Interview

金沢河川国道 一層の線形改良行いつつ、復旧工事進む

2025.12.23

能登大橋は2期線側に新橋を架設

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>五十川 泰史氏

国土交通省
北陸地方整備局
金沢河川国道事務所
所長

五十川 泰史

 国土交通省北陸地方整備局金沢河川国道事務所は、2024年元日の大地震で被災した能登半島の道路網のうち、のと里山海道の徳田大津~穴水までの区間と七尾市に伸びる能越道の(仮称)病院西ICまでの区間の災害復旧を権限代行により進めている。特に徳田大津~穴水間は被害が甚大で、2期線側用地の活用や、仮橋の設置などあらゆる手段を活用し、同年7月17日には能登大橋区間を除き、対面2車線を確保、9月10日には能登大橋区間も含めた対面2車線の仮復旧を成し遂げた。しかし、現状はまだまだ線形も勾配も急な箇所が多く、その解消を成すべく工事を進めている。とりわけ、能登大橋においては、1期線南側のA1橋台背面盛土部や、橋台部の損傷が激しいことから、2期線側に迂回路橋の建設を進めている。それらの内容について、五十川泰史所長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

斜め格子 たわみ計測 橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 陥没対策に最適 充填工法の切り札

純粋に原形復旧でいいのか?

県と国でのと里山海道を啓開

全区間で対面通行可能となったのは発災後9カ月余りの9月10日

 ――金沢河川国道事務所の能登復興への取り組みについて、その状況から教えて下さい

 五十川所長 2024年元日の地震発生以降、権限代行ということで、県に代わって災害復旧事業を実施してきているという中で、同年2月に設置された能登復興事務所と災害復旧事業を分担しています。

 金沢河川国道事務所で実施しているところは、のと里山海道の穴水IC~徳田大津JCT、そこから七尾方面に伸びる、国道470号能越自動車道と国道249号の(仮称)病院西IC予定地までの約38kmの区間となっています。

 輪島道路は、のと三井IC~のと里山空港IC間が2023年9月に開通し、穴水道路の穴水ICまでと合わせて金沢河川国道事務所で管理をしています。管理は引き続き金沢河川国道事務所が行っていますが。穴水道路以北の復旧とその先の改築は、能登復興事務所で行っています。

 2024年1月1日に被災して、1月18日には、災害協定に基づき日本建設業連合会の協力を頂き、輪島道路の区間(のと三井IC~のと里山空港IC)を片側1車線で暫定的に復旧供用させました。それから順次、被災の状況に応じて、通行できる区間を伸ばしていきました。県からの権限代行は1月23日から始まったのですが、この時には、のと里山海道の一部を国の方で啓開していくこととなり、県と国でのと里山海道を啓開していきました。徳田大津IC以北について、3月15日には北向きの一方通行で通れるようにし、さらに、一部を除く対面通行を確保したのは7月17日のことでした。その「一部」に該当するのが能登大橋付近でした。能登大橋の南側のA1橋台背面の盛土が大きく沈下しており、同箇所を応急復旧して、全区間で対面通行可能となったのは、さらに2ヶ月後の9月10日のことでした。

 通行可能となったとはいえ、これは応急対応であり、かなり急カーブ、急勾配が残っている状況であり、降雪期にはスリップやスタックが発生する懸念があったことから、この状況をできるだけ改善しようということで、2024年12月まで線形改良工事に努めました。


急カーブ改善事例

斜め格子 たわみ計測 ICT技術と共に STKネット 中央分離帯転落防止網

横田ICの北側の11.1kmポイント付近では、道路の取付場所を改善

2期線側の用地を使っている箇所も

 ――どの程度の勾配、曲率半径に抑えようとか、そういう目標はあったのですか

 五十川 数字的に表すのは難しいですが、それぞれの現場の状況に応じて、急ハンドルを切らなければいけないカーブを緩やかにし、落ち込んでいる(縦断の急勾配箇所など)所では、舗装を嵩増しするなどして、できるだけ平面・縦断線形を緩和することを行っていきました。施工は、現場の状況に即して現場合わせでという状況でありましたが、例えば、横田ICの北側の11.1kmポイント付近では、道路の取付場所を改善することによって、勾配も線形も改善できていることが、通行者の皆様にも実感頂けていたのではないかと考えております。


横田ICの北側の11.1kmポイント付近の改善事例


 ――道路線形の改良については2期線側の用地も活用したということですね

 五十川 1期線が崩れた箇所においては、2期線側の用地を使っている箇所もあります。また、4車線化されていた所に関しては、崩れていても一部が残存し、そこを活用して早期の通行確保に役立てることができました。


Ⅱ期線側の用地を活用して線形を改良した事例①

斜め格子 たわみ計測 ICT技術と共に STKネット 中央分離帯転落防止網

純粋に原形復旧でいいのか?

当面は2期線側に切土などを構築して線形を振りながら、再構築

 ――のと里山海道の本復旧に当たっては、補強盛土だけでなく、集水地形を飛ばすためのカルバートや単径間の橋梁等で弱点となる部分を飛ばすということは考えないのでしょうか

 五十川 私どもが実施するのは災害復旧事業なので、原形復旧が基本です。ただ、平成19年の地震で被災し、それを耐震化して直したところは今回の地震での被害は少ない状況でしたが、今回の地震ではさらに強いエネルギーであったので、平成19年の地震時には踏ん張った所が、今回の地震では踏ん張りきれなくて被災したというのが実情としてあります。

 それを考えると、純粋に原形復旧でいいのかというのは、平成19年の復旧に携わった金沢工業大学の川村先生が委員長を務めておられる道路復旧技術検討委員会の中でも、論点となりました。復旧のためには既存盛土の壊れた土砂を取り除かなければならず、取り除くときに、その間を通行止めできれば良いのですが、復旧復興の要となる幹線道路ですので、長期間の通行止めはできないため、当面は2期線側に切土などを構築して線形を振って、交通を逃がしながら、崩れた1期線の土砂を除去して、除去した箇所に補強盛土を再構築していきます。箇所によっては、鋼矢板を打設しながら施工しなければならない箇所もあります。

 本復旧においては、2期線側に振った線形を1期線の方に戻すパターンと、2期線側に逃がしたままにするパターンが出てきます。2期線に振った平面線形で道路としての安全性、供用性が確保できれば、1期線にわざわざ戻す必要はないわけです。また、4車線化が完了している区間では、残存した部分も盛土構造として脆弱な箇所はしっかり強固にして再度構築することで、構造としての安全性を確保しようと考えています。


Ⅱ期線側の用地を活用して線形を改良した事例②


 橋梁やカルバートで飛ばすことは設計や施工に時間を要することもあり、基本的には盛土の再構築で対応できると考えています。

斜め格子 たわみ計測 ICT技術と共に STKネット 中央分離帯転落防止網

盛土部 締固め率は90%以上に

橋台背面に踏掛け版を取り付けられる受け台がない

 ――基本的には崩れてしまった箇所に関しては、段切りして、地下排水し、補強土を立上げて、盛土を構築していくということですね

 五十川 はい。締固め率は90%以上にして、非常に強度の高い盛土を構築します。

 ――能登大橋以外の橋梁の損傷について、どのようにお考えでしょうか。橋台背面に段差が生じている箇所がかなり見受けられましたが、どのようなやり方で段差防止工を施工していくのでしょうか

 五十川 能登大橋では、南側で大きな段差が生じましたが、他の橋梁につきましては、幸いなことに大きな損傷はなかったということと、橋台背面との段差が多少生じたもののそれほど大きなものは発生してないという認識です。新たに踏掛け版を設置する検討も行っていますが、のと里山海道の各橋梁はいずれも竣工年が古く、橋台背面に踏掛け版を取り付けられる受け台がないため、受け台から構築する必要があることから、施工に時間かかり、その間に通行規制もしなければならないことを考えると、急カーブの解消など線形の改良が優先と考えています。


能登大橋の被災状況

斜め格子 たわみ計測 ICT技術と共に STKネット 中央分離帯転落防止網

「可撓性踏掛け版」の設置も検討

本復旧へと状況が進む中で、段差防止の対策も施工

 ――そこには現在の道路橋示方書に従えば、踏掛け版までいかなくても、何らかの段差防止工は必要になると思いますが、どのようなものを使いますか。

 五十川 今回の地震で段差が生じた橋梁については、再度災害防止の観点から、橋台背面の盛土材流出による沈下を防止する対策として、ウイングの側面に鋼矢板等の土留め壁を打設することを検討しています。加えて、損傷したとしても変状に追従して急激な段差を抑制し速やかに通行機能が確保できる「可撓性踏掛け版」の設置も検討しています。受け台の構築を要せず、また、最小限の通行規制で設置できる可能性があると考えています。今後は、本復旧へと状況が進む中で、段差防止の対策も施工していければという問題意識を持っています。


「可撓性踏掛け版」の設置状況


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