Interview

能登復興特集② 中能登の地震による被害と復旧状況

2025.03.31

被害の大きかったのと里山道路、能越道、国道249号の一部は国が権限代行

Tag
自治体 能登復興
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>宮村 雅之氏

石川県中能登土木総合事務所
所長

宮村 雅之

概要動画Overview Video

 石川県中能登土木総合事務所は、能登半島中央部の南北約50kmに及ぶ地域を管轄している。南部は海岸沿いの砂丘地帯と邑知平野を中心とした平野部が広がり、この平野を囲むように宝達山系、石動山系、眉丈山系が連なっており、北部は比較的緩やかな山地が広がっている。さらに外浦海岸や七尾湾岸地域では港湾・漁港が数多く分布している。管内は七尾市をはじめとした2市3町で構成されており、総面積は847.86平方kmで県土面積の約20%、人口は約10万9千人で県総人口の約10%を占めている。昨年正月の地震や9月の豪雨水害では、奥能登ほどの被害は生じなかったものの、やはり舗装の損傷、橋梁の段差発生、のり面、斜面の崩壊など少なくない被害を蒙っている。現在の復旧・復興の進捗状況について、宮村雅之所長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

人と、街と、北都。 陥没対策に最適 充填工法の切り札 高耐久・塩害に強い塗装により長期防食が可能な補修塗装

橋梁 段差が多くの箇所で生じた

七尾市など能登半島中部の2市3町を所管

地震被害 北に行くほど被害が大きくなる傾向

 ――事務所の職掌範囲(県管理道路や、基礎自治体から権限代行を受けて復旧復興を進めている道路や河川など各所土木インフラ)を概略的かつ延長や規模などについては定量的にお答えください

 宮村所長 中能登土木総合事務所は、七尾市など能登地方の中部の2市3町内の道路、砂防、公園、河川、海岸、地すべり防止指定地、急傾斜地崩壊危険区域、港湾漁港を担当しています。
但し、特に被害の大きかった、のと里山海道の徳田大津IC~穴水IC間及び能越自動車道、国道249号の一部については、国の権限代行による復旧を行っていただいております(金沢河川国道事務所、能登復興事務所による)。

 ――被災状況は

 宮村 昨年正月に地震、9月に豪雨と能登半島は2度にわたって甚大な被害を蒙りました。しかし、その被害の多くは穴水以北の奥能登に集中しております。もちろん管内も無傷であったわけではありません。北に行くほど被害は大きくなっており、のと里山海道では、平成19年度の能登半島地震の際には被害を免れた盛土部が崩壊し、仮復旧までに長い時間を費やしました。一般道でも北部を中心に盛土や斜面の崩壊が生じました。さらには舗装もいたるところで亀裂や凹凸が生じていました。路線的には管理する61路線中50路線でそうした損傷が生じています。


中能登土木管内の地震からの復旧状況(中能登土木総合事務所提供、以下注釈なきは同)


 河川は掘込み護岸のブロック積が傾いたり、矢板護岸の傾きや沈下が生じていました。

 ――盛土崩壊や斜面・のり面の崩壊は今回の特徴としてありますがどの程度の箇所で起きたのでしょうか

 宮村 法面の崩壊は主なもので国道249号の七尾市中島町で1箇所、外浦の志賀町と輪島市門前町の境で5箇所、その他を合わせると32個所で生じました。盛土崩壊は主に北部で生じており、国道249号、一般県道において19個所で生じました。のと里山海道の徳田大津IC~穴水でも19箇所で盛土崩壊が生じました。


斜面被災状況

超速硬化ポリウレタン・ポリウレア樹脂吹付工法 SQS工法 橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版

橋梁 段差が多くの箇所で生じた

盛土部 地盤などを考慮し、ジオテキスタイルを用いた補強盛土などにより強靭な構造で復旧

 ――構造物はどのような損傷状況であったのでしょうか

 宮村 中能登管内でトンネルの大きな損傷は生じていません。橋梁についても、若干の補修が必要になった個所は生じましたが致命的な損傷は生じていませんでした。橋台との間で段差が生じた橋梁は結構ありました。それらの橋梁については、段差修正工などを粛々と行っております。


橋梁の段差発生状況と復旧状況 七尾市内 主要地方道七尾羽咋線 小丸山大橋

う回路の設置状況

斜面の復旧状況


 ――その後の進捗状況を具体的に教えて下さい

 宮村 全体的に中能登管内は、舗装の亀裂はたくさん生じていましたが、早期に発注準備ができたため、比較的復旧工事は順調に進めています。とりわけ、田鶴浜~穴水町境間の国道249号の舗装復旧は、奥能登復興の要でもあったことから(国交省に権限代行した)のと里山海道・能越自動車道と同じく早期復旧に注力し、ほとんど終えています。


舗装の仮復旧と本復旧状況


 橋梁については、踏掛版の無い箇所がもともと多かったこともあり、段差が多くの箇所で生じました。応急復旧としては擦り付けで対応しましたが、今後は本復旧として、踏掛版を新たに設置する工事も進めていきます。但し、市街地は下水道管が埋設されている箇所もあり、そうした箇所については下水道を所管する市町と相談しながら連携して復旧を進めていきたいと考えております。

 河川については、人家に近く災害が生じれば大きな損害を齎すであろう箇所を優先的に、復旧を進めています。河川の復旧については非出水期に限定されるため、同時期を中心に工事を進めていきます。


崎山川(七尾市内)の損傷状況と仮復旧状況


 基本的には河川については橋梁と異なり原形復旧で進めていきます。

 盛土復旧については、道路が崩壊した多くの箇所、特に高盛土区間で交通機能が途絶したことから、地盤などを考慮し、ジオテキスタイルを用いた補強盛土などにより強靭な構造で復旧していきます。

 法面・斜面については、崩土除去後の大型土嚢設置やモルタル吹付による応急復旧など進めるとともに、今後は本復旧として、法枠工法を併用していきます。

 ――段差修正工については、仙対橋でも補修がほどなくなされますね(取材は2月17日に行った

 宮村 同橋は七尾駅から能登食祭市場までをつなぐメイン通りです。七尾市所管の橋梁でありますが、同橋を含む市道と当事務所が所管する県道が交差する箇所にあることから境目に位置する箇所の踏掛け版を当事務所で設置するものです。


踏掛版の設置状況(ジャパンコンステック・ヘキサロック工法)


 今年度は、昨年、地震の影響で開催されなかった青柏祭が復活します。そのためにも早期に橋梁を本復旧しようということで補修を進めました。

超速硬化ポリウレタン・ポリウレア樹脂吹付工法 SQS工法 橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版

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