国交省九州地整 災害に強く、生活・経済活動の向上に寄与する社会インフラ整備
球磨川は、河川対策におけるフルメニューを駆使
球磨川は、河川対策におけるフルメニューを駆使
暫定2車線の4車線化は災害に対する重要な対策ツール
――今事業を進めているところ特徴的な例は、例えば球磨川流域等について
森戸 球磨川は、河川対策におけるフルメニューを駆使しています。遊水池あり、引堤あり、嵩上げや輪中堤ありです。
球磨川流域の水害により流失した橋梁(splice-lab提供)(令和2年7月)
仮橋で復旧した状況/中央径間だけ流された西瀬橋は完全復旧を遂げている
(左:splice-lab提供、令和4年7月、右:国交省提供、令和5年2月)
――アップグレードについての頻度はどのように考えておられるのでしょうか
森戸 今までの計画高水だとかの前提条件が変わる災害が起きた時に、改めて外力を算定し直して与条件を変えてアップグレードしていきます。
――いま、河川の方のお話をされましたが、道路橋もありますし、法面とか自然斜面が直接被害を受けます。トンネルも場所によっては、土砂流入などの被害を受けるようになっています。そうした状況を踏まえて、どのように対策を進めていこうとお考えですか?
森戸 道路は法面点検などを行い、崩れないようにしていくことが重要であると思います。高規格道路は基本的に大体レベルが高い所に作ってあるので、水に浸かるっていうのは基本的に想定していません。
だから法面対策というのが一つの大きなポイントです。去年7月の豪雨でもNEXCO西日本所管の大分道で土砂崩れが起き、一時的に上下線とも土砂で覆われました。
しかし、4車線であったため、片側の車線を先行して復旧し、早期に対面での交通を確保しております。やはり現在進めている暫定2車線の4車線化というのは一つの重要な対策ツールであると改めて感じました。新直轄で建設した路線の4車線化は、まだ高規格道路が未開通な箇所もあり、なかなか難しい状況ですが、いずれは重要なメニューになっていくであろうと思います。
肥薩おれんじ鉄道の橋を河川拡幅の際に継ぎ足し
想定される水量をいかに流すのか河川全体で考える必要がある
――国道自体は、おっしゃる通りな状況でかなりカチっとしたやつもありますし、今回の球磨川で引堤の話をしましたけれども、やっぱり堤外橋脚をできるだけ避けて、堤内につくる対策を進めている現場も多くあります。やはり直轄でも対策すべき橋梁はまだあるでしょうし、特に直轄以外の県市町村や鉄道などは渡河部において短いスパンで作ってるところが多く、毎回取材していく中で水害が起きたとき国交省の橋の上から鉄道橋や市町村の管理する橋の流れた桁や倒れた橋脚を見ます。未だにパイルイベントの橋も散見されます。先ほど補助の話がありましたけども、このような橋梁についてどのように対策をしていくべきと考えておられるでしょうか
森戸 直轄河川の改修であれば、必要になる橋の架替えや改修は予算上我々の方でやるという原則なので、そうした橋梁は対応できます。例えば、川内川に架かる肥薩おれんじ鉄道の橋は、同河川の拡幅の際に、桁の継ぎ足しを伴う改良を国交省の予算で対応しました。
--河川改修がある場合はそうした対応も可能ですが、それ以外の河積阻害率の高い橋への対応はどうお考えでしょうか。洗堀などにより落橋した橋桁が下流に流れて、下流の橋の橋脚間に引っかかり、それがダム代わりになって土砂をためてしまう。下流の橋は頑丈ですから、橋自体は崩れないのですが、今度は水や土砂が横に溢れてしまう。そして堤を越えて、堤内のアバットの裏側の盛土部を流したり、堤内の田畑や家屋の方に水や土砂が向かうケースも多々見られています。国交省やNEXCOが管理する主要な橋梁は頑丈になりますが、県市町村の橋梁が崩れてしまって、そういうふうにせき止めるっていうような状況も出てきているのでそこら辺どういうふうに考えるべきなのでしょうか
森戸 悩ましい問題です。基本的には桁には落橋防止、橋脚周りには洗堀防止工などを設けるとともに、河積阻害率の高い橋があれば、計画上の流量がきちんと流せるように最終的には橋を架け替えていくしかないと思います。ただ全てのそうした橋に対応することは人員的にもコスト的にも不可能ですから、想定される水量をいかに流すのかを橋梁も含めた河川全体で考えていくしかありません。断面を広げる、河床を掘削する、あるいは遊水池やダムを造るなど、様々な対応できるメニューを、知恵を絞って考えていくしかないのです。
--九州地方整備局管内は古くは雲仙普賢岳の火砕・土石流、最近でも霧島や桜島の噴火活動など、そうした災害が起きかねない活火山を抱えています。また熊本地震では大きな被災を生じています。正月に生じた能登半島地震の記憶も新しいところですが、こうした地震災害の備えとして、道路や河川、港湾といったインフラのハードウェア的な対策、ソフトウェア的な対策をどのように進めているのか教えていただけましたら幸いです
森戸 道路橋については落橋しないだけでなく、早期の復旧が可能な耐震性能を有する耐震補強を完了させる。ネットワーク全体でいえば、ダブルネットワークの充実や4車線化を図っていくということがハードウェア的対策です。
河川や港湾は堤防の強化や耐震強化岸壁を整備し、要は想定地震が来ても壊れない、ちゃんと使えるというふうにする。ハードウェア的には多分これしかないんだろうと思います。
ソフトウェア的には、いざ、事が起こった際の啓開計画をしっかり用意しておくということが何よりも重要です。
半島地域においては、啓開ルート的にB/Cとは別の尺度で考える道路整備も
高盛土対策 耐震対策をニッチ基準で見直す可能性も
――先の能登半島地震では道があまりなかったということも含め大変でした
森戸 熊本地震と能登半島地震の大きな違いは熊本は西を除く全方向から入れましたが、能登は金沢から行くしかなかった状況でした。
九州地方整備局からは七尾の港に1月5日に支援物資を輸送しましたが、港は七尾港しか使える港はない状態でした。国道249号を復旧させるのに自衛隊の艦船を使って重機を荷揚げしたりしていました。
やはり、アクセス路が限られていたのが大きな違いですね。半島地域をこれからどうするのかが一つの課題になると思います。しっかりと準備しておく必要はあります。今回の地震の総括次第ですが、広い道があった方がよかったのではないかという話になれば、啓開ルート的にB/Cとは別の尺度でどこの半島地域においても、大きな道路をつけていく必要があるという話になっていくかもしれません。
――能登半島の幹線道路としては、石川県が管理するのと里山道路がありますが、2007年の地震の際に高盛土の一部が損壊し、補強して直しています。ただ壊れてない箇所は補強してなかったようです。今回はそこが壊れており、橋梁やトンネルだけでなく、土工部においても耐震化する必要を示しているのではないでしょうか
森戸 一理あると思いますが、現実的には全部補強していくというのは無理でしょう。今回、大丈夫な所も全てやり直すとすると膨大な事業量になります。やるに越したことはありませんが、どういう基準で補強をするかしないかの線引きをするかは難しいところがあります。全て補強し直すということは難しいので啓開活動の準備をしていくしかないかな、と。ただ、半島地域で主要幹線道が一つしかないような箇所は盛り土についてもあるいは全部ニッチ基準で見直すなどの可能性はあるのではないでしょうか。その際も道路橋示方書のような高盛土版やのり面版の基準を作る必要が出てくるかもしれません。