Interview

2027年に設立100周年を迎える土木学会関西支部

2024.04.22

加賀山泰一支部長インタビュー

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土木学会
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自治体の維持管理支援について支援組織間の連携強化を図りたい

ミニ講習会は課題への理解を深化させるためのきっかけ

各団体が連携して自治体の維持管理を支援することが大事

 ――基礎自治体は技術者がそもそもいない小規模自治体もあります。規模的に大きすぎる橋梁などについては国土交通省が点検や修繕を権限代行で行うというシステムができましたが、なかなか決定に至るまでは時間がかかります。さらに維持管理がしきれない構造物のトリアージを始めている基礎自治体もあります。ミニ講習会は非常に良い試みだとは思いますが、さらに恒常的に対応できるシステムがなければ、基礎自治体の長寿命化修繕計画は、技術的な力量不足から画餅に帰す可能性も否定できません。また、橋梁でいうと本当に危ないのは小規模自治体が多く有しているRC橋ではなく、PC橋や鋼橋の損傷であり、RC橋についてはクリティカルな損傷はむしろ少なく、損傷状況を性能的に精査すれば、むしろ補修費用の低減あるいは適格化(鋼橋の腐食損傷などへの傾斜配分や斜面・のり面の危険個所などへの配分)も可能になると考えます。支部ではこうしたより専門的な技術的知見を恒常的に発現できる取り組みを考えておられませんか
 加賀山 ミニ講習会はそうした課題への理解を深化させるためのきっかけです。「技術的に判断できないことに関して、気軽に相談できる人がいれば助かるな」という所感をまずは、基礎自治体の皆様に実感していただくことが大事だと考えています。そうなればしめたもので、次は例えばシニアの技術者を恒常的に自治体の相談員として契約する、関西支部としてはそうした技術者を斡旋する仕組みを作っていきたいと考えています。それが基礎自治体の技術者不足の支援になればと考えています。
 契約に関しては個別自治体よりもむしろ例えば「但馬地区」などブロック単位で契約する選択が適当かも知れません。

 ――ごみ収集などで行われている基礎自治体の広域連合をインフラメンテナンスの維持管理でも活用できればいいですね
 加賀山 そう思います。

 ――自治体もシニアの力のある技術者に点検や解析業務を任すことができれば、その情報をもとにした発注業務のみを行うことにシフトできます。シニアの手に余れば支部に助けを求め、支部がその求めに応じて助力するという仕組みを作れば非常に維持管理コストを低減できるのではないでしょうか
 加賀山 そうですね。例えば但馬地区においては、兵庫県の外郭団体であるまちづくりセンター、近畿建設協会の豊岡支部がそれぞれ支援を行っています。そして我々も支援できる立場にありますが、組織が個別に連携せず支援をするというのは少し非効率です。そこをうまく整理して、限られた技術者を効率よく配置し、自治体ニーズに合わせた支援を行うことができれば良いなと思います。実際に昨年行った意見交換会には近畿建設協会も呼び、議論を聞いていただいております。この取組みが2027年の100周年を記念する事業の目玉の一つにできればと考えています。

2つのPC技術でインフラの未来を切りひらく ”誰でも、どこでも”使えるESCONを目指しています 短支間の橋おまかせください

駒栄のトンネル工事現場で見学会

「整備局長と話してみよう!」

 ――若年層に対してどのように土木に対する魅力を感じさせるか
 加賀山 毎年、土木の日に土木に関するポスターを募集しています。また、小中学生向けに土木現場の見学会も開催しています。今年は6月に大阪湾岸道路西伸部の駒栄のトンネル工事現場で見学会を行う予定です。
また、夏休みに土木実験教室も開催しています。去年は、小学生にストローでトラス橋を作っていただき、保護者には別の部屋で土木に対する理解度を深める講義を同時開催してどちらも大変好評でした。


ストローでトラス橋を作る


  土木系の会社に入った若手技術者向けの取り組みも行っています。例えば「整備局長と話してみよう」という企画です。

 ――いきなり若手をぶっこみますね! 面白いですね
 加賀山 the 関西支部という取り組みでしょう。


若手技術者を近畿地方整備局長と対面させ、質問をぶつける企画『整備局長と話してみよう』
ざっくばらんで上下の垣根が比較的低い関西ならではの企画といえよう


 ――さすがに若手は尻込みするんじゃないですか
 加賀山 冒頭はそんな感じでしたが、ほぐれてくると、渡辺局長(当時)のざっくばらんな人柄もあり、かなり話が弾みました。同企画は局長が見坂さんに代わった現在でも継続して行われています。官ばかりじゃなく、民もやろうや! ということで若手技術者が大企業の社長と話すという案も浮上しています。
 また、「シビルアカデミー」といって、関西支部の産官学を問わない若手技術者(60人)が他業界を知り、交流しようという取り組みも行っています。例えば今年は関空に沈下対策などへの取り組みなどを聞く催しを行います。自分の会社の狭い範囲だけでなく、広い視野で土木の仕事の面白さを知ってもらおうという企画です。

 ――面白いですね。やはり有料ですか
 加賀山 会員は無料です。40歳以下に参加いただけます。

 


グループ討議・発表状況




現場見学会の実施状況

技術士資格取得やコンクリート講習会などの支援も行う

――会員への技術支援は
 加賀山 技術士資格取得のための講習会を開催しています。また、関西支部が独自に作っている本があるんですが、「コンクリート構造の設計、施工、維持管理に関する基本」を用いた講習会を開催しています。土木学会のコンクリート標準示方書の改定に合わせた形で、その都度解説本として改訂を重ねているもので、今次は今年12月の作業完了を目指し、第七次改訂を作業中です。同本は、関西支部の60周年記念として始められたもので、支部のコンクリート関係の技術者が改訂作業を脈々と受け継いでいます。
技術士の資格取得ための講習会やコンクリート講習会はオンラインも含め、全国から400人以上が参加する大規模なものになっています。

 ――付言して
加賀山 今回、関西支部は一番大きな特徴として、産官学が組織の壁の隔たりなく、非常に先進的な取り組みに向けて、活発な議論をしていただいています。来年、関西で大阪関西万博が開かれることもあり、関西の元気よさをこの関西支部の元気よさと合わせて発信できればと思っています。それがひいては土木業界への魅力につながり、若手の土木への関心につながればよいと思っています。
また、今回、井手迫さんが新しいサイトを立ち上げるということで、主に道路や鉄道を中心に構造物の紹介をしていただけるということです。阪神地方にはたくさんの構造物がありますが、まだまだ我々の知らないことがたくさんありますので、ぜひ我々にとって有益な情報が見られるものと期待していますし、我々もサイトを通じて、関西の土木の魅力をPRしていきたいと考えています。ぜひ魅力あるサイトになることを期待しています。頑張ってください。

 ――ありがとうございました

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