NEXCO中日本 東海環状自動車道 三橋高架橋でジャッキアップダウン工法を採用
細幅箱桁部の負曲げ対策にジャッキアップダウン工法を採用
細幅箱桁部の負曲げ対策にジャッキアップダウン工法を採用
最長支間98mの細幅箱桁部 150tずつカウンターウェイトを6日間載荷
次いで細幅箱桁部の負曲げ対策である。先述したようにジャッキアップダウンを行い、床版に圧縮力を導入する工法である。そのため、事前に桁をジャッキアップした形で現場打ちPC床版を打設しなければいけない。季節的には梅雨ないし夏季に施工する必要があるため、雨対策と遮光、遮熱対策として床版施工中に簡易な屋根を設置し、工程を遅れさせないことや打設品質の確保を狙った。また、暑中コンクリート対策のため、膨張剤やAE減水剤などを使用している。打設時のスランプは筒先で12cmを基本として施工した。
ジャッキアップステップと手順
ジャッキアップ後、配筋作業やPC鋼材を配置し
コンクリートを打設していく
雨対策と遮光、遮熱対策として床版施工中に簡易な屋根を設置して施工した
打設後にジャッキダウンしていくが、通常のジャッキダウンと異なるのが、床版荷重分の増加である。通常の新設桁のジャッキダウンは床版打設前に施工するものであるし、既設桁のジャッキダウンは通常、支承交換の際などに行われるが押並べて支承の出し入れを行う数mm程度のクリアランスさえあれば事足りる。しかし、今回のジャッキダウンは、床版分の死荷重を背負った形で、さらに1mもの高さ下降させなければならない。さらに言えばジャッキダウン支点は橋脚上にはなく、ベント上に設けなくてはならない設計となっている。そのため、施工に際しては、ジャッキ支点部をあらかじめリブで補強すると共に、ベント上でジャッキアップして行くことを考え、地耐力の確保には万全を期した。
ジャッキダウンステップと手順
さらに最長支間98mの細幅箱桁部は、1mのジャッキアップダウン工法をもってしても、中間支点部の負曲げ解消には届かない。計算上は1.6mジャッキアップダウンをすれば解消できることが分かったが、「あまりにもジャッキダウン量が多すぎて現実的ではない」(JFE・三井住友鉄構JV)ことから、さらに3か所の支間中央の床版を打設した後、同部分に150tずつカウンターウェイトを6日間載荷し、さらに支点部直上のコンクリートを打設した上で、カウンターウェイトを除き、ジャッキダウンを行った。カウンターウェイト分の荷重も圧縮力として導入することで、最長支間98mの桁も中間支点部の負曲げを解消した。
カウンターウェイト設置状況
支承とジャッキ
ジャッキを外して盛替え
支承の下のサンドルを抜く
支承に荷重を受け持たせた後は再びジャッキ下のサンドルを抜きストロークを確保する
ジャッキダウンは基本、最大ストローク250mm、ジャッキ反力8,000kN(1支承に付きジャッキ4基を配置しており、その合計値)の油圧ジャッキを用いて、1ストローク150mmずつ降ろしていった。記者が取材した8月5~6日の夜間に行った最大支間98m(MP17L~MP18L、総重量390t)の現場では、21時ごろまでに県道の通行止めを行ったうえでジャッキダウンを開始、翌午前4時前には予定の高さ(600mm)のジャッキダウンを無事終えた。
支承の水平を保つために木板を挿入している状況
ジャッキダウンがほぼ完了した状況
板厚が50~60mmに達する箇所では溶接継手を採用
排水桝にはタフコネクトを塗布
主桁フランジ及びウエブの現場継手は、現場作業省力化のため一般的に高力ボルト摩擦接合が行われるが、三橋第二高架橋では主桁の板厚が50~60mmに達し、添接板重量やボルト本数が多くなることが予想されたため、現場(全断面)溶接継手を採用した。この変更により継手部での凹凸が小さくなるため、防食性の向上も期待できる。防食仕様は全てC-5系とした。また、自動車学校敷地内の点検は困難が予想されることから、張出し部や桁内に検査路を設けて、維持管理しやすいようにしている。
溶接状況(上2枚は上フランジ、下2枚はウエブ)
溶接完了後の調査状況
また、排水桝と床版コンクリートの付着性を向上させ、シームからの漏水を防ぐために排水桝にはタフコネクトを塗布している。床版張出し部の排水支持金具には水勾配を付けて、雨水が流れやすくするなどディテールも工夫した。
詳細設計は三橋第一高架橋(内、外)が協和設計、同第二高架橋(内、外)がJFEエンジニアリング・三井住友建設鉄構エンジニアリングJV。
桁の製作・架設はJFEエンジニアリング・三井住友建設鉄構エンジニアリングJV。一次下請はミック(多軸台車)、大瀧ジャッキ(ジャッキ)、杉本工業所(架設工)、平野クレーン工業(重機工)、アーキテクノ(現場溶接工)、ダンテック(非破壊検査)、朝日土木(床版工)、橋梁テクノ(橋梁付属物工)。支承製作は日本鋳造。
ジャッキダウン完了後の桁下
工期は2022年1月6日~25年3月15日までを予定している。