Interview

金沢河川国道 一層の線形改良行いつつ、復旧工事進む

2025.12.23

能登大橋は2期線側に新橋を架設

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再構築しないと恒久的には使えない 2期線側に新しい迂回路橋をつくる

能登大橋南側のA1橋台の背面盛土が崩れる

H形鋼による抑止杭や地盤改良で補強

 ――次は能登大橋の損傷状況と今後の対策について教えて下さい。地震後の2024年5月に取材した時も、南側A1橋台背面の崩壊だけでなく、ゲルバーヒンジ部の点検も非常に念入りに行っていましたが、南側のA1橋台が非常に大きく壊れていたのにはびっくりしました。大きなひび割れが生じ、機能を維持するために添え木のように縦横にH形鋼を繋ぎ、さらにA1側の上りラインの方の側面に鋼管杭を付けて、復旧した背面盛土を流失せないような大掛かりな応急補修を行っていましたが、最初に盛土が崩れた時から応急補修が完了するまでの経過について教えて下さい。また、今後2期線側に新たなPC橋を架けようとしていますが、製作する時のコンセプトについて教えて下さい

 五十川 南側のA1橋台背面の盛土が大きく崩れ、その影響もあったのかA1橋台の竪壁が大きく亀裂損傷し、応急対応で何とか通しています。平成19年の地震後は、H形鋼による抑止杭や地盤改良で補強したのですが、沢地形が複雑に入り組んだ集水地形であったため再度被災したのだろうと思います。


ほぼ重なる崩落個所

地震後のゲルバーヒンジ部の点検状況


 対面通行の復旧が9月までかかったのは、この橋台背面部の損傷が大きかったのが一番の要因です。

 苦労というと、できるだけ早く北向き1車線通行を確保するため、A1橋台の損傷状況を踏まえて、A1橋台の背面に発泡ウレタンによる軽量盛土を使って、かなりの急勾配ですが北向き1車線を確保しました。対面通行の確保に当たっては、一度、西側に線形を振って、鋼管杭を打ち込み、発泡ウレタンによる軽量盛土を積み増しすることで、対面通行可能な幅員を確保しました。交通を通しながらの施工ですので大変でしたが、施工者の方に頑張っていただき、対面通行を確保することができました。


発泡ウレタンの施工状況と鋼管杭の施工状況

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施工ヤードを確保するために、発泡ウレタンの軽量盛土を構築

再構築しないと恒久的には使えない 2期線側に新しい迂回路橋をつくる

 ――あの状況で鋼管杭を打ち込むのは大変だったと思います、機材を持ってくるだけでも一苦労だったことは想像に余りあります

 五十川 施工ヤードを確保するために、発泡ウレタンの軽量盛土を構築して交通を少し西側に迂回させた後、できたスペースに施工ヤードを確保し、狭い現場状況であったためジャイロプレス工法を用いて鋼管杭を打設し、さらに軽量盛土を構築して、対面通行ができるようになりました。


A1橋台背面の鋼管杭による補強


 施工は鹿島建設が担当しました。非常に頑張って頂きました。

 ――ただ、A1橋台がこれだけやられていますから恒久的には使えませんね

 五十川 仰る通りです。

 橋台が大きく壊れているので、再構築しないと恒久的には使えません。しかし、ここを供用しながら架け替えることは、できません。仮橋による迂回も検討しましたが、コスト及び復旧スピードを比較した結果、2期線側に新しい迂回路橋をつくって、そちらに交通を移した方が良いと判断しました。


(上)A1橋台の竪壁部には大きく不可ひび割れが生じH鋼で補強しながら通している。
(下)支承もアングル材で補強した簡易なもので通している状況
(いずれも井手迫瑞樹撮影)

2期線側にう回路橋をつくる予定で、まず工事用道路の構築を進める(井手迫瑞樹撮影)


 ――現橋ですが、今L2地震が生じた時、この橋は持ちますか

 五十川 L2が生じた際は、本橋は兎も角、A1橋台はもたないと考えています。本橋は耐震補強が実施されており、落橋するおそれは低いと考えていますが、A1橋台が再び損傷を受け、使えなくなる可能性が高いと言えます。

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生コンのプラントを新しく造ることも、状況を見て選択肢

 ――2期線側に新しい橋をつくる時に、A1橋台部分は重なる形で地盤が弱いと思いますが、位置をセットバックしないのですか、するとすれば、どのように地盤に配慮した構造になるのでしょうか

 五十川 もともと、沢地形が輻輳的に入り組んでいる集水地形であり、平成19年の地震からの復旧の際には、H形鋼による抑止杭や地盤改良して盛土を構築したわけですが、それが今回の地震で崩れてしまいました。他の箇所と同じように現行基準に合わせた盛土補強で復旧するという案もありましたが、ここは能登大橋に隣接しているということもあって、盛土の沈下により通行できなくなるリスクがあります。そのため、新設の迂回路橋では、集水地形区間を橋梁で飛ばすことを計画しています。迂回路橋の延長は678mで、現橋と並行するPC5径間連続箱桁橋部394mに加え、ポステンの7径間連続T桁橋284m部分が現橋と比べて延長される計画になります。橋脚基礎には場所打杭を施工します。また、現橋と近接しておりますので、現橋への影響が生じないように、橋脚の位置は前後にずらしています。

 ――今後の新しい橋の開通の見通しは

 五十川 現時点では明示できませんが、できるだけ早く供用できるように進めます。

 ――構造物をスムーズに製作するために苦労するのが生コンの供給です、能登復興事務所でも河原田川の護岸構築の際に現場に生コンプラントを使って供給していましたが

 五十川 生コンのひっ迫状況は仰る通りです。七尾のプラントも港湾の復興需要などでひっ迫していると聞いています。これから県市町の復旧復興が本格化する中でセメントだけでなくあらゆる資材のひっ迫は、私共としても懸念しております。

 生コンのプラントを新しく造ることも、状況を見て選択肢として考えなくてはならないでしょう。

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本線を使って資材などを搬入するしかない状況

 ――いったん切土して2期線側に交通を振っている仮復旧を、1期線を補強することによって線形を戻す本復旧の進展については、今年度、どの程度進捗する予定ですか

 五十川 工程や工期を見通すことはなかなかできない状況です。山の中を走っている道路ですので現場は外からアプローチすることができず、本線を使って資材などを搬入するしかない状況です。そのため、一つ一つの工事に時間がかかります。

 急カーブ・急勾配で、交通の安全性が懸念されるのはやはり降雪期です。それまでにはできるだけ線形を改善し、安全性を向上できるように頑張っていきたいと考えています。

 ――ありがとうございました

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