Interview

南部国道事務所 小禄道路が最盛期、上下部工の施工が進む   

2025.12.16

沖縄西海岸道路の設計が進捗 さらに宜野湾道路も事業化

Tag
沖縄総合事務局
Share
X Facebook LINE
インフラを技術で守る 超厚膜無溶剤系セラミックエポキシ樹脂塗料『Brushable-S』 全てのコンクリート構造物の調査・診断・補強・補修に関する総合エンジニア

南風原高架橋 景観に配慮した耐震補強を追求

南風原高架橋 景観に配慮した耐震補強を追求

耐震補強の未対策は13橋、4橋は設計済み

 ――南風原高架橋は、景観性に優れた構造物として土木学会田中賞や同デザイン賞も受賞していますが、耐震補強のコンセプトは

 松澤 景観を考慮し、鋼板や炭素繊維シートのトップコート色をコンクリートアーチと同色に近づけるなど、さまざまに配慮しています。現在は工事中ですので、足場などが存在しますが、工事が終われば、補強前後の景観はほとんど変わらない状況になると考えています。

 ――耐震補強未対策橋梁の設計進捗状況は

 松澤 未対策橋はRC(5橋)、PC(2橋)、鋼橋(6橋)となっていますが、4橋は設計済み(RC:2橋、鋼橋:2橋)となっています。(内訳は、ゆがふ橋(下り)、ゆがふ橋(上り)、我如古橋(下り)、我如古橋(上り)、鏡原高架橋、新牧港橋(下り)、新牧港橋(上り)、西原高架橋(下り)、西原高架橋(上り)、南風原アーチ橋(下り)、南風原アーチ橋(上り)、漫湖高架橋(下り)、漫湖高架橋(上り))


未対策橋は残り13橋

コンクリートを”はつる” 橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 各種コンクリート試験 構造物の調査・診断 カーボンニュートラル

橋梁の健全度Ⅲは4橋のみ 塗替えは牧港高架橋や宮城高架橋で実施

浦添大橋上部工で遅れ脆性破壊を起こしたボルトを交換

 ――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況についてお答えください。また具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです。

 松澤 橋梁の修繕については、点検要領に基づいて健全度Ⅲを優先的に行っています。現時点では健全度Ⅲの橋梁4橋のうち、1橋については補修が完了しています。残り3橋については、2025年度に1橋、26年度に1橋、28年度までに完了する予定となっています。

 コンクリート橋については過去に塩害による床版鉄筋の腐食、床版コンクリートのひび割れがあり、床版打ち替え工を国道58号泊高橋で行っております。2011年に部分床版打ち替え(補修)を実施しておりますが、規模は約4.8㎡という小規模なもので、施工は、既設床版取り壊しを行い、既設鉄筋を取替え、超速硬コンクリートを打設・養生後、橋面防水層を施し舗装復旧を行いました。

 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と、2025、26年度の施工計画について、また鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査および要補強対策工について該当橋をお答えください。また、コンクリート桁・床版部においてどのような損傷がでているか教えてください。
 加えて管理する橋梁における床版防水の施工状況(コンクリート床版を有する全橋梁に占める施工済み割合などが分かれば)、今後の施工方針、採用する工法などを教えていただけましたら幸いです。

 松澤 最近の実績では、2022年度に塗装劣化による塗装塗替え工事を国道58号牧港高架橋(下りおよび上り線のうちA1~P1間)の5,620㎡、国道506号宮城高架橋(P9~P11)6,389㎡で実施しました。25年度は国道330号浦添大橋の上部工で、遅れ脆性破壊を生じていたF11T高力ボルトの取替と添接部の塗装(127.8㎡)を実施しています。


国道58号浦添大橋(上下線の)ボルトの脆性破壊と思われるボルトの脱落


 コンクリート床版における防水工の実施状況の把握はできていませんが、現時点で防水工の施工予定はありません。今後は床版からの漏水があった場合に、調査を行った上で、防水工の検討を行っていきます。

 ――鉛やPCBを含む既設塗膜の除去はどのような方法を用いていますか

 松澤 基本的には飛散防止を図りながら、塗膜剥離剤を使用して除去しています。除去された塗膜は沖縄県内での処分ができないため、県外の処分場に輸送して処理しています。

 ――塩分除去のための水洗いや、レーザーブラストなどの新技術の適用は検討されていませんか

 松澤 既設塗膜を塗膜剥離剤で除去し1・2種ケレンを施工しているため、沖縄地区鋼橋防食マニュアル(平成31年3月)に基づき水洗いは実施していません。

 素地調整での新技術活用の検討について、レーザーブラストは騒音や除塩程度、表面粗さからするとブラストより優れる大変優位な工法と認識していますが、従来技術と比較して機材や作業員(有資格者)輸送、施工速度の問題などから採用実績はございません。ただし、今後、県内での手配などが容易になった際には活用を検討する必要があると考えています。

 ――耐候性鋼材を使用した橋梁は管内にありますか

 松澤 管内にはありません。

 ――支承取り換えや、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について2025年、2026年度の施工予定箇所数と取替える際の工法・種類をお答えください

 松澤 支承、ジョイント取替とも予定はありません。

コンクリートを”はつる” 橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 各種コンクリート試験 構造物の調査・診断 カーボンニュートラル

ボルト周りの腐食抑制のため試験施工を実施

コンクリート橋の点検支援技術として「RANS-μ」を試験採用

 ――塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化の有無。劣化があればどのような形で出ているか(劣化部位やその劣化程度、面積)、またその対策工法などを具体的な橋梁などを挙げてお答えください。

 松澤 鋼・コンクリートの橋種を問わず、塩害由来の損傷が生じています。

 鋼橋については、例えば国道58号牧港高架橋(下り線)では、主桁や横桁などに塩害が要因とみられる防食機能劣化や腐食が生じていました。

 また、添接のボルト周りも損傷が生じやすく、新たな対策検討として、浦添大橋などボルトの防食対策として「BBキャップ」、「シェルポンズ」などの試験施工を行い、経過観察を始める予定です。BBキャップ、シェルポンズについては、既に試験施工を行っており、他の技術についても順次試験施工を行う予定です。


浦添大橋でのシェルポンズ試験施工状況

若狭高架橋で試験施工されたBBキャップ


 コンクリート橋では、主桁、床版および橋脚部で塩害やASRによる劣化が生じています。以前、国道331号山下垣花高架橋ランプ部では、張出床版および橋脚でASRによるひび割れが確認されたため、水の進入防止を目的として、はく離・鉄筋露出を断面修復(約39㎡)および表面保護工(約226㎡)、橋脚のひび割れ部への注入工(約25m)により修繕を行いました。表面保護工は表面被覆工のシート工法(超薄膜スケルトンはく落防災コーティング)を採用しています。

 管内における塩害による劣化が生じる可能性があるコンクリート橋は221橋(PC橋111橋、RC橋64橋、鋼桁コンクリート床版46橋)があり、そのうち、今年度は44橋で点検を予定しています。点検では一部の橋梁で、中性子とガンマ線を用いてコンクリート構造物中の塩分を非破壊で計測できる「RANS-μ(ラウンズ マイクロ)」などの点検支援技術も活用し、定期点検の高度化、効率化を推進していきたいと考えています。


RANS-μの実施状況(国道58号の比謝橋)


 ――RANS-μを使用した橋は具体的にどこですか

 松澤 国道58号の比謝橋です。下部工の橋台前面と床版下面で使用しました。今後も使用を検討していきたいと考えております。

コンクリートを”はつる” 橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 各種コンクリート試験 構造物の調査・診断 カーボンニュートラル

法面・自然斜面の要対策工は残り6箇所

地下埋設物対策も「沖縄県地下占用物連絡会議」で情報共有を図る

 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください

 松澤 法面や斜面の予防保全については、早期に変状を把握することによって、適切な対策を取ることが重要と考えています。年に1回の頻度で点検を実施し、地震や豪雨などが生じれば巡回し、変状が予想される箇所の目視点検を重点的に行っています。

 法面、斜面、盛土などの点検箇所は管内には85箇所あり、要対策箇所は11箇所で、その内6箇所が未対策となっています。

 ――法面の未対策6箇所の今後の対策の進め方、予想コスト、地質状況を教えていただけましたらと存じます

 松澤 未対策箇は中城村1、浦添市1、南城市4箇所です。3箇所で既に設計が完了しています。スパンは1か所あたり約180~280m程度で、対策費用は10~30百万円程度を見込んでいます。残り3箇所も今後設計を進めていきます。

 また、地質状況は島尻泥岩(中城村1、浦添市1、南城市3)及び琉球石灰岩(南城市1)となっております。

 ――地下埋設物、とりわけ下水道の水管劣化を起因とした道路陥没が全国で生じているが、管内の点検状況と維持管理状況を定量的にお答えください。また、1.5~2m程度の深さであれば電磁波レーダーによる点検は十分行えますが、それより深い箇所はどのように点検、維持管理していくのでしょうか。管内の取り組みを教えてください。

 松澤 管内の路面空洞化探査については、2015年度から計画的に調査を行っており、24年度には第二次調査(20~24年度)が終了しました。引き続き今年度以降も調査を実施していきます。

 深さ2m以上の探査については、電磁波レーダーによる調査ができません。調査方法に技術的課題があると認識しています。

 25年4月30日には「第1回沖縄県地下占用物連絡会議」を開催しました。各道路管理者と地下占用事業者の点検結果、点検計画などを相互に情報共有を行っていくことで統一認識を図ったところです。

 また、第二回では点検の進捗状況を確認しました。

――第二回では、沖縄総合事務局が管理する国道で198箇所の空洞が見つかったとの報道がなされました。南部国道管内の数量と、今後の対策の進め方について教えてください

 松澤 南部国道事務所管内における空洞確認箇所数は186箇所となります。ただし、陥没の可能性が高く緊急性がある箇所については既に修繕済みですので、引き続き修繕などの措置の優先度が高いと判断した箇所について速やかに修繕などの措置を実施していく予定です。

 ――また、2m以上の深さにある空洞調査について、どのようなものを考えていますか

 松澤 個人的な意見なのですが、宇宙線ミュー粒子(電子に似た素粒子、ミューオン)を発生する装置を船ドローンに搭載し、地下埋設の水管の中に浮かべて走らせることで、下水管越しに地盤空洞を見つけるという手法が最適なのではないかと考えています。

(参考https://www.cgr.mlit.go.jp/ctc/pdf-document-years/2019/tottori_09.pdf

 また、同様に船型ドローンにカメラを付けて、下水管に孔が生じていないかという技術も模索していました。この2つが適用できれば、画像により穴が開いている箇所を確認でき、ミューオンにより、空洞位置を確認することができます。ミューオン技術は名古屋大学や山梨大学などが研究しております。

 ――NETIS登録技術、コスト縮減策または独自の新技術・新材料などの活用について

 松澤 新技術については、舗装点検で車載カメラによる舗装劣化状況を確認、橋梁点検で近接目視が困難な箇所をドローン活用するなど、業務の効率化・コスト縮減を図っています。

 舗装点検用車載カメラはPA010013-V0022、橋梁点検用ドローンはBR010009-V0424を用いています。また、先ほど紹介したRANS-μについても活用を検討していきます。

 ――橋梁の架替や大規模修繕、トンネルの点検状況、トンネルやのり面について橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください。また県や市からの点検・修繕代行の事例があれば詳しく言及してください

 松澤 橋梁の架替えや大規模修繕の計画は今のところありません。トンネルにつきましては、「トンネル個別施設計画」により、定期点検計画、メンテナンスサイクルと、基本的な考え方などを定め、トンネルの適切な維持管理に努めています。

――付言して、今後の管内事業への意気込みについて

 松澤 一番は小禄道路です。同道路事業が完成すれば、那覇空港から名護が1本に結ばれることになるので、早期開通を目指し工事を進めていきます。沖縄西海岸道路についても、事業の進捗を加速させていきます。維持管理については、台風や豪雨に備えて万全の体制を構築していきたいと考えています。とりわけ沖縄の河川は遅いところでも1時間もすれば、河川から海に水が到達します。台風や豪雨と満潮が重なれば、一部の地域では冠水は避けられないとも思います。そうしたところに人が入らない、といったソフトウェア的な対策も今後ますます重要になっていくと考えています。

 ――ありがとうございました

 ※この記事は令和7年7月24日にインタビューした内容を加筆修正しました

コンクリートを”はつる” 橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 各種コンクリート試験 構造物の調査・診断 カーボンニュートラル

pageTop