Interview

第二関門橋の期待も高まる九州地方整備局

2024.07.16

球磨川沿いの道路・橋梁の復興をスピード感をもって進めていく

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国土交通省
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劣化状況の見える化が可能な剥落防止工 無繊維型高強度透明樹脂 確かな技術で社会基盤の発展に貢献する スーパーブラスター工法

レーザープロファイラ調査などの点検手法を導入

一巡目点検Ⅲ判定橋・トンネルの修繕はおおむね完了

 ――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況についてお答えください。また具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです。トンネルの点検状況、トンネルついて橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください

 三保木 橋梁については、九州地方整備局では、個別施設計画を策定し、早期に予防保全に移行できるよう、Ⅲ判定の措置を中心に対策を進めているところです。一巡目検結果に基づく橋梁修繕着手は2022年度末までに要補修個所304か所中268か所で完了しています。修繕完了率は88%に達しています。

 損傷状況としては、水が原因と考えられる鉄筋腐食、コンクリートの剥離、ひびわれ等があり、対策として、断面修復やひび割れ注入を行っています。


道路橋でⅢ判定が確認された損傷の例①
(左)祓川(はらいがわ)橋(上り) 国道10号 福岡県 2023年度点検
(右)世安橋 国道3号 熊本県 2021年度点検

道路橋でⅢ判定が確認された損傷の例②
(左)池ノ原(いけのはる)橋 国道210号 大分県 2022年度点検
(右)伊万里高架橋(上り) 国道202号 佐賀県 2023年度点検


 トンネルについては、一巡目点検結果に基づく橋梁修繕着手は2022年度末までにおおむね完了しています。修繕については、おおむね完了しています。トンネルの損傷状況は、経年劣化(小規模うき等)や補修材の劣化、漏水等が多く、対策として、コンクリート片の落下防止対策、導水対策を行っています。


トンネル損傷事例写真

JFEスチール 鋼管 確かな技術で社会基盤の発展に貢献する

2024年度の橋梁補修工事は、現在31件を公表

床版防水設置率は約2割

 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と2024年度の施工計画について、また鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査および要補強対策工について該当橋についてお答えください。また、コンクリート桁・床版部においてどのような損傷がでているか教えてください。加えて整備局が管理する橋梁における床版防水の施工状況(コンクリート床版を有する全橋梁に占める施工済み割合などが分かれば)、今後の施工方針、採用する工法などを教えていただけましたら幸いです

 三保木 橋梁補修工事は、2020年度から2022年の3年間で、98件の補修工事を実施しています(橋梁補修工事83件、塗装工事15件)。

 鋼床版の疲労亀裂に関しては、詳細調査及び補修工事の実績はありません。2024年度の補修工事は、現在31件を公表しています。コンクリート桁については、主桁下面にひびわれ、剥離鉄筋露出、漏水、床板については、うき、漏水などの損傷がありました。平成14年3月の道路橋示方書より床版防水の設置が原則化されているため、新設については、それ以降の橋梁には設置されています。管内で約2割設置しています。

橋梁補修事例集

トンネル補修状況写真


 ――支承取り換えや、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について今年度の施工予定個所数と取替える際の工法・種類をお答え下さい

 三保木 令和6年度は、現在のところ、支承取替は1工事、伸縮装置補修を5工事、伸縮装置の取替を1工事公表しています。

 ――塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化の有無。劣化があればどのような形で出ているか(劣化部位やその劣化程度、面積)、またその対策工法などを具体的な橋梁などを挙げてお答えください

 三保木 塩害の可能性がある橋梁の中で、近年点検した橋梁のうち、塩害が原因となったⅢ判定の橋梁は確認されていません。損傷状況としては、コンクリート主桁下面の小規模な剥離・鉄筋露出等があります。

 アルカリ骨材反応については、修繕代行で行っている鹿児島県薩摩川内市の「天大橋」で確認しています。残存する反応性骨材の膨張により、橋のつなぎ目(中央ヒンジ部)の垂れ下がりの懸念があったため、橋のつなぎ目を連続化する対策を実施しています。

鋼橋塗替えは9件で実施

耐候性鋼材は176橋 Ⅲ判定箇所も散見

 ――2023年度の鋼橋塗替え実績(橋数と面積)と、2024年度の鋼橋塗り替え予定(同)は。また塗り替えの際の全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや昨年の厚生労働省・国土交通省から出ている2014年5月30日に出た文書をはじめとした一連の文書・通達を受けて、鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。加えて、耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てきていますが、整備局では採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください

 三保木 2023年度の鋼橋塗替実績は、大分県国道210号の天ケ瀬第一高架橋など31工事、面積約23000m2です。2024年度は福岡県国道3号矢部川橋(上り)など9件の塗装塗替工事を公表しています。

 鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理については、労働者の健康障害防止を確実に実施するため、有効な保護具の着用等を実施し、閉鎖された作業場で作業を行う場合は、剥離等作業は必ず湿潤化して行うこと、適切な除じん機能を有する集じん排気装置を設けること、粉じんを外部に持ち出さないよう洗身や作業衣等の洗浄等を徹底すること等の措置を徹底しています。

 耐候性鋼材については176橋で採用しています。耐候性鋼材を用いた橋梁の健全度について、伸縮装置からの漏水や床版からの漏水、雨水の滞水、結露等が原因と考えられる腐食が確認されています。そのうち、12橋はⅢ判定となっています。大分県国道210号の石井高架橋で耐候性鋼材の腐食についての補修方法として、ブラスト処理し、部分塗り替え塗装などを実施した事例があります。


耐候性鋼材の損傷状況と補修状況写真

レーザープロファイラ調査などの点検手法を導入

NETIS登録技術も積極活用

 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいます。九州地方製整備局も滝室坂の崩落や、筑後川流域、球磨川流域、2022年の宮崎で起きた国道327号の一部の崩落事故など、水害による被災は記憶に新しいと思います。河積阻害率の高い橋梁の改良や補修もしくは更新(架替)、道路に面する斜面や、古い法面、盛土構造などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください。また具体的な要対策箇所数と進捗状況などについてもお答えください

 三保木 これまで、のり面・斜面の危険箇所について、構造物の設置等による対策を実施するとともに、 異常降雨に対しては、事前通行規制により通行止めを行い利用者の安全を確保してきたところです。また、法面対策等の局所対策だけでなく、バイパスを整備することにより、ネットワークの機能強化を図っています。

 令和2年7月豪雨をはじめとする近年の豪雨では、道路区域内だけで なく道路区域外からも土砂崩落が発生し、長時間にわたる通行止めが生じるなど道路交通に支障を及ぼす事態が発生しました。

 このため、道路の法面や盛土において、レーザープロファイラ調査等の高度化された点検手法等により新たに把握された災害リスク等に対し、豪雨による土砂災害等の発生を防止するため、国土強靭化5カ年加速化対策等により法面・盛土対策を推進しています。

 また、橋梁についても渡河部の橋梁流失などの災害リスクに対し、国土強靭化5カ年加速化対策により、橋梁の洗堀・流失対策を推進しています。

 ――新技術や、コスト縮減策または独自の新技術・新材料などの活用について

 三保木 九州地方整備局では、定期点検の高度化・効率化を図るために、点検支援技術の活用を推進しています。例えば、トンネル覆工コンクリートの変状を画像等で計測・記録する技術や、橋梁点検では水中部など、人による外観性状の記録が困難な場所での写真撮影や記録について、水中ドローンを活用することで、点検を効率化しています。

呼子大橋などで直轄代行

笹原トンネルでDX活用

 ――特殊・長大橋梁の架替や大規模修繕、長大トンネルの修繕事業等について。また権限代行で自治体が保有する橋梁などの構造物の点検や補修補強もしくは架替を行う事例の進捗中案件などについて教えてください

 三保木 九州地方整備局は、佐賀県の呼子大橋と鹿児島県の天大橋について直轄診断と修繕代行事業を実施しています。

 天大橋は、全長約500mの橋梁であり、橋脚のひび割れ、橋のつなぎ目の沈下に対する補修を行う事業です。

 呼子大橋は、全長728mの橋梁であり、箱桁内面側のひび割れ、制震ワイヤの破断、定着部の損傷に対する補修を行う事業です。現在、斜張橋のケーブル振動抑制対策について分析等を進めており、結果が纏まり次第、専門家にご確認いただく予定としています。

 ――新設・災害復旧・保全問わず、安全性の向上、業務の効率化やDXの活用事例について教えてください

 三保木 新設におけるDXの活用事例として、笹原トンネル(八代河国:宇土道路)での事例があります。本トンネルは、国土交通省による「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト(2022年度)」(PRISM)の試行現場に選定しました。


デジタル現場の構築/AIによるGNSSの誤差補正


 技術Ⅰ「AI,IoTを始めとした新技術等を活用して土木又は建設工事における施工の労働生産性の向上を図る技術」と技術Ⅱ「データを活用して土木工事における品質管理の高度化等を図る技術」の両部門を試行しています。

 効果の一例として、土砂運搬ダンプ等の運行管理業務において、システムの中から得られた残土運搬車両の位置や速度などの情報をAIに学習させ、走行時に異常が見られた際に自動でアラートを発したり、GNSSの誤差を補正させ、地図にない走行経路の検出と修正を自動で行うことを可能としました。

 運行管理者は、アラート通知の際にだけモニター画面を確認して対応すれば良く、これにより運行管理者が常時モニターを監視する必要がなくなり、作業時間を90%以上縮減することができました。


トンネルや橋梁の点検支援技術


――今後の管内の整備課題などについて

 三保木 九州は台風や豪雨災害の最前線であり、地震被害や火山噴火のリスクも抱えています。南海トラフ巨大地震といった大災害リスクを抱えているという地域でもあります。

 そして、熊本のTSMCの進出を筆頭に、日本の経済安全保障の最前線を担う地域であり、新生シリコンアイランド九州に向けて、一丸となって取り組む必要があります。

 一方で高度経済成長期に整備をしたインフラは老朽化が進んでおり、その対策は喫緊の課題です。

 こういった諸課題を、スピード感を持って進めていくということが九州地方整備局の非常に重要な役割であると思っています。

 ――ありがとうございました

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