インフラ未来へのブレイクスルー -目指すは、インフラエンジニアのオンリーワン-

インフラ未来へのブレイクスルー -目指すは、インフラエンジニアのオンリーワン-
2025.01.01

④便利さの裏側に何かが失われている  ‐ 進歩とは必ず改善を意味するものではない ‐

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インフラ未来へのブレイクスルー -目指すは、インフラエンジニアのオンリーワン-
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>髙木 千太郎氏

(一般社団法人)日本構造物診断技術協会 顧問
アイセイ株式会社  エキスパートアドバイザー

髙木 千太郎

1.はじめに

 私の連載では年の初めに慣例のように干支を絡めたその年の予測を行っているがその趣旨は、始まる年が災害や事故の発生が少なく、そして私を含め読者の方々に良いことが多く起こるように祈願して話を進めてきた。

 さて、令和7年(2025年)は、人生の羅針盤として「努力を重ね、物事を安定させていく」という意味を持つ干支の「乙巳(きのとみ)」にあたっている。令和7年の干支、乙巳(きのとみ)の年とは、多くの人にとって成長と結実の時期となる良い年として期待されるが、第一の語「乙」は未だ発展途上の状態を表し、第二の語「巳」は植物が最大限まで成長した状態を意味している。このようなことから、干支でこの組み合わせにあたる年は、夏の始まりの草花のような強い息吹を感ずるイメージと考えるのが適切であり、人生で「乙巳」を考えると、これまで積み重ねてきた努力や開花する準備行為が実を結び始める時期を示唆している。

 過去の「乙巳」にあたる年の出来事として有名なのは、「乙巳の変」があげられる。「乙巳の変」とは、1,380年前の西暦645年、日本史でも有名な「大化の改新」と呼ばれる国政改革で、「中大兄皇子」と「中臣鎌足」が、「蘇我入鹿」を御所内で暗殺し、蘇我入鹿の父である「蘇我蝦夷」を自害させることで蘇我一族を滅ぼした大事件である。「乙巳の変」によって我が国は、時の中国を支配していた『唐』の律令制を手本として、公地公民制による天皇による中央集権的な律令国家が建設され、日本の原型が出来上がった事件として有名である。

 私がこの事件を考えるには、「中大兄皇子」と「中臣鎌足」が干支の意味をよく理解していたことと、女帝の皇極天皇となって4年経過した西暦645年が幸いにも「乙巳(きのとみ)」の年にあたることを重ね合わせ、両者が相談して第35代天皇にあたる皇極天皇の時代、皇紀1305年に政変(クーデター)を起こしたはずが無いと思っている。このような理由から私としては、飛鳥時代に起こった世の中を一変させる大クーデター「大化の改新」と「乙巳」年とは偶然の一致であろうと思っている。

 また、社会基盤施設で「乙巳」年あたる出来事は、我が国における初の高速道路・名神高速道路の全線(小牧-西宮間1965年7月)開通があげられる(写真‐1参照)。名神高速道路の開通は、土木技術者のこれまでの積み重ねてきた一大成果が実った年と私は考えたい。


写真1 一宮IC開通当時の様子:中日本高速道路株式会社所有


 先に示した過去に起こった事件や事例はさておいて、私の本年のお勧めとして、これまで多くのことを積み上げ、目標達成のためにコツコツ努力をしている方は、今年こそ「打って出ていく勇気、博打根性」で一歩踏み出す絶好のチャンス年であると考え、一歩踏み出してほしい。私が講演や講義する際によく使う言葉に写真‐2に示す『独創のコツ』があり、ここでも先に示す「博打根性」がある。そう言う私も、実は『独創のコツ』を実践し、「博打根性」で新たな取り組みを社会に認めてもらおうと行動を開始している。この話は次回にでも読者の皆さんに紹介をしよう。


写真-2 独創のコツ:広中平祐


 さてここで、昨年度の4月から新たに始まった当インフラ情報サイト『R2SJ』について、年始にあたって私から少し話をしたい。私自身、『R2SJ』の連載記事を執筆するたびに、読者の方々が『R2SJ』についてどのように感じているのか、また、読者にとって『R2SJ』がプラス方向に寄与しているのか、それともマイナス方向に評価が下がったのかを聞いてみたい。私個人の感覚としては、主催である井手迫氏の病的な意欲と驚異的な行動には恐れ入るが、『R2SJ』にはDX時代における社会基盤施設関連SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)情報発信サイトであると認識している。また、私の見聞きしている井手迫氏の昼夜を問わない行動から、古き良き時代の足で稼ぐ記者の名残をも感じ、大きな負荷を背負って取材に走り回る井手迫氏の行動に『R2SJ』の将来がかかっていると思う。私としては、井手迫氏の足で稼ぐ古き記者魂に同感し、それでこそ読者の心に訴える重厚で深みのある記事が書けるはずと思う反面、『R2SJ』も近年の種々な雑誌と同様に薄っぺらで意味の無い記事の連続となることに危惧しているのが私の本心である。

 そもそもSNSの長所は、リアルタイムな情報共有と迅速なコミュニケーション、マーケティングとビジネスの拡大及び特定の趣味や関心を持つ人々が繋がるコミュニティの形成などである。SNSの長所であるリアルタイムな情報共有は確かに素晴らしい、しかし、短期に多種多様の情報提供が必要なことから情報を提供する側の責任者は、その情報が正しいのか? 誤解を生み社会を扇動するような情報なのか? などを深く考え、適切に判断する余裕は無い。

 SNSの短所は、誤った情報や虚偽のニュースの拡大、ストーカー被害にあうリスクなどのプライバシーの侵害及びスマートフォンを代表する中毒性と精神的な影響などである。倫理観に優れた記者、公平・公正を考える記者、正義感に燃える記者などは、SNS全盛時代でも不可欠であるはずなのに、重要視されていないような気がする。

 さて話を連載に戻して、新たなサイト『R2SJ』が立ち上がった件についての話である。

 私に対し、昨年9月に開催された土木学会全国大会や種々な団体が催している技術講演会等においてお会いした数多くの人が、「髙木さんが連載している情報サイトですけど、ある時から急に見ることが出来なくなったのですが何かあったのですか?」、「残念ですね!髙木さんが執筆していた連載サイト辞めちゃったのですか?」、「髙木さんの毒舌が良かったサイトが無くなって残念です。どこかの組織によって潰されたのですか」などなど多くの人から私の連載や以前のサイトについて声を掛けられる機会が多かった。比較するのでは無いが、以前私が月刊誌『橋梁と基礎』に連載していた当時の反応とSNSとを比較すると読者の反応は大きく異なり、SNSを利用している人が多いことを痛感させられた過去がある。

 またまた話は横道に反れるが、SNSの反響を物語る事例に昨年11月に行われた失職した斎藤元彦前兵庫県知事の「兵庫県知事出直し選挙」がある。あれだけ多くの関係者や報道機関が県知事としての質を問題視されていた斎藤県知事の出直し選挙直前の情報分析においては、兵庫県前尼崎市長・稲村和美氏の当選確実との情報が流れていた。しかし選挙の中盤から斎藤前県知事が急速に巻き返し、結果は斎藤前県知事が1,113,911票(45.2%)、当選確実視されていた稲村氏が976,637票(39.6%)と137,274票の大差をつけて再選された。再選された斎藤県知事は今回の出直し選挙について「SNSなどを通じて、駅での活動に集まってくれる人が少しずつ増えていった。SNSは1つの大きなポイントだった」と述べている。県知事選挙についてテレビ報道では「パワハラの疑いなどで告発された問題で県議会から不信任を議決され、失職しましたが、今回、再選への原動力になったとも言われているのが、SNSでの発信である」との斎藤県知事の発言が流れた。今回の斎藤兵庫県知事再選の大きな要因の一つがSNSであるのは確かであろうが私は、SNSには裏と表があって使い方を誤ると大きなしっぺ返しを受けたり、民衆を誤った方向に導いたりすることから要注意である、と常日頃から注意していた。事実、斎藤県知事の選挙運動に関して、公職選挙法違反の疑いが持ち上がり問題となっているが、その原因もSNS情報の拡散からである。斎藤兵庫県知事の話から、私の本職である社会基盤施設に話を変えよう。

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