北部国道 改築4事業を推進
北部国道事務所は、沖縄本島の北部、恩納村(おんなそん)以北の国道58号、うるま市以北の国道329号の2路線の維持管理や橋梁等道路構造物の点検補修、交通安全事業、電線共同溝事業、渋滞対策等のバイパス事業(読谷道路事業含む)を行っている。その事業の進捗状況と維持管理上の課題について同事務所の屋我直樹所長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)
海岸線に近く、塩害対策が必要
美ら海水族館に加えて、ジャングリアも開場。リゾートが拡大
海岸線に近く、塩害対策が必要
――管内の地勢的特徴と道路の整備方針および構造物の整備の考え方について
屋我所長 沖縄本島は四方を海に囲まれた亜熱帯性気候の地域に属し、高温・多湿に加えて、台風の常襲地域となっています。当管内は、本島北部の自然豊かな「山原(やんばる)」地域を有し、丘陵地帯を背景に、海岸沿いを南北に直轄管理2本(恩納村およびうるま市以北)の国道を管轄しています。国道58号は国頭村奥~恩納村山田までの約93km、国道329号は名護市世冨慶~うるま市栄野比までの約43kmが管轄範囲です。橋梁は延長20m以上が84橋、トンネルは11か所を管理しています。
道路整備については、県内最大の集客力を誇る本部町の「美ら海水族館」(2024年度は343万人超えの入館者、コロナ終息後、入場者は回復傾向)や新たな目玉である「ジャングリア」、観光リゾート地域である恩納村などの多数の観光資源・施設を有する地域を抱えていることから、観光シーズンやイベント時に発生する交通渋滞の緩和に加えて、観光の支援、地域の活性化を目的とした改築事業(名護東道路、読谷道路、恩納・恩納南BP)を進めているところです。

美ら海水族館もジャングリアも良いが、個人的にはここが好きである(井手迫瑞樹撮影)
構造物の整備に当たっては、現道および改良事業個所のそのほとんどが海岸線に近く、飛来塩分による既設構造物の老朽化対策及び、新設構造物の塩害対策には、沖縄地区鋼橋防食マニュアルなどに基づいた対応を行っているところです。
名護東道路 全線を暫定2車線供用済み
引き続き4車線化に向け調査・設計を進める
――進捗中の事業路線の目的と概要、現況をお答えください
屋我 1997年に事業化した名護東道路は、高規格幹線道路である沖縄自動車道路と、地方拠点都市地域にも指定された北部広域拠点(名護市)をネットワーク化することにより、地域の活性化を支援すると共に、名護市街地の渋滞緩和を図ることを目的とした道路事業です。
2021年7月に名護市世冨慶IC~数久田IC間の2.6kmが開通し、起点の伊差川ICから終点の数久田IC間の6.8kmが暫定2車線で全線開通しました。
今後は、引き続き完成4車線化に向けた調査・設計を進めていきます。
――優先区間はどう想定していますか
屋我 伊差川IC~世冨慶ICを優先して進めることになろうかと思います。
――構造物はどのようなものがありますか
屋我 トンネルは4本を予定しており。1kmを超える長大トンネルが3か所あります。名護大北トンネル(1,976m、Ⅰ期線時、Ⅱ期線時は予備設計段階で2,002m)と幸地又トンネル(1,170m、Ⅰ期線時)と数久田トンネル(1,021m、Ⅰ期線時)で、名護大北トンネルは県内最長を誇ります。
橋梁・高架は、大北高架橋(予備設計時は橋長400m、PC3径間連続ラーメン箱桁橋+鋼4径間連続少数鈑桁橋(以下同))、幸地川橋(橋長88m、Ⅰ期線時はPC3径間連続ポステンホロー)、世冨慶IC本線橋(①橋長21m、Ⅰ期線時はPC単純床版、②橋長19m、Ⅰ期線時はPC単純プレテンT桁)、同ONランプ橋(橋長22m、Ⅰ期線時は鋼単純非合成箱桁)、同OFFランプ(橋長22m、Ⅰ期線時はPC単純床版)数久田高架橋(橋長219m、Ⅰ期線時はPC7径間連続ポステンホロー)を予定しています。工事着手は未定です。
現在は名護大北トンネルの下り線と大北高架橋A1~P3下り線の設計を進めています。
読谷道路 開削トンネルは残り12ブロックに
橋梁も上部工が進捗
――読谷道路は
屋我 読谷村親志(おやし)~同村古堅(ふるげん)に至る延長6kmの高規格道路事業です。沖縄西海岸道路の一部を形成し、読谷村内における国道58号の渋滞緩和、地域の産業、観光および地域振興プロジェクトの支援を目的としています。現在は同村座喜味~喜納までの約1.5km区間と、同村大木~古堅までの約1.3km区間を暫定2車線で開通させています。引き続き残区間についても改良工事、橋梁下部工事を実施していきます。
読谷道路の施工中・施工予定橋梁一覧

――残区間の状況を具体的に教えて下さい。
屋我 工区は4つに分かれており、親志~座喜味間で橋梁、喜納~大木間で開削トンネルの工事などを行っています。

読谷道路3号橋下り下部工

読谷道路5号橋下りA1下部工

同A2下部工

同P1およびP2下部工
具体的には読谷道路5号橋の下りA1、P1、P2と開削トンネルの函渠の建設を進めています。開削トンネルは現在、23ブロックに分かれた延長281mのうち、11ブロック135mが完了しています。引き続き残り12ブロック146mを施工していく予定で、現在は2ブロックの施工を行っています。

開削トンネルの函渠の建設
――延長は281mと比較的短いですが、息の長い工事になっていますね
屋我 完成4車線分の幅員で函渠を構築しており、規模がかなり大きなものとなっています。
――左右もかなり角度を付けて切っていますね
屋我 当初はもう少し立てた切土勾配にしていたのですが、琉球石灰岩の地盤を掘削しているので、後からぽろぽろと崩れてしまう可能性があり、そのため現在のような緩やかな勾配で切っています。バックホウでも掘れるので、掘りやすいのですが、それゆえに崩れやすく、そのため現在の緩やかな切土になりました。
本体は現場打ちで構築しており、日射が当たる現場での現場打ちマスコン施工ですので、暑中コンクリート対策が重要になります。
――橋梁の進捗状況は
屋我 設計済み同3号橋上下部工(PCコンポ橋)、4号橋上下部工(下部工下りA2は9月25日に開札、PCコンポ橋)、5号橋上部工(下部工は施工中、PCコンポ橋)、大木高架橋本線上下線(上り114m、下り115m、いずれもPC箱桁)、大木高架橋OFFランプ(111m、PCラーメン橋)となっています。
進捗状況は、3号橋は下部工のA2がまだ終わっていません。4号橋はA1、A2ともまだ着手していません。5号橋も先ほど申し上げました通り、下部工を施工している段階ですので、上部工は、それら下部工が完了する見込みがついてからの発注になります。
大木高架橋も下部工は未施工です。
恩納バイパス 橋梁上部工が終盤
恩納南バイパスは舗装工を施工中
――恩納バイパスは
屋我 恩納村瀬良垣~同村南恩納に至る延長約5.1kmの4車線道路で、観光シーズンや休日の渋滞緩和、交通安全の確保および沿道環境の向上を図ることを目的とした道路事業です。2011年4月には全線を暫定2車線で供用しています。現在は、改良工事、橋梁上部工事を実施しています。
恩納バイパス下り線進捗中橋梁一覧

事業進捗率は約88%に達しています。現在は下り線2号橋上部工(橋長86m、PCコンポ橋)(R7.8.29工事完了)下り線4号橋上部工(121m、PCコンポ橋)は施工中、同5号橋上部工(269m、鋼鈑桁橋、合成床版)は架設が完了し、床版を施工中です。同6号橋上部工(395m、PCT桁およびPCコンポ橋)はあと4径間(下りP8~P12)のみ残っています。同7号橋上部工(68m、PCコンポ橋)を残していますが発注手続き中です。(R7.8.19契約)土工部は切土部こそ少し工事が残っていますが、盛土部は完了している状況です。

恩納バイパス下り線2号橋上部工

同4号橋上部工


同5号橋上部工

同6号橋P12-A2上部工

同7号橋
――恩納南バイパスは
屋我 恩納村南恩納~同村仲泊に至る延長約6.5kmの4車線道路で、観光シーズンや休日の渋滞緩和、交通安全の確保および沿道環境の向上を図ることを目的とした道路事業です。2018年3月に全線暫定2車線供用しています。また、恩納南バイパスの事業進捗率は事業費ベースで約97%となっております。橋梁区間が約0.9km(14%)となっています。現在は橋梁、土工とも完了しており、最終段階として舗装工事を実施しております。舗装工事と合わせてⅠ期線の山側切土のり面が流れ盤となっていることからの最終点検も併せて行っており、必要に応じてアンカー工などの安全対策を実施します。
支承鋼部材に溶射+ふっ素樹脂トップコートを適用
PC・RCはエポ鉄筋や被覆PC鋼材を採用
――特徴ある形式あるいは工法適用(基礎、下部、上部、床版問わず)の橋梁・高架橋、トンネルについて(路線名、橋長(延長)、形式、架橋地(施工地)、着工年次、完成年次、進捗状況)、また鋼・コンクリート形式問わず、防食などLCC縮減の手法について(鋼橋の重防食(塗装・溶射・塗装周期延長鋼材やステンレスクラッド鋼、コンクリート橋のプレキャストセグメント化の徹底、エポキシ樹脂塗装鉄筋や表面保護など)
屋我 現在、施工中の恩納バイパスの橋梁上部工工事では、支承工について将来の維持管理に配慮した「金属溶射による高耐久化」を図っています。支承の鋼部材の防錆処理は、これまで「溶融亜鉛めっき」によるものが主流でしたが、既に供用している恩納バイパスのⅠ期線では供用後10年ほどで鋼部材に腐食が見られるようになりました。
このため、将来の維持管理費に占める割合が比較的大きい支承部について、従来の「溶融亜鉛めっき」から二重防食仕様である「アルミニウム・マグネシウム合金溶射+ふっ素樹脂塗装」( 日本ピーエス、ピーエス・コンストラクション、宮地エンジニアリング、川田建設)に変更し、供用期間中の塗り替え塗装を不要とすることで、維持管理費の削減に加え、維持管理作業の省力化も図ることができると考えています。
同防食仕様では、100年防食を目指しています。
――伸縮装置の防食についてはどのように対応しておられますか
屋我 伸縮装置については、設計伸縮量・必要遊間量から適用可能な荷重支持型ジョイントの内、静粛性に優れるゴム製ジョイント、耐久性に優れる鋼製ジョイント等を抽出し、LCC比較によりアルミ合金製のジョイント(KMAジョイント:(株)橋梁メンテナンス)を採用しています。この伸縮装置は、本体をアルミ合金の一体構造としているためゴム製に比べて疲労耐久性に優れ、塩害に対しても腐食しにくく、耐候性に優れています。そのため、初期工事費ではいずれも同等ですが、LCCの縮減が見込まれます。
また。コンクリート構造物については、特に塩害が見込まれる海岸との距離が近い箇所については、エポキシ樹脂塗装鉄筋やエポキシ樹脂被覆PC鋼より線を採用し、防食性能を向上させています。






