Interview

国土交通省 四国地方整備局 福本仁志道路部長インタビュー

2026.01.01

四国8の字ネットワークを軸とした地域を支える道路整備

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国土交通省
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誰よりも好奇心 仕事に、働き方に、好奇心を刺激する仕掛けを インフラを技術で守る 従来比4倍以上の高い耐久性・補修効果で床版の維持管理コストを低減可能

橋梁・トンネルの点検結果と耐震・長寿命化の対応状況

四国地方整備局における新技術導入の取り組み

建設用3Dプリンタの適用事例と検証状況

−−新設工事における新技術・新材料の導入事例について教えてください。

 福本 建設業界では担い手不足や従事者の高齢化が進み、現場の生産性向上や働き方改革を進めることが喫緊の課題となっています。四国地方整備局でも、こうした状況を踏まえて新技術の導入を積極的に進めており、その代表例が建設用3Dプリンタを活用した取り組みです。



 国道55号・南国安芸道路および安芸道路では、生産性向上に向けた試行的取り組みとして、令和4年に国内で初めてとなる“建設用3Dプリンタによる土木構造物”の施工を行いました。対象は集水桝で、3次元ソフトウェアで作成した設計データをもとに原材料をプリンタへ投入し、造形後に養生し設置するという流れです。通常施工と比較して外観や機能に大きな差はなく、工期と人員の削減が可能でしたが、コスト面では課題が残る結果となりました。

 さらに令和5年には、維持管理性の向上を期待できる円形集水桝や、橋梁下部工に用いる埋設型枠を3Dプリンタで製作するなど、適用範囲を拡大しています。令和6年には、現場打ちで行われていた笠石コンクリート型枠への適用も行い、新材質・新工法の実用化に向けて検証を重ねてきました。

 現段階ではコストや品質管理など解決すべき点もありますが、河川内工事のように施工期間に制約がある現場、曲線部を含む構造物、あるいは函渠上部の地覆など高所作業を伴う箇所では、安全性の確保や足場の省略といったメリットが期待できます。こうした利点を生かしながら、今後も生産性向上につながる新技術の活用を進めていきたいと考えています。

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橋梁計画における検討プロセスの活用と発注者の取り組み

「手引」の考え方を踏まえた予備設計と後工程への引き継ぎ

 −−土木学会では2023年5月に「橋の計画と形式選定の手引」 を発刊しました。新設橋の予備設計や道路計画段階時点で様々 な形式選定や、リスク管理、新技術の導入などを検討し、しかも プロセスの過程を残しておくことで、後工程に資する橋梁計画 や予備設計となることを目指したものです。予備設計段階では、 地質や住民との合意形成など不確定要素があり、かつ同時点で の新技術についても有望ながら信頼性の点で断念することもあ りました。しかし、予備設計段階から実際の工事に入るまでは通 常でも3~5年程度かかり、その間で所与の条件やより詳細な 情報、新技術の信頼性も向上することから、議論の過程を残し、 予備設計の最適案も無理に1つにしないことで、後工程の選択 の幅を広げるようにしたことが最大のメリットです。同手引き の活用についても今後行っていくか教えてください。

 福本 橋梁は、初期段階での検討がその後の工程に大きな影響を及ぼすため、計画や段取りが不十分なまま進めてしまうと、クリティカルパス上の重要なタスクを見落とし、供用の遅れや工程見直しによるコスト増につながりかねません。事前調査や検討を丁寧に行い、設計成果の精度を高めておくことが不可欠です。しかし実際には、調査や設計の不備が後工程、すなわち工事段階に影響するケースも少なくありません。照査に時間を要したり、関係機関との協議が整わないまま発注されてしまうことで、工事着手が遅れるなど、受注者にとっても大きな不利益となる状況が生じています。

 加えて、生産年齢人口が減少し、建設業界の担い手不足が深刻化するなか、災害対応やインフラ整備、メンテナンスといった重要な役割を継続して果たしていくためにも、働き方改革と生産性向上の推進が求められています。そのため発注段階から工程全体を見通した計画性を確保し、後工程の負担を抑えることが極めて重要となります。

 こうした背景を踏まえ、四国地方整備局では令和63月に「発注者の心得」を策定し、令和73月に改訂しました。これは発注者としての意識改革と業務改善を進め、設計成果の品質向上を図るとともに、働き方改革や生産性向上につなげ、事業をより円滑に推進することを目的とした取り組みです。「発注者の心得」では、設計段階から施工性や安全性を十分考慮し、現場施工を意識した設計を行うことを明確にしています。設計成果には施工計画をより充実させることを求め、条件明示チェックシートを活用して情報の漏れを防ぎ、情勢変化により条件が変わった場合には確実に更新し、工事発注前から工事実施段階まで確実に引き継ぐ仕組みを整えています。

 

 土木学会が発刊した「橋の計画と形式選定の手引」は、予備設計段階での議論の過程を残し、最適案を無理に一つに絞らず、後工程に選択肢を残しておくという点が大きな特徴です。予備設計から実際の工事に至るまでには35年を要することが多く、その間に地質条件や住民合意形成の状況、新技術の信頼性などが変化する可能性があります。だからこそ、検討過程を適切に記録し、後工程で柔軟に判断できるようにしておくことは非常に有効です。



 当局としても、この手引が示す考え方を参考にしながら、予備設計段階でのリスク項目を確実に把握し、意思決定の内容や理由を後工程へ確実に申し送ることで、修正設計や手戻りを防ぎ、より適切な橋梁計画・設計につなげていきたいと考えています。

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老朽化が進む構造物への維持管理の方向性

橋梁・トンネルの健全度評価と課題の把握

−−維持管理に関してお聞きしますが、現在の管内橋梁・トンネルの内訳を教えてください。

 福本 令和6年度末時点で、四国地方整備局が管理する橋梁・トンネルは、いずれも老朽化が進んでおり、今後の維持管理の重要性がさらに高まっています。

 まず橋梁は、全2,785橋を管理しています。構造種別では鋼橋が約25%、PC橋が約31%、RC橋が約44%で、橋長100m以上の長大橋は391橋(約14%)となっています。路線別では国道56号が最も多く710橋(約25%)を占めています。供用後50年以上の橋梁は1,165橋(約42%)に達し、10年後には約60%、20年後には約74%に増加する見込みで、老朽化対策の加速が避けられない状況です。





 トンネルは全176トンネルを管理しており、工法別では矢板工法が約48%、NATM工法が約52%です。延長1,000m以上の長大トンネルは22トンネル(約13%)となっています。路線別では橋梁と同様に国道56号が最も多く、78トンネル(約44%)を占めています。供用後50年以上のトンネルは67トンネル(約38%)で、10年後には約46%、20年後には約57%まで増加する見通しです。







 これらの状況から、橋梁・トンネルともに点検・診断を継続しつつ、計画的な補修を進めることが重要となっています。

−−点検を進めてみての管内各路線の劣化状況について教えてください。橋種別(鋼・PCRC)、部位の損傷傾向やその理由、一巡目と二巡目の比較、損傷度の遷移状況についてもお願いします。同様にトンネルについてもお聞かせください。

 福本 まず橋梁についてですが、四国地方整備局が管理する橋梁では、1巡目の点検で「健全」または「予防保全の観点から措置を講ずることが望ましい状態」(判定)と評価された橋梁は全体の93%でした。この傾向は2巡目点検でも同様で、判定が93%となっています。





 また、路線別に見ると、管内でも特に橋梁数の多い国道56号で判定が多く見られます。橋種別では鋼橋で判定の割合が高く、国道32号や192号でも同様の傾向があります。やはり建設後の経過年数が長い橋梁ほど判定が増える傾向となっています。



 次にトンネルについてですが、1巡目点検で判定だったものは75%で、2巡目では79%となっています。路線別では国道56号に判定が多いほか、工法別では矢板工法において判定がやや高い割合で見られます。国道11号や196号では判定の割合が多くなっています。





 損傷度の遷移については、1巡目でだったものが2巡目でに悪化した割合を見ると、橋梁では全国平均4%に対し四国地方整備局では3%となっています。また、四国管内全体で見ると、建設後の経過年数が長い橋梁ほどへの遷移率が高く、これは全国的な傾向と一致しています。

 トンネルでは、全国で15%がからへ遷移したのに対し、四国では11%で、こちらも全国平均より低いものの、建設後51年以上経過したトンネルでは遷移率が大きく高まっている点が特徴です。



 橋梁・トンネルともに「経年」の影響が劣化傾向に現れており、引き続き計画的な補修に努めていく必要があります。



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橋梁・トンネルの耐震対策と長寿命化への取り組み

耐震補強の進捗、落橋防止対策、補修の方向性

 −−橋梁の耐震補強の進捗状況や落橋防止装置の整備状況、2025年度の実施予定について教えてください。また、熊本地震や能登半島地震の被害を踏まえ、どのような耐震対策が改めて必要になっているとお考えでしょうか。

 福本 まず耐震補強の進捗状況ですが、四国地方整備局では、災害時の救急救命活動や復旧支援を確実に行えるよう、緊急輸送道路に位置付けられる橋梁を対象に、「大規模地震でも軽微な損傷にとどめ、速やかな機能回復が可能となる対策」を進めています。緊急輸送道路上にある橋長15m以上の橋梁では、こうした対策の進捗率がすでに約9割に達しており、着実に耐震化が進んでいる状況です。



 2025年度は、国道55号那賀川大橋(徳島県阿南市)、国道33号潰溜橋(高知県仁淀川町)、富士見橋(高知県佐川町)で耐震補強を推進するほか、新たに国道196号崩口川橋(愛媛県西条市)、国道33号名野川橋(高知県仁淀川町)の2橋で耐震補強に着手する予定です。



 能登半島地震では水が集まりやすい沢埋め地形の高盛土で大きな被害が発生しており、当局でも、盛土高が概ね10m以上で、水が集まりやすい地形条件に該当する箇所について簡易現地調査を実施し、対策が必要と判断された9カ所のうち4カ所は対策が完了しています。

−−橋梁の長寿命化修繕計画にもとづく対策の進捗状況について教えてください。また、具体的な損傷の傾向と補修・補強の例、さらにトンネルの点検状況や長寿命化に向けた取り組みについてもお伺いします。

 福本 直轄国道は地域の重要な交通ネットワークであり、その安全性と信頼性を確保するため、四国地方整備局では定期点検によって施設の状態を把握し、その結果を踏まえて個別施設計画を策定しています。点検で判定区分Ⅱ(予防保全段階)やⅢ(早期措置段階)となった橋梁・トンネルを中心に、必要な修繕を行う方針で計画的に対策を進めています。



 現状では、判定区分Ⅲに対して適時に補修を行う「事後保全」が主体ですが、今後はより早い段階で損傷を抑制する「予防保全」型の維持管理への転換を進めていきたいと考えています。

 橋梁の補修では、塩害による鉄筋腐食、床版の疲労損傷、桁端部の損耗など、多くの橋で共通してみられる劣化に対し、断面修復や表面被覆、床版補強、支承交換などを実施しています。 

 トンネルについても、覆工コンクリートのひび割れ、漏水などが代表的な損傷です。 点検で得られた情報をもとに、覆工補修などを実施しています。橋梁と同様に、長寿命化を見据えた予防的補修への移行を進めている段階です。

 このように、橋梁・トンネルともに「状況を把握し、次回点検までに確実に必要な対策を行う」という考え方を基本に、計画的な長寿命化対策を進めています。将来的には、劣化が顕在化する前に予防的な補修を実施できる体制を整え、より効率的で持続可能な維持管理へと移行していくことを目指しています。

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