Interview

中部地方整備局 望月拓郎道路部長 インタビュー

2025.10.31

Share
X Facebook LINE
鋼構造物の再生と環境の調和 循環式ブラスト工法、循環式ショットピーニング工法 今までも、これからも、ずっと誠実 キレイに、未来へ

人々の生活を豊かにする道づくりを目指す

長寿命化に向けた補修・補強と維持管理の取組

疲労亀裂対策・床版防水・支承更新で安全性と耐久性を確保

 −−経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と2025年度の施工計画について、また鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査および要補強対策工について該当橋についてお答えください。また、コンクリート桁・床版部においてどのような損傷がでているか教えてください。加えて整備局が管理する橋梁における床版防水の施工状況、今後の施工方針、採用する工法などを教えてください。

 望月 上部工補修・補強のここ3年の実績、2025年度の施工計画ですが、2022年度は176橋 (補修・補強に係る工事本数:44本)、2023年度は126橋(補修・補強に係る工事本数:26本)、2024年度は103橋(補修・補強に係る工事本数:32本)です。

  なお、2025年度には161橋の補修・補強工事を予定しております。

 鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査を実施している橋梁は、3橋(谷田高架橋、大場南高架橋、八坂IC橋(下))です。

 要補強対策工について該当橋ですが、詳細調査になっている橋梁3橋(谷田高架橋、大場南高架橋、八坂IC橋(下))ともに亀裂が生じており、補強対策が必要とされております。

 コンクリート桁・床版部の損傷については、うき、はくり、剥離鉄筋露出の損傷が多く確認されております。橋梁における床版防水の施工状況は管内橋梁(BOX・横断歩道橋を除く)において、1,925橋が施工済み(橋梁全面・車道全面を実施したもののみを対象)であり、コンクリート床版を有する全橋梁に占める施工済み割合は48%です。

 今後の床板防水の施工については、各事務所における補修・補強工事に合わせて実施してまいります。なお、採用する工法については、各橋梁の現地状況を見ながら、最適な工法を選定してまいります。

 −−支承取り換えや、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について2025年度の施工予定個所数と取替える際の工法・種類をお答え下さい。

 望月 2025年度は、支承取替が14橋、ジョイント取替が19橋の施工を予定しております。ノージョイント化については、現時点で施工の予定はございません。取替工法については、各箇所の状況を確認し、適切な工法を選定してまいります。支承取替についてはジャッキアップ(フラットジャッキ工法等)等。種類については鋼製支承、ゴム支承。ジョイント取替に関してはフィンガージョイント、ゴムジョイント、ハイブリットジョイントなどが挙げられると思います。

キレイに、未来へ Producing The Future 未来をプロデュースする TPCエポキシ鉄筋、TPCエポグリップで橋梁等が長寿命化

塩害による損傷が42橋、アルカリ骨材反応による損傷が112橋

静岡、浜松など海岸線に近い橋梁に多くみられる

 −−塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化の有無。劣化があればどのような形で出ているか(劣化部位やその劣化程度、面積)、またその対策工法などを具体的な橋梁などを挙げてお答えください。

 望月 中部地方整備局管内では塩害、アルカリ骨材反応による損傷と推定される橋梁が塩害42橋、アルカリ骨材反応112橋が確認されています。塩害は静岡、浜松など海岸線に近い橋梁に多くみられ、塩害による損傷の発生部位として主桁が全体の約34%と多く、その他床版、横桁、橋脚などに発生しています。塩害による損傷割合としてうきが約32%と多く、次に剥離・鉄筋露出が26%、その他、ひびわれ、欠損などがみられる。主桁における損傷程度は0.01m2~2.16m2です。令和3年度に実施した静清維持管内東部橋梁補修工事において、国道1号の由比川橋(上下線)の補修を行いました。本工事では、断面修復工法として塩分吸着剤を混入したポリマーセメントモルタルを使用し、コンクリートの劣化対策を実施しました。



 アルカリ骨材反応は、岐阜県東濃地区、長野県南信地区の橋梁に多くみられ、アルカリ骨材反応による損傷の発生部位として橋台が全体の約64%と多く、その他、橋脚・主桁などに発生している。橋台における損傷程度(ひび割れ幅)は程度大(RC:0.3mm以上、PC:0.2mm以上)のひび割れが約58%と半数以上を占めています。令和6年度に実施した19号跨線橋補修工事では国道19号上田跨線橋の補修を行いました。断面修復工法(亜硝酸リチウム含有ポリマーセメントモルタル充填)、表面被覆工(シラン・シロキサン系含有材塗布)で対策を行いました。

 −−2024年度の鋼橋塗り替え実績(橋数と面積)と、2025年度の鋼橋塗り替え予定(同)、また塗り替えの際の溶射など新しい重防食の採用などについて教えてください。

 望月 2024年度は88橋の塗り替えを実施しており、総塗り替え面積は38,244m2です。現時点で37橋の塗り替えを予定しており、総塗り替え面積は約9,470m2の予定です。溶射など新しい重防食の採用に関しては橋梁の状況を見て、特に必要と思われるものについて採用を検討しているところです。

 −−既設塗膜の除去において、どのような方法(塗膜はく離剤、循環ブラスト、レーザーブラスト、IHなど)を用いているか、詳細をご教示ください。

 望月 令和6年度の塗膜除去においては、主に循環式ブラスト工法を用いています。

 −−PCBや昨年の厚生労働省・国土交通省から出ている2014年5月30日に出た文書をはじめとした一連の文書・通達を受けて、鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。

 2014年5月30日に厚生労働省より通達のあった「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について」に基づき、事前に塗膜調査を実施して、その結果により必要な対策(飛散防止対策や作業員の健康被害を防止する対策)を実施した上で施工する等、適切な方法で処理を実施しております。



 −−耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てきていますが、整備局では採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください。

 望月 中部地整管内で耐候性鋼材を採用している橋梁は197橋あります。うち腐食による損傷と診断された橋梁が33橋です(健全度内訳:Ⅱ判定23橋、Ⅲ判定10橋)。

 −−耐候性鋼材を使用した橋梁において錆による劣化・損傷が生じた場合、どのような補修・補強を行っているか、具体例を教えてください。

 望月 耐候性鋼材を使用した橋梁においては、板厚減少量や異常さびが少ない箇所は部分塗装、多い箇所は同種の鋼材による当て板補修を実施しています。

 −−全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいます。河積阻害率の高い橋梁の改良や補修もしくは更新(架替)、道路に面する斜面や、古い法面、盛土構造などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください。また具体的な要対策箇所数と進捗状況などについてもお答えください。

 望月 橋梁更新を伴う事業等を進める場合においては、河川管理者と協議のうえ、河積阻害を解消する必要があると認識しております。 道路の法面や盛土については、『防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策』として、法面・盛土対策を推進しております。要対策箇所の進捗状況ですが、2025年3月末時点で要対策経験箇所数 が1,448箇所、要対策数が381箇所となっており、進捗率は約74%です。

 2024年1月の能登半島地震では、集水地形上に構築された盛土を含む区間や高盛土区間で、多数の被災が確認されたところです。中部地整では、能登半島地震を踏まえ、「盛土高おおむね10m以上の盛土、集水地形に造成された盛土」を対象に、2024年9月までに緊急点検を実施しております。2025年度は、緊急点検の結果、対策が必要と判断した箇所について、詳細調査や対策工を進めております。

キレイに、未来へ Producing The Future 未来をプロデュースする TPCエポキシ鉄筋、TPCエポグリップで橋梁等が長寿命化

工事事故を無くしていくことが重要

人々の生活を豊かにする道づくりを目指す

 −−新技術や、コスト縮減策または独自の新技術・新材料などの活用について 教えてください。

 望月 2022年度に原則化された「定期点検における点検支援技術の活用」により、橋梁点検においても新技術の採用を積極的に進めており、2024年度は19の点検支援技術を活用しました。2025年度は、2025年4月版の新たな点検支援技術性能カタログを活用し新技術の採用を進める予定です。

  工事においては、飯田国道事務所において超高強度繊維補強コンクリート(UFC)を活用した工事を試行的に実施しています。

 現行基準による設計では床版厚・床版重量が増加するため、上部工重量が増加し上下部工の補強も必要となりますが、軽量かつ床版厚の薄い超高強度繊維補強コンクリート(UFC)を活用することにより、路面高を変えることなく、かつ上下部工の補強が不要となりました。



 −−特殊・長大橋梁の架替や大規模修繕、長大トンネルの修繕事業等について。また権限代行で自治体が保有する橋梁などの構造物の点検や補修補強もしくは架替を行う事例の進捗中案件などについて教えてください

 望月 はじめにお話しした岐阜県各務原市の木曽川を渡河する一般県道松原芋島線の川島大橋について、令和3年5の豪雨により一部の橋脚が傾斜する被害が発生し、各務原市がスクールバスやタクシーによる送迎を行うなど、地域の通勤・通学に不便が生じている地域の実情や岐阜県知事からの要請を踏まえ、国が災害復旧事業を代行して実施しています。歩行者用の仮橋は、2022年8月に完成しており、現在は、旧橋撤去が完了し、右岸側の仮桟橋を設置し、右岸側ベントを設置しています。

 −−熱田伝馬橋の架け替え工事中かと思いますが、進捗状況はいかがですか

 望月 橋梁を架け替えるため、上り線側に迂回する仮橋を設置し交通を確保しながら工事を進めています。現在は、下り線の既設橋撤去に向けて、施工ヤードを確保するため隣接する構造物の撤去工事を実施しています。

 −−旧川島大橋の洗堀による損傷を踏まえ、古い橋梁や長大橋で、ダムが上流にあり洪水時に橋脚基礎について、必ずしも埋め戻し作用が働かないような場所については、どのように点検あるいは管理していこうとお考えか、教えてください。

 望月 橋梁の洗掘については、橋梁定期点検要領に基づき点検を実施しており、澪筋の変化や河床位置の計測に対して、水中ドローンやグリーンレーザー測量等の新技術を積極的に活用することを考えています。

 −−最後になりますが、中部地方整備局の今後について一言お願いいたします。

 今年の1月に埼玉県八潮市で発生した下水道管の崩落による道路陥没にもみられるように、道路施設だけでなく、道路の地下に埋設されている占用物件についても、高度経済成長期に急激に整備された施設の老朽化が進んでいると思われ、適切に管理していくことが重要な課題となっています。各県単位で道路管理者と占用事業者が加わった連絡会議が設置されているところですが、その連絡会議を活用して、双方で情報を共有していくことが大事になってくると思われ、そのためにもデータのデジタル化を進めていくことが必要と感じています。

 工事従事者の高齢化や担い手確保の難しさ等の課題への対応や、週休二日の導入等の働き方改革の推進の必要性を踏まえると、なによりも工事事故を無くしていくことが重要だと考えています。現場現場で、安全対策、安全指導を徹底することはもちろんですが、安全管理を高度化していくことも必要です。そのためには、ICTやデジタル技術をこれまで以上に活用し、人間の行動や判断をサポートするシステムを強化する必要があると思われます。
建設工事の効率化の面でも、あらゆる工事や作業の場面で、デジタル化が進んでいくと思われますが、今後はAI等を活用した技術が開発されていくことを期待していますし、積極的に活用していく意識を大事にしたいと思います。また、作業環境の面では、現地の交通の安全をしっかり確保したうえで、夜間工事を減らすための取組をすすめていくことが、働きやすさや作業現場の安全確保の面からも大事と考えています。


 今後とも、中部地方を経済・生活の面で支え、人々の生活を豊かにする道づくりを目指していきたいと思います。

 −−ありがとうございました。

キレイに、未来へ Producing The Future 未来をプロデュースする TPCエポキシ鉄筋、TPCエポグリップで橋梁等が長寿命化

pageTop