NEXCO中日本 東海環状自動車道 三橋高架橋でジャッキアップダウン工法を採用

NEXCO中日本 東海環状自動車道 三橋高架橋でジャッキアップダウン工法を採用
2024.09.05

圧縮力を導入することで中間支点部に働く負曲げを解消

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NEXCO中日本 床版 鋼橋
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 中日本高速道路は、東海環状自動車道の一部をなす岐阜県本巣市三橋地内において三橋第一高架橋(内、外回り)、同第二高架橋(内、外回り)の4橋の上部工工事を進めている。同高架橋は、国道157号や岐阜県道屋井黒野線、糸貫川や本巣市道などを跨ぐ箇所に架けられている。また、一部は地元の北方自動車学校の敷地内に橋梁を造る必要があり、その対策として自動車学校の一時移設、復旧なども行う必要がある。さらに架設地には高圧電線や架空線があり、架設時にはそれらから離隔を十分とった形で施工しなくてはならない。加えて、第二高架橋は合成細幅箱桁としては長めの最大支間90m前後の桁を架設せねばならず、主桁はSBHS500材を使用すると共に、中間支点部の負曲げモーメントが厳しいことから、PC床版打設前に桁を1mほどジャッキアップし、打設後に同高さジャッキダウンすることで床版に圧縮力を導入し、合成桁としての剛性を高める手法を採用した。このように難易度の高い三橋高架橋の現場詳細を取材した。(井手迫瑞樹)(図写表は注釈がない場合はNEXCO中日本提供)



県道沿いから見た三橋第二高架橋(井手迫瑞樹撮影)

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上空は関西電力丸山幹線(電圧257kv)の高圧線 架設時の離隔は最小でも7mを必要

自動車学校の施設への影響から橋脚位置が拘束、支間長が決まる

国道157号跨道部 国道を跨ぐ桁の橋脚間を全てつながなくては道路を開放できない

 4橋の内訳は、第一高架橋外回りが橋長244m(最大支間52m)、鋼重756tの鋼5径間連続非合成少数鈑桁橋、同内回りが橋長165m(最大支間46.5m)、鋼重513tの鋼4径間連続非合成少数鈑桁橋、第二高架橋外回りが橋長258m(最大支間98m)、鋼重882tの鋼3径間連続合成細幅箱桁橋、同内回りが橋長295m(最大支間89m)、鋼重1,024tの鋼4径間連続合成細幅箱桁橋である。床版形式は第一高架橋(内、外)が合成床版(リバーデッキ)、第二高架橋(内、外)が現場打ちPC床版である。主に免震支承を採用しており、沓の最大反力は実に11781.8kN、最大死荷重反力も8779.6kNに達する。内回り、外回りで橋長などが微妙に違うのは、「北方自動車学校の敷地内に橋脚を設置しなければならず、施設への影響から橋脚位置が拘束され、それによって支間長が決まるため、このような構造、橋長となった」(NEXCO中日本)。



現場打ちPC床版(井手迫瑞樹撮影)


 同高架橋が建設される個所は田園地帯に位置しており、現場内では過去砕石採取を行っており、地盤は押並べてあまり良くない。そのため事前に平板載荷試験を行い、地盤耐力を確認したうえでクレーンの据え付けやベントの設置などを行っている。

 第一高架橋については国道157号を跨ぐ工程がクリティカルの一つである。「国道157号については、国道を跨ぐ桁の橋脚間を全てつながなくては道路を開放できないという条件があった」(同)。そのため、国道の両脇ギリギリまでベントを建て、先行架設し、国道157直上の桁(外回り2ブロック分20m、32tと内回り3ブロック分30m、42t)を最後に落とし込む形で架設することで、国道を架設のために通行止めする時間を最小限に抑制した。


三橋第一高架橋(外回り)地組および国道部架設前状況

同(外回り)国道部夜間架設状況

同(内回り)国道部架設前状況および夜間架設状況


 落とし込みブロックの架設は国道157号線を夜間通行止めして施工した。200tATCを用いて地組したブロックを吊って架設したが、国道157号の線形をあらかじめ振って、上下線中央にゼブラゾーンを造って、そこをクレーン据え付け及び地組ヤードとして活用し仮設した。落とし込みブロックのクリアランスは20mmあるが、橋台を反力にしてジャッキを用いてセットフォーすることで隙間を埋め、最終的に添接することで剛結している。

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上空は関西電力丸山幹線(電圧257kv)の高圧線 架設時の離隔は最小でも7mを必要

県道を横架する架空線は高さ5m 移動多軸台車はそれをくぐる形で桁を運搬

 第一高架橋、第二高架橋ともに共通して厳しいのは、上空を走る関西電力丸山幹線(電圧257kv)の高圧線だ。地上からの高さは25m、架設時の離隔は最小でも7mを必要とする。そのため事前に、離隔を徹底的に考慮した架設計画を定めたうえで施工に臨んだ。


橋梁配置と高圧電線の位置


 4橋と架設は全てトラッククレーン(200tあるいは300tATC)+ベントで施工する。その際に課題となるのはブーム角とブーム長だ。ブームが高圧電線との7mの離隔内に入らないように、まず、測量を詳細に行いクレーンの据え付け位置を決め、さらに施工ステップごとにブーム長と作業半径、ブーム角を決めることで、架設時の旋回方向やブームの操縦を詳細に決定した。その上で、クレーンオペレータにはブームの角度や長さ、旋回方法などの数字を細かく指示し、さらに離隔を安全側に確保することで、万一の事故が起きないようにした。反面、一回当たりの吊り荷重は制限され作業効率は落ちるが、安全に勝る効率的な施工はないと判断したと言える。


送電線下の架設状況


 第二高架橋については、先述したように地組ヤードおよび架設ヤードを確保するため北方自動車学校を仮移設させ、その敷地内を活用している。ただし第二高架橋内回りの県道を跨ぐ箇所については、クレーンを据え付けるヤードは確保できたものの地組ヤードは確保できなかったため、旧北方自動車学校の敷地内を地組ヤードとして活用、その桁ブロックを移動多軸台車で運んだ。運搬に際して課題であったのが、架空線の存在である。現場に至るまでの県道を横架する架空線は高さ5mという低空に位置している。移動多軸台車はそれをくぐる形で桁を運搬せねばならない。そのため、移動多軸台車上の架台は200Hという最小限の高さのものを使用し、4ブロック分つないだ桁(鋼重48t、30m)を運んだ。


県道上、低い位置に架空線があるのが分かる




高さ5mという低空に位置している架空線をくぐる形で桁を運搬(映像はNEXCO中日本提供)



三橋第二高架橋(外回り)の県道上架設前(左)、架設中の状況
三橋第二高架橋(内回り)の県道上架設前(左)、架設中の状況 


 その後は移動多軸台車から300tATCで吊り上げて架設した。既に外回りの桁が、先行架設しているため、架設に際してはクレーンでその桁を跨ぐ形で吊り下ろして架設している。

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