鹿児島港臨港道路(鴨池中央港区線)上部工が進捗
国土交通省九州地方整備局鹿児島港湾・空港整備事務所は、鹿児島港臨港道路(鴨池中央港区線)の建設を進めており、昨年7月~8月にかけては鋼6径間連続2主細幅箱桁部509mについて1径間ずつFC船による架設をおこなった。同道路は南北に長い鹿児島港のボトルネックとなっている中央港区と鴨池港区を結ぶ区間の整備を行い、港湾物流の円滑化を図るともに同港付近の道路渋滞解消を図るもの。同港の南側に位置する物流倉庫から物資を運び、離島や大隅半島への物流の起点となっている北側の港へのアクセスを円滑にさせることが可能となり、さらにその西側を走る国道225号および産業道路の渋滞の緩和も行うことができる。現在は事業延長2.4kmのうち、鴨池港区側の護岸工事の一部と、両港区を結ぶ橋梁の橋脚7基(P3~P9)が完了、さらに2基の橋脚(P1、P2)を施工中(躯体の頂版コンクリートの鉄筋組立)で、さらに橋脚2基(P10、P11)も施工中(仮設の導枠設置)である。今回はその一括架設を含めた鋼桁を中心に取材したルポをお届けする。(井手迫瑞樹)


(左)目的及び事業概要 / (中、右)期待する効果(令和5年度第2回九州地方整備局事業評価監視委員会資料より抜粋)
合計596mのPCラーメン箱桁と509mの鋼細幅箱桁
合計596mのPCラーメン箱桁と509mの鋼細幅箱桁
950mの護岸道路も構築
鹿児島港臨港道路は、鹿児島港を南北に縦貫する道路(延長約17km)である。谷山臨海大橋や天保山シーサイドブリッジ、黎明みなと大橋等を含む区間は開通済みで、現在工事を行っているのは、鴨池中央港区線の延長2.4kmの事業である。鴨池港区の鴨池緑地公園前の護岸を前出しして950mの護岸道路を造り、鴨池緑地球技場付近から南に1,105mの橋梁で渡し、マリンポートかごしまと本土を結ぶマリンポート大橋および黎明みなと大橋の結節点までつなぐ。

黎明みなと大橋(井手迫瑞樹撮影)
橋梁延長は1,105mである。曲線を伴う両端部(R=200)は現場打のPC橋で、A1~P3(鴨池港区側)が橋長289m、P9~A2が橋長307mであり、いずれもPC3径間連続ラーメン箱桁である。今回施工する鋼桁部は両PC橋の中間にあり、橋長は509mの鋼6径間連続細幅箱桁形式(合成床版、SCデッキスタッドレスタイプ)を採用している。暫定2車線構造であり、鋼橋区間の幅員は全幅員が12.5m、有効幅員が11.5mとなっている。橋脚はRC構造であり、基礎は、A1橋台、A2橋台ともに場所打ち杭、橋脚は全て鋼管矢板井筒基礎を採用している。鋼桁部の桁高は一般部が2,800mm、支承部が変断面で3,100mm。支承の最大反力は、桁端部でP3とP9は概ね4,900kN程度、P4~P8は11,000kN前後である。

橋梁部一般図(国土交通省九州地方整備局鹿児島港湾・空港整備事務所提供資料より抜粋、以下注釈なきは同)
護岸道路は、鴨池側の埋立部は、既設消波ブロックを一時撤去後、護岸を35m程度前出しし、その上に道路を敷設した。現地は良質な地盤であるため、特に地盤改良などを行う必要はなく、その上から基礎捨石を投入して基礎工および本体工を施工し、最後に新たな護岸の前面に仮置きしていた消波ブロックを据え付けた。埋立て済みの中央港区よりの350mについては、橋へのアプローチを行うため、擁壁を用いて少し勾配をつけて終点に結節する計画としている。

護岸工(鹿児島県公開資料より抜粋)
鋼桁 総鋼重は3,000t強
120tCCを使って合計126ブロックを6径間の鋼箱桁に地組
上部工
鋼上部工の桁高は2.8~3.1m、主桁の桁幅は1主桁に付き約1.5mである。

地組が完了した主桁(井手迫瑞樹撮影)
P3~P9の鋼桁部は1径間ごとに架設した。P3-P4が径間長79.5mで桁重量423.7t、P4-P5が径間長87mで桁重量420.2t、P5-P6が径間長87mで桁重量412.7t、P6-P7が径間長87mで桁重量419.8t、P7-P8が径間長87mで桁重量426.6t(最大)、P8-P9が径間長79.5mで桁重量375.9t(最小)、合計すると2,478.9tに達する。さらに合成床版の底鋼板が合計541.906t加わるため、総鋼重は3,000t強に達する。
さて、鋼上部工の製作である。主桁の桁高は2.8~3.1m、桁幅は1.5mほどである。これを長さ4.95 ~9.78m、重さ10.35~20.14tを1ブロックとして運ぶ。長さ、重さとも陸送に用いるトレーラーの性能に準じている。鋼桁の製作・架設はP3~P6の3径間をJFEエンジニアリング、P6~P9の3径間を川田工業が担った。JFEは同社の津工場で製作した桁をフェリーで新門司、志布志、谷山の港に海上輸送し、さらに各港から地組及び浜出しを行う鹿児島市新栄町の旧南港ヤードに陸送、同地で地組を行った。輸送ブロックはJFEが64ブロック、川田が62ブロック、合計126ブロックに達した。
現場では、120tクローラークレーンを使って送られてきたブロックを地組みした。ブロック同士は添接によって繋ぎ、添接には3種類のボルト(詳細は後述)を使用した。さらに桁間は本設横支材および架設時のみの補剛材によって繋ぐが、さらに桁間は常設足場も配置した(同)。これを両社とも約5週間かけて3径間を地組した。


鋼桁の輸送状況①

鋼桁の輸送状況②
桁と合成床版をつなぐスタッドは、架設時にセッティングビームを設置する部分以外は工場製作時に溶接しておき、セッティングビーム設置部は、ビームの除去後に現場溶接した。



セッティングビームの設置状況


セッティングビームの撤去状況

セッティングビームの転用状況
地組作業上の安全面の工夫として、作業員の接触災害、挟まれ事故防止対策として、特殊機械を使用して吊荷姿勢を制御することで、挟まれリスクがあるロープ介錯作業を省いた。また、作業員が桁運搬車両(トレーラ等)、クレーン、吊り部材(桁)との接触防止の目的で、それぞれに検知機、アンテナ、スピーカーを設置し、全作業員のヘルメットに音声発報タグを取付けて、各運転手、作業員の双方に警報し、移動・作業を停止させて安全性を確保した。常設足場設置作業は、2パネル毎に地面にて地組し、その後クレーンにて設置することで、空中作業の低減に努めるとともに、作業効率を大幅に向上させた。(約90kg/パネル)。
横取り架設機は様々な工夫
FC船は吊り能力700tの大和を使用
横取り架設機はJFEエンジニアリングと川田工業で異なる機構を用いた。両桁端部に100tジャッキ基点を用いた横取り軌条設備を設けて、最長約50mの距離を運び、FC船による浜出しが行えるようにした。横取りジャッキは1ストローク1mとし、最長距離(約50m)でも半日程度で横取りを完了させていた。

地組されている桁(JFEエンジニアリング分)を横取り軌条設備で移動させていく(井手迫瑞樹撮影)
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横取り設備は軌条梁(H400)上にスライドジャッキを設置し、両端クレビスジャッキにて推進する機構を使って移動させる
(井手迫瑞樹撮影)
JFEエンジニアリングが用いた横取り設備は軌条梁(H400)上にスライドジャッキを設置し、両端クレビスジャッキにて推進する機構とした。
川田工業が用いた横取り架設設備は四国地方整備局のケヤキ谷橋補強工事で用いたものを転用している。具体的には軌条梁(H400)上に横取り梁を設置し、推進する機構とした。推進装置はセンターホールジャッキ(cap100t)を使用し、H鋼と横取り梁の間にはテフロン版を設置し、摩擦力を減らして動きやすくするなどの工夫を施していた。こちらも同様の時間で横取りを完了させた。ジャッキは両社とも大瀧ジャッキ製を用いていた。

地組されている桁(川田工業分、井手迫瑞樹撮影)
上に横取り梁を設置し、推進する機構で移動させた(川田のみ)6枚ほど-6.jpg)
上に横取り梁を設置し、推進する機構で移動させた(川田のみ)6枚ほど-7.jpg)
軌条梁(H400)上に横取り梁を設置し、推進する機構で移動させた)
浜出しおよび架設は横取りの翌々日以降に行う。FC船は吊り能力700tの深田サルベージが保有する『大和』を使用した。大和自身には自航能力が無いため、前後に2隻の曳航船(いわゆるタグボート)を配置して大和を航行させていた。

深田サルベージが保有する『大和』を使用した(井手迫瑞樹撮影)
セッティングビームを用いて慎重につなぐ
既設桁上及び橋脚上に桁荷ブレ防止ガイド
架設当日は早朝7時半~8時頃に玉掛作業を始めた。架設は両側350tクレーンをさらに2点に二又し、4点の支持で仮設材も含めた1径間最大530tの桁を20mほど吊り上げた。玉かけから吊り上げまで約2時間半から3時間程度を費やし、慎重に施工した。次いで、JFEは最長約1km、川田は同850mの距離を吊り曳航した。吊り曳航時の注意点は、喫水に余裕を含めた航路選定(座礁回避)と、南港出口南側の突堤との離隔確保(衝突回避)である。大ブロック吊り重量に降雨による吊り重量増加も考慮している。架設に先立ち支承は全脚に据付完了させている共に、海上での主桁添接作業用床を予め地組ヤードで構築することで、海上架設位置での添接用足場組立作業を無くし、墜落、転落のリスクを低減した。

架設前の玉掛作業(JFEエンジニアリング)(井手迫瑞樹撮影)

鋼桁の吊上げ状況(井手迫瑞樹撮影)



吊り曳航状況(JFEエンジニアリング)(井手迫瑞樹撮影)

架設状況(JFEエンジニアリング)(井手迫瑞樹撮影)
架架設前の玉掛作業(川田工業)

吊り上げ状況(川田工業)

吊り曳航状況(川田工業)

架設状況(川田工業)
また、安全を考慮し、吊り曳航は波高1m以上、風速10m/s以上ある場合は中止とした。
現場には、大体11時半ごろに到達、その後は桁を橋脚間の架設位置と平行になるよう、船の向きや位置を調整し、徐々に架設箇所に近づいていった。初っ端のP3~P4径間は、横に桁が架かっていないため、フリーな状況で架設できたが、それ以降の桁は横に桁を有するため、先行して架設した桁との取り合い部はセッティングビームを用いて、慎重に接続する共に、桁を架設していない側の橋脚上にも架台を設け、架設時に桁がぶれないような工夫を施していた。さらに橋脚上には架設作業者が先行し、介錯ロープを用いて慎重に位置決めし、13mほど吊り降ろして、支承上にセットした。その後の微調整を含め、玉掛を外し、FC船が退出するのはだいたい14時半ごろまでかけていた。
セッティングビームは、1つを使いまわすため、桁同士の添接を完了した後は、クレーン付き台船で取り外し、次回施工する地組桁に取り付ける。そうした作業を行うため、横取り後すぐに浜出しして架設するのではなく、翌々日以降の架設となった。
架設時における安全上の対策としては、FC船による架設時は、「波、潮流、航跡波等の影響による、架設桁の動揺により、作業員が桁に接触する恐れがあるため、対策として既設桁上及び橋脚上に桁荷ブレ防止ガイドを講じ、ガイド支柱に沿わして架設桁を吊り下すことで荷ブレを防止して、作業員と桁の接触を防止する、などの工夫を施した」(川田)。
また、海上架設は、波高が1m以上の時、落雷の雷鳴・稲光の確認時、平均風速10m/s以上の時は作業中止の判断を下す。大ブロック架設施工日の選定は、本工事は6径間連続細幅箱桁橋を上部工2社で3径間づつ施工するため、経済性及び大ブロック架設工程の最適性を考慮して2社で同じ起重機船(700t吊)を連続使用する計画としている。また大ブロック架設に必需なセッティングビーム(架設時に桁を仮預けする仮設備)を上部工2社で同じく転用使用することで経済性を高めた。

架設前の土砂撤去状況(鹿児島県公開資料より抜粋)
一方で、現場は海岸にほど近く、浅瀬であることから、架設施工場所は直前に掘削し、喫水を確保した。付近には河川もあり、洪水時には上流から土砂が流れ、埋められる危険性もある。通常は時間に関係なく朝から午後にかけて施工するが、洪水などが生じて万が一架設施工場所が土砂で多少埋められても、喫水を確認した上で潮汐(満潮時施工など)を利用して施工するなど、様々なシチュエーションを考慮した架設計画を立てていた。

浅瀬で付近には河川もある(井手迫瑞樹撮影)






