国土交通省 四国地方整備局 福本仁志道路部長インタビュー
概要動画Overview Video
国土交通省四国地方整備局は、直轄国道約1,300km、2,785橋、176か所のトンネルを管理している。四国地方は、豊かな自然に恵まれ、世界的企業や地域産品が集積し、観光も盛んな地域である一方、南海トラフ地震の切迫性に加え、瀬戸内側の渇水リスクと太平洋側の豪雨リスクという対照的な気候条件を併せ持つ地域でもある。こうした中で、構造物の老朽化対策や防災・減災、さらには道路ネットワークの機能強化など、道路行政には多様な課題への対応が求められている。四国地方整備局が今後、どのような方針でこれらの課題に取り組もうとしているのか。福本仁志道路部長に話を伺った。(インタビューは令和7年8月に実施)
四国における道路事業の現状と展望
災害リスクに向き合う道路づくり
四国地域の地質リスクを踏まえた事前検討と対策
−−大規模な風水害や地震が全国各地で発生しています。四国管内でも西日本豪雨では大きな被害がありました。洪水や斜面崩壊に対して、橋や道路が損傷しないために、どのような構造的・施工的工夫をされていますか。
福本仁志道路部長 四国は全国の中でも特に急峻な地形が多く、土石流や崖崩れの危険性がある地域が約8割を占めています。さらに南海トラフ地震が発生した際には、太平洋側の国道が津波で浸水し、交通が寸断される恐れもあります。こうした厳しい条件のなかで、道路の機能強化を図るためには“どこに道路を通すか”という段階から、丁寧な検討が欠かせません。
四国地方整備局提供(以降、全ての写真・図は四国地方整備局提供)
その一例が「四国8の字ネットワーク」の整備です。これは南海トラフ地震発生時にも緊急輸送が確保できるよう、高い位置を通るルートや津波の影響を受けにくい構造を選びながら整備しているものです。道路の高さを津波浸水想定を上回るように設定する、橋梁やトンネルを適切に組み合わせるなど、災害時にも耐えうるネットワークづくりを進めています。


また、豪雨災害に対しても、近年の知見を踏まえた対策が必要です。能登半島地震で顕在化したように、地すべりや複雑な沢筋の集水地形が道路機能を奪うケースがあります。四国でも同様のリスクがあるため、航空レーザ測量を用いて地盤の変化を詳細に解析し、地質リスクを事前に評価しています。設計段階では、できる限り地すべり地形を深く切り込まないようにルートを工夫したり、排土工・抑え盛土で斜面を安定化させたり、必要に応じて吹付法枠や鉄筋挿入工などの抑止工を行うことで、安全性を確保しています。集水地形では排水施設を整備し、水が溜まりにくい環境をつくることで、斜面崩壊のリスクを低減しています。
国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年対策」では、道路法面の補強や河川沿いの道路構造物の流出防止なども重点的に取り組んでおり、こうした施策が災害に強い道路づくりにつながっています。
四国では地形・気候・地震といった複数のリスクが重なる地域だからこそ、調査・設計段階から施工、維持管理まで一連のプロセスで災害に強い構造を追求し、道路の機能強化に繋がる総合的な対策を進めています。
2025年度の四国における道路事業の進捗
四国8の字ネットワークを中心とした整備状況と今後の検討区間について
−− 2025年度の重点道路事業の計画と進捗状況、さらに新規事業化区間について教えてください。
福本 先ほども触れましたが、四国地方整備局では「四国8の字ネットワーク」の整備を最重要施策として位置づけており、道路改築予算の7割以上をこの整備に充てています。このネットワークは、四国縦貫自動車道、四国横断自動車道、高知東部自動車道、阿南安芸自動車道から構成され、総延長は約800kmに及ぶ高規格道路網です。

これまでに約608km、全体の76%が開通しており、現在も164km(約21%、一部は高知県施行区間を含む)で事業を進めています。2025年度に開通を予定している区間としては、徳島県の四国横断自動車道・阿南IC〜小松島南IC間(3.2km)があり、これにより周辺の渋滞緩和、交通事故の減少、救急搬送時間の短縮など、地域の安全・安心につながる効果が期待されています。




なお、2025年度の新規事業化区間はありませんが、四国8の字ネットワークの未事業化区間である阿南安芸自動車道の牟岐〜海部については、隣接区間の事業進捗を踏まえながら、検討を進めています。また、美波〜牟岐区間では、概略ルートや構造の検討を進めています。

四国8の字ネットワーク以外では、西瀬戸自動車道とのミッシングリンク解消を図る国道196号・今治道路の整備が進んでおり、2026年度には今治朝倉IC(仮称)〜今治湯ノ浦IC間の5.7kmが開通予定です。これにより物流効率の向上や地域産業の活性化、今治新都市へのアクセス改善など、地域経済の発展が期待されています。


都市部の渋滞対策としては、徳島県で徳島南環状道路を、愛媛県では松山外環状道路(空港線・インター東線)の整備を進めています。さらに未事業化区間の調査として、香川県の高松環状道路(高松市福岡町〜高松市檀紙町)や、高知県の高知松山自動車道(いの〜越知)では都市計画・環境アセスメントを進めるための調査を実施中です。また、愛媛県の松山外環状道路(松山市北吉田町〜松山市平田町)でも、概略ルート・構造の検討を進めています。





総じて、四国全体の道路ネットワークの機能強化と地域の安全性向上、物流・観光の利便性向上に向けて、着実に整備を進めている状況です。
四国における橋梁・トンネル整備の2025年度計画
設計業務の進捗と長大トンネルの地質リスク評価
−−2025年度の主要橋梁・トンネル事業について、計画や進捗状況を教えてください。
福本 2025年度は、四国地方整備局として橋梁・トンネルの整備を引き続き進めていきます。
まず橋梁についてですが、今年度は今後発注予定の案件を含め、予備・詳細設計で計22業務、約30橋の設計を行う計画です。そのうち、詳細設計段階に入っている橋梁が19橋あり、構造種別としては鋼橋が14橋、PC橋が5橋となっています。地形が急峻で、河川横断や谷地での架橋が多い四国では、橋梁形式の選定や基礎工の検討が非常に重要であり、地質条件・河川流況・維持管理の方針を踏まえて設計を進めています。
トンネルについては、予備・詳細設計を合わせて3業務で、3か所のトンネル設計を進める予定です。中でも、高知県の国道493号(野根安倉道路)で権限代行により整備している「四郎ヶ野トンネル」は、延長4,488mに及ぶ長大トンネルです。

同トンネルでは、弾性波探査や電磁波探査などの地質調査を実施しており、弾性波速度の低下域と電磁波探査での低比抵抗域が概ね一致することが確認されています。これは、亀裂性の岩盤や地下水の存在を示唆するもので、突発湧水のリスクを十分に考慮する必要があります。そのため、施工時の安全確保や湧水対策を踏まえた設計および施工計画の検討を進めています。


2025年度は、このように橋梁・トンネルともに設計段階の業務が多く、四国の地形的特徴を踏まえた高い技術力が求められる一年になります。今後も、安全性と持続性を兼ね備えたインフラ整備に向けて取り組んでまいります。
施工中の橋梁・トンネル事業の現状
松山外環状道路空港線と新内海トンネルの進捗
−−施工中の主要橋梁の概要について教えてください。
福本 現在、四国地方整備局が施工を進めている橋梁のうち、本官工事で上部工に着手しているものは11橋あります。構造形式の内訳は、鋼橋が4橋、PC橋が7橋で、各現場の地形条件に応じた形式を選定しながら工事を進めています。

橋梁事業の代表例として、国道56号・松山外環状道路空港線の橋梁群が挙げられます。この路線は、松山都市圏の慢性的な交通混雑の緩和と交通安全性の向上、さらに松山IC・松山空港・松山港といった広域交通拠点へのアクセス性向上を目的とした事業です。

現在、外環空港線では連続して複数の上部工工事を進めており、南吉田第1高架橋(橋長142m、PC5径間連続中空床版ラーメン橋)、南吉田第2高架橋(橋長139m、同形式)、南吉田第4高架橋(橋長200m、PC7径間連続中空床版橋)などが施工中です。いずれも固定式支保工での架設工法を採用し、住宅地が近接することから騒音・振動への配慮に加え、航空法による高さ制限にも十分留意しながら、安全確保を最優先に施工を進めています。引き続き、1日でも早い全線開通に向けて事業を推進していきます。




−−施工中のトンネルの概要について教えてください。
福本 トンネルについては現在9か所で施工が進行しています。主要なものとして、国道56号・津島道路で建設を進めている「新内海トンネル(仮称)」が挙げられます。延長2,541mと津島道路で最も長いトンネルであり、NATM工法(発破掘削)にて施工を行っています。津島道路は宇和島道路と接続し、四国横断自動車道と一体となって高規格道路ネットワークを形成するもので、災害時の緊急輸送路としての機能強化や、医療施設へのアクセス向上、地域産業の活性化に資する重要な路線です。

新内海トンネルでは、令和4年に掘削岩石および仮置き岩石から自然由来の重金属等であるヒ素・フッ素が基準値を超えて検出されたため、工事を一時中止しました。しかし、有識者の意見を踏まえて重金属等を含む岩石の封じ込め対策を実施し、令和5年2月に工事を再開しています。また、当該地域は瀬戸内海環境保全特別措置法の適用を受けるため、濁水処理設備の増設による大量湧水への対応や今後は低土被り区間の施工に入るため、より慎重な施工が不可欠と考えています。


各橋梁・トンネルとも周辺環境や地質条件に配慮しつつ、安全と品質を確保しながら事業を進めています。



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