Interview

NEXCO西日本 延長 約56kmの新設事業、延長約192kmの区間で拡幅事業進める

2024.06.25

Tag
NEXCO西日本 PC 鋼橋
Share
X Facebook LINE
ボタニカルブラスト® 「使える塗膜」は残しませんか? スクラップ&ビルドからストックマネジメントの時代へ 信頼の‘’人と技術‘’で豊かな人間環境の創造に貢献します

名神の枚方市内に延長3㎞の枚方トンネルを建設

吉野川サンライズ大橋 橋長1.7㎞に達する長大PC連続箱桁

新名神の枚方市内に延長3㎞の枚方トンネルを建設

 ――他に橋梁やトンネルに関しては特殊な工法を採用している場所や厳しい施工を行っているなど特徴的な現場はありませんか

 後藤 近年完成した橋で申し上げますと、まず徳島南部道の吉野川渡河部にかかる吉野川サンライズ大橋があります。橋長1.7㎞に達する長大PC連続箱桁です。本橋は上路式のPC箱桁の桁橋とすることで主塔やケーブルをなくし、干潟に飛来する鳥が上部構造物に激突するリスクを軽減するなど、生態系に配慮した形式を採用しています。また、床版一体型排水溝を採用することで煩雑な排水管を排除し、シンプルな橋梁のフォルムを創出しています。NEXCO四国支社で初めてフライアッシュを用い、塩害に強いエポキシ樹脂被覆PC鋼材やエポキシ樹脂塗装鉄筋、マッチキャストによる施工など様々な技術を用いているなど維持管理にも大きく配慮しています。これらの点が評価され、土木学会田中賞を受賞させていただくとともに、土木学会景観・デザイン委員会デザイン賞もいただきました。

 また、新名神の八幡京田辺JCT~高槻JCT間では、お話しのあったように、東海道新幹線、JR在来線、私鉄、名神高速道路など、重要な施設を横過するため、細心の注意を図りながら工事の安全を最重点に事業を進めています。
トンネルの一例として新名神の枚方市内に延長3㎞の枚方トンネルを建設しています。

 まず八幡京田辺側の東坑口からシールドマシンを発進して、3㎞先の西側坑口に回転立坑があって、戻ってくる形で上下線を掘削する予定です。直径17.6m、機長14.2mのシールドマシンで、重量は約4,200tに達します。シールドマシンを用いたトンネル施工はNEXCO西日本では初となります。


新名神大阪東(枚方TN東坑口)



枚方トンネルに使用するシールドマシン


 施工はこれからです。現在は、発進および回転立坑の躯体の構築や、シールドマシンの仮設備用のヤードの整備、工事ヤード外周の防音壁などの構築を行ってきたところです。本格的に掘り始める前の準備工事を一生懸命やっているといったようなことですね。マシン自体は工場製作を終え、現地での組み立てを進めています。

 ――土被りや土質などに対する配慮は

 後藤 近くには住宅地もありますし、周辺の影響を考慮して、工事中の騒音や振動など、周辺に大きな影響を及ぼさないように細心の注意を払いながら施工することが必要です。さらに、シールドトンネル工事の安全・安心な施工に関するガイドラインが令和3年12月に国土交通省から示されましたので、さらに技術検討会にて施工方法等の検討を重ねつつ、慎重に進めていく必要があります。

 ――施工にまで至ってないけれどもこれから着手する区間、今設計中とかも含めてですね、面白い設計が必要になる箇所とか、松山道の双海橋のような厳しい施工現場になりそうな構造物などについて教えていただければと思います

 後藤 4車線化の事業中区間は、概してトンネルや橋梁といった構造物が多く、設計も施工も厳しめになります。例えば橋梁も、平坦部のスパンが短い橋梁や橋脚高の低い橋梁は少なく、橋脚高が高いものが多く、どこも難しいと感じます。

わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です! 超厚膜無溶剤系セラミックエポキシ樹脂塗料『Brushable-S』 近接目視点検 非破壊検査 おまかせください

松山道の4車線化は土工部の地すべり対策と並行して構造物を施工

印南IC~南紀田辺IC間で6本のトンネルを予定

 ――これから4車線化する箇所を見ると記者が平成20年代ぐらいに取材した東九州道の大分~大分・宮崎県境~延岡区間もありますね。ここはハイピアの橋脚を建設せねばならない橋梁や長大トンネルを有しています

 後藤 橋脚やトンネルもそうですが、切土やのり面など、大規模な土工工事を行わなくてはいけない箇所もあります。本当に難しいと考えています。

 ――本部長もお話しされましたが、土工が大変な個所もあります。愛媛工事事務所管内では、双海橋など橋梁がクローズアップされていますが、同橋やトンネルの中間部では土質も悪くすさまじい量の土留めアンカーを打ち地滑り対策を行わなくてはいけない箇所もありますよね

 後藤 そうです。松山道の現在進めている4車線化は土工部の地すべり対策もやりつつ構造物を施工しなくてはいけません。供用中の路線も近接しており、大変厳しい環境下での施工となっています。また阪和道は印南までは4車線化が完了していますが、その先の南紀田辺まで現在4車線化を鋭意進めています。
 同区間は建設すべきトンネルが6本もあります。

 ――そんなにあるのですか

 後藤 同4車線化は印南IC~みなべIC、みなべIC~南紀田辺ICまでの2区間の4車線化を行うわけですが、トンネルは印南IC~みなべIC間で4本、みなべIC~南紀田辺IC間で2本あります。その中にある高田山トンネルはⅠ期線のときも、土質が悪く掘るのが大変でした。今回の4車線化も専門家の意見を聞きながら、施工検討を実施しています。とりわけ4車線化のためのⅡ期線は、供用中のⅠ期線に影響がないように掘り進める必要があります。

 ――橋梁についていうと昔波型鋼板ウェブで作った個所があります。新名神でも東九州道でも波型鋼板ウェブで作った橋梁がありますが、そうした箇所は三井住友建設と共同特許を取得しているバタフライウェブに差し替える方向性なのでしょうか

 後藤 一律に変えることはしません。何が最適かはその都度場所によって決めます。

 ――三井住友建設と共同特許を有しているデュラスラブやデュラブリッジもそれぞれ賞を取っています。バタフライウェブも東九州道の寺迫ちょうちょ大橋で土木学会田中賞を受賞しています

 後藤 確かに特徴のある工法であり、実績も上がっていますが、バタフライウェブもまだ実績は10橋に至っていませんし、デュラスラブやデュラブリッジもそれぞれ1橋しか実績がありません。まだまだこれから、課題なども洗い出して、今後の適用を検討する必要があると思います。

書類の簡素化、適正な工期設定、週休2日制の導入などを行うことが重要

一方で、技術者が生の現場を見て、触れることも大切

 ――新設における新技術や新工法、コスト縮減策について、DXの活用による改善事例などについて教えてください

 後藤 DXにも関連した話しとして、建設業の2024年問題に対応して施工業者の負担軽減に資するべく、書類の簡素化、適正な工期設定、週休2日制の導入などを行うことは本当に重要です。

 また、施工管理の効率化や、さらには工事発注前に我々発注者として準備すべき設計図書の精度向上などもしっかりやることが大事であり、これらはこれまでも取り組んできましたが、さらに働き方改革と工事円滑化に向けての取り組みを進めることとしています。昨年来、日建連をはじめ業界団体の皆様とも精力的に協議や調整させていただきながら、その取りまとめを今年の3月に公表させていただきました。これは当社だけではなく、NEXCO3社一体としての取り組みとなっています。その一環として、遠隔臨場などDXもうまく活用しながら、受発注者の両方の負担軽減に資する、かつ生産性向上を図ることのできる取り組みに努めていきます。

 負担軽減によって時間の余裕が生まれれば、発注者も受注者も生み出した時間を他の業務に充てたり、又は時間外労働の短縮に充てることなどにつなげられることになろうかと思います。

 ただ一方で、遠隔臨場だけに頼ってしまうのも良くありません。カメラのモニター越しではなく、技術者が生の現場を見て、触れることにより、技術力の向上や、先輩から後輩への技術の継承は行われますので、そうしたバランスも大変重要です。

pageTop