南部国道事務所 小禄道路が最盛期、上下部工の施工が進む
概要動画Overview Video
内閣府沖縄総合事務局南部国道事務所は、国道58号をはじめとした6つの路線(他、国道329、330、331、332、506号)の合計約169kmを管理している。また、那覇空港自動車道や沖縄西海岸道路、現在、整備の最盛期を迎えている小禄道路をはじめとした高規格道路5事業、南風原バイパスなどを含む、2次改築6事業の整備を進めている。橋梁の架設や、設計の進捗状況、沖縄ならではの新設・保全両面における塩害やASRへの対応、南風原高架橋のアーチ部耐震補強なども含め、松澤尚利所長に聞いた。(井手迫瑞樹)

豊見城東道路 コンクリート床版工事を施工中
管内に県内人口の8割が集中
国道6路線の約169kmを管理
――管内の地勢的特徴と道路の整備方針および構造物の整備の考え方について
松澤所長 沖縄本島の中南部(16市町村)に(県内)全人口の8割(147万人)が集中しています。そのため、交通量も多く、那覇都市圏では渋滞が深刻な課題(全国主要都市の中でもワーストクラス)となっています。また、台風が多く高温多湿な沖縄では、災害への備えや、復旧対応、塩害への備えなど道路の維持管理にも工夫が求められています。こうした課題に対応するため、南部国道事務所では、国道58号をはじめとした6つの路線(他、国道329、330、331、332、506号)の合計約169kmを管理しています。
さらに、那覇空港自動車道や沖縄西海岸道路、現在、整備の最盛期を迎えている小禄道路をはじめとした高規格道路5事業、南風原バイパスなどを含む、2次改築6事業の整備を進めています。これからも地域の皆様の暮らしを支える道路ネットワークの整備と、安全、安心な道路管理に努めてまいります。

2環状7放射道路の整備 / 広域道路ネットワーク計画
小禄道路 夜間規制しながら自走多軸台車などで桁架設
橋梁区間が約2km、トンネル区間が約1km
――進捗中の事業路線の目的と概要、現況をお答えください
松澤 那覇空港自動車道は、那覇空港へのアクセス向上、空港周辺の渋滞緩和を目的として、小禄道路(那覇市鏡水~豊見城市名嘉地、5.7km)と豊見城東道路(豊見城市名嘉地~南風原町山川、6.2km)の事業を所管しています。

小禄道路と豊見城東道路
小禄道路の事業進捗率は、事業費ベースで約76%となっています。橋梁区間が約2km(34%)、トンネル区間が約1km(17%)と構造物比率が約51%を占めています。
現在は那覇空港周辺や国道331号小禄バイパス沿線の改良工事、瀬長IC(仮称)~豊見城・名嘉地IC間の橋梁上下部工などを推進しています。
――小禄道路は桁架設も進んでいますか
松澤 着実に進捗しています。トラッククレーン+ベント架設もあれば、自走多軸台車を使った架設などもあり、瀬長交差点付近から架設が着々と進んでおります。瀬長交差点から東側の名嘉地交差点間の一部区間では、基礎工及び下部工を施工している箇所もあります。
両側に交通量の多い現道(国道331号)や県道などとの交差道路があり、切り回しながら施工する必要があるため、極めて高度な施工技術が求められる道路事業といえます。

小禄高架橋の基礎工施工状況

小禄高架橋の上部工施工状況

小禄高架橋上部工の進捗状況(井手迫瑞樹撮影 2025年7月)


下部工施工時の小禄道路(井手迫瑞樹撮影 2023年8月)
――車線規制はどのように行っていますか
松澤 昼間は基本的に1車線規制のもとで施工しています。夜間架設を行う場合は、それに伴い通行止めも含む規制を実施したうえで施工しています。
豊見城東道路 コンクリート床版工事を施工中
完成すれば名護から那覇空港が直結する
――豊見城東道路は
松澤 同道路事業の進捗状況は、事業費ベースで約99%とほぼ完了しています。橋梁区間が3.2km(51%)、トンネル区間が1.4km(23%)と構造物比率は約74%を占めています。
既に全線が4車線開通済みですが、現在、小禄道路との接続部でコンクリート床版の工事を実施しています。

豊見城東道路 小禄道路との接続部でコンクリート床版の工事を実施
小禄道路と豊見城東道路が最終的には一体化されますが、小禄道路は現在、最盛期を迎えている状況ですので、最終的には小禄道路と共に一体的な開通を目指します。
この那覇空港自動車道が整備されることにより、沖縄自動車道と一体化することで、名護(許田IC)~那覇空港(那覇空港IC)までの間が慢性的な渋滞状況にある那覇市街地を通過することなく結ばれ、高速性、定時性が確保されます。その効果により、沖縄の中部や北部の観光産業の振興につながり、また、物流効率化などの地域活性化が期待されます。
沖縄西海岸道路 浦添北道路Ⅱ期線の工事が進捗
那覇北道路は設計が進む、宜野湾道路が新規事業化
――次に沖縄西海岸道路について
松澤 沖縄本島中部から南部までの湾岸部を通り、那覇空港や那覇港といった拠点を相互に連絡する道路で延長は約50kmです。現在は浦添北道路Ⅱ期線(宜野湾市宇地泊~浦添市港川、2.0km)、那覇北道路(那覇市港町~若狭、2.2km)の事業を推進しています。

沖縄西海岸道路
浦添北道路Ⅱ期線は、平成29年度に暫定2車線で開通した、浦添北道路の6車線化を行う事業で、既に開通済みのⅠ期線に並行して、海側に隣接するⅡ期線を整備していく計画です。事業進捗率は事業費ベースで約17%です。橋梁区間が1.1kmで構造物比率は約56%に達します。

浦添北道路Ⅱ期線
那覇北道路は、ほぼ全線が橋梁区間(約2.18km)となっており、構造物比率は約99%と極めて高くなっています。現在は設計協議中で工事は未着手です。
また、別途港湾事業(那覇港湾・空港整備事務所所管)で整備を進めている区間(臨港道路若狭港町線)もあり、港湾事業における橋梁延長も約1.1kmに達します。
さらに今年度は宜野湾道路が新規事業化されました。現道の国道58号と宜野湾バイパス上に高架橋整備を行う事業です。事業延長は約5.8kmでほとんどが4車線の高架構造です。5.8km中、南側の約3.8km区間を優先して施工する予定です。北側2kmの区間は、キャンプ瑞慶覧の返還が前提となる国道58号北谷拡幅事業の進捗に応じて施工していく予定です。現在は南側区間において測量、地質調査を進めています。

宜野湾道路
宜野湾道路 国道58号を切り回しながらの施工が必要
直下の国道58号と宜野湾バイパスの日平均交通量は約5万台
――宜野湾道路はどこに高架橋の下部工を設置するのですか
松澤 国道58号および宜野湾バイパスの上下線の中央分離帯に橋脚を建て込み、上部工架設を行っていくものです。
――中央部ですか、ただでさえ交通量の激しい国道58号を切り回しながらの施工は、非常に難しいですね。記者には現在NEXCO西日本が施工している佐世保高架橋が浮かびます
松澤 施工に際しては、少なくとも夜間車線規制は伴うことになろうかと思います。現在整備中の小禄道路も、必要な場合は事前に周知して施工時の車線規制を行っています。沖縄県内はこうした道路工事に関する理解は高く、迂回のご協力などもいただいており、著しい渋滞は確認されておりません。

宜野湾道路 大山北(左2枚)および南IC付近の空撮(右写真)

同 宇地泊IC付近の空撮

同 大山南IC付近
――施工地周辺の交通量は
松澤 国道58号と宜野湾バイパスが各約5万台ずつ走っている重交通路線です。
――かなりの重交通ですね
松澤 先ほど申し上げました通り、国道58号北谷拡幅事業で、米軍基地側(返還予定のキャンプ瑞慶覧)を拡幅する予定で、拡幅後に、中央分離帯に橋脚を建て込んでいきますので、少し広げた後で工事が展開されていく形になります。
――地盤はどうでしょうか
松澤 今年度、地質と路線測量を行う予定です。その結果で基礎形式が決まっていきます。
――上部工の橋種は施工のしやすさを考慮するとやはりメタルですか
松澤 橋種については今後の設計で決めていきますので、現在は未定ですが、今後の設計により適切な橋種を選定してまいります。
この沖縄西海岸道路が整備されることにより、沖縄本島中部から南部間の観光の振興、地域の活性化、地域振興プロジェクトの支援が期待されます。
――その他、建設にあたっての懸念事項は
松澤 1つは米軍基地が近接しているため、様々な折衝が必要になるところが、沖縄県外と異なる重要な特徴です。次いで、海沿いを走るため塩害対策が必要になってきます。






