところもあって、これ上面増厚工法と同じじゃないかという捉え方もされる場合があります。これでは単なる補強工法の一つとして扱われてしまう可能性があります。
そのため、橋面コンクリート舗装という考え方を定義していかないといけないと思っています。考え方はこのガイドラインの中にも書いてもらっています。
――そもそも橋面コンクリート舗装はなぜ必要なのでしょうか
東山 第一は、既設床版の補強を目的としています。だから通常の床版防水からアスファルト舗装の流れだと補強にはならないですよね。
対象となる橋梁の(傷んだ)既設床版の補強工法の一つの選択肢として、橋面コンクリート舗装もある、というスタンスです。
50件を超える論文投稿の申し込み
床版シンポジウム 300人が聴講可能
――最後に床版シンポジウムについて状況を教えてください
東山 50件を超える論文投稿の申し込みがあり、まずはひと安心しているところです。
前回とほぼ同数ぐらいの論文数になる見込みで、橋梁床版に関する関心の高さを感じます。その中で委員会報告をさせていただくということで、我々の3年間の成果をそこで皆さんにお伝えします。
あとは聴講者が何人参加してくれるかというところです。対面 100 人、オンライン 200 人の参加が可能です。開催は10月31日と11月1日の2日間、東京・四谷の土木学会で行います。
――ありがとうございました