大阪湾岸道路西伸部 浪速国道、神戸港湾、阪高神戸建設部3者座談会
主塔は起重機船だけでなくクライミングクレーンを使って建て込み
主塔は起重機船だけでなくクライミングクレーンを使って建て込み
台座ブロックは航路に影響を与えないようにして施工
――施工には3,000~4,000t吊りクラスのFC(フローティングクレーン、起重機)船や台船を使うことになろうかと思いますが、その場合でも航路閉鎖をせずにやるのか、やはり航路を閉鎖してやることになるのか
糸川 航路全部を閉鎖して施工するということはありませんが、やはり主塔の架設で、起重機船(FC船)は航路から可能な限り外したとしても、それを止めるアンカーが航路に影響するので、それがどのくらいの時間が必要なのか、ということを把握し、調整していきたいと考えています。
主塔は基本的に起重機船で架設していくことになろうかと思いますが、何せ213mもの高さになるため、全てを起重機船で対応することはできません。そのためクライミングクレーンなどを使用して施工することを概略設計では検討しています。主桁は張り出しで架設していきますので、(当初の張り出しができない位置の主桁を仮支えする)斜ベント設置時や主桁を上げる直下は(主桁輸送台船やその後の施工時の安全を考慮して)航行ができなくなりますので、その辺も安全を踏まえて検討していきたいと考えています。
極力、効率の良い架設計画を定めて、物流や観光に与える影響を最小限にしていきたいと考えています。
――神戸港湾と阪神高速の施工分担の境目は
石原 基礎から主塔を載せる台座ブロックまでが神戸港湾で、主塔部から上は阪神高速が担うということになります。
――台座ブロックまでの施工で留意すべき点や工夫すべき点は
石原 港湾工事に関しては、航路を閉鎖しないように航路の外側にコンクリートのシンカーブロックを配置して、そこから起重機船に向けての綱を配置し、航路の外側にアンカーを設けることで航路に影響を与えないようにしています。
――台座ブロックの打設は
石原 コンクリートミキサー船で、現場において打設を行っていきます。
主塔、主桁とも現場で全断面溶接
鋼床版には開断面リブを採用する計画
――基礎や台座ブロックの打設についてはマスコン対策が必要かと存じます。また季節によっては暑中コンクリートや寒中コンクリートなど温度対策も必要かと思います。その対策は。また主塔のブロックごとのメタルタッチの精度や、主桁ブロックの接合方法について教えて下さい。また床版形式についても教えてください
石原 大量のコンクリートを現場打ちするため、マスコン対策は必須です。鋼管矢板の施工に時間を要するため、その時間を利用して、新しいセメントの種類の選択や、マスコンの打設方法や温度対策、コンクリート品質の管理やひび割れ対策について、有識者の方々の助言をいただきながら、具体的な方法を検討していきたいと考えています。
糸川 主塔については、外面全てを現場で全断面溶接します。メタルタッチの精度は、詳細設計で精度を設定し、管理していきます。
主桁形式は、鋼床版2主箱桁となっています。巨大な主桁同士は横桁でつながれており、主桁ブロックの架設も、横桁でつながれた状態で、台船で運搬し、桁上の吊り上げ装置で吊り上げて、ケーブルで張り出し架設していくことになろうかと思います。ブロック同士の接合は、こちらも現場での全断面溶接としています。全断面溶接をするのは、やはり塩害の影響を考慮して弱点を少しでも減らすためです。
主桁形式は、鋼床版2主箱桁
――床版は鋼床版ということですが、喜連瓜破で用いたような鋼床版を採用するのですか
糸川 現状はバルブリブ鋼床版を採用予定ですが、最終的には詳細設計で決定していきます。
――塩害対策について、長大橋や駒栄地区の海に面している高架部分はどのような防食手法を考えておられますか
糸川 基本的には重防食塗装です。また、維持管理性を考慮して桁端部に塗装周期延長鋼を採用することを検討しています。また、主塔部においては、高さT.P.+5mまでのコンクリート製の台座ブロックがありますので、鋼製主塔には波がかぶるかもしれませんが、干満差により漬かったり、姿を出したりという厳しい乾湿繰り返しが生じることの無いような構造には設計しています。これは船が衝突しないようにすることも含めて形状を決定しています。
緩衝工については、1,000t程度の船が衝突しても壊れないものを設置
領域の異なる3事業者が連携していることが一つの強み
――最近、船が長大橋に衝突する事例が増えていますが、供用後の橋梁への衝突防止対策などは考えておられませんか
糸川 小型の船舶に対しての緩衝工は考えています。これは橋を守るというよりも船を守るためのもので、台座ブロックを上に上げるような設計にしているのも、船の衝突を防ぐためのものです。確かに、船が漂流したことによる鳴尾橋の衝突や、関西国際空港連絡橋への衝突などが起きましたが、念のために、船舶の主塔への衝突解析を行い、大型の船が衝突した際の橋梁の損傷についての挙動確認は行っています。
緩衝工については、1,000t程度の船が衝突しても、船(特に弱い船首の圧壊が生じないように)も構造物も壊れないように主塔周りに設置する設計としています。
――最後に今後の事業への意気込みついてお答えください。
中西 大阪湾岸道路西伸部は大規模なプロジェクトです。神戸市中心部は渋滞が発生しており、神戸港もあることから、物流アクセスという観点でも、しっかり前に進めていくということが大事だと思っています。そうは言いましても事業を取り巻く課題がたくさんありまして、施工上の課題、資機材の高騰による事業費の問題なども出てきております。
そうした中でこの大阪湾岸道路西伸部の特徴としては、異なる3事業者が連携していることが一つの強みだと思っていますので、3事業者がそれぞれ強みを発揮して、前にしっかり進めていけるように、私としてもしっかり汗をかきながら取り組んでいきたいと思っております。

異なる3事業者が連携(再掲)

陸上部は浪速国道事務所と

阪神高速道路神戸建設部が分担して建設を進めている
石原 大阪湾岸道路西伸部は、国策として推進している国際コンテナ戦略港湾の一翼を担う、阪神港にとって非常に重要なアクセス道路になります。神戸港は現在、ポートアイランドと六甲アイランドでコンテナターミナルがございますが、本道路事業が完成すると、ターミナル間の行き来が非常にしやすくなり、大きなシナジーが発揮されるというふうに思っております。
またそもそも神戸港と大阪港は一体で、阪神港という形で、運営しています。そういう意味において、湾岸線がポートアイランドまで繋がるというのは、神戸港および大阪港のアクセスが大きく改善されますので阪神港全体としても魅力が向上するというふうに思っています。
本事務所の担当する海上部基礎は、難しい軟弱地盤があり、今まで経験したことのない支持層の深さで基礎を作りますので、難工事が予想されます。事務所としては着実に施工していきたいと考えています。
私自身、神戸出身ですので、この素晴らしい事業に携わることを誇りに、みなと神戸の新しい景観としてこの長大橋の完成を非常に楽しみにしています。
糸川 大阪湾岸道路西伸部の事業には、2017年4月より、公共道路事業と有料道路事業の合併施行方式として参画しています。弊社の担当としては、現在、六甲アイランド東工区において、鋼上部工と鋼製橋脚および、基礎工事、終点側の駒栄工区において開削トンネルの工事を進めています。昨年12月には六甲アイランドとポートアイランドを結ぶ新港・灘浜航路部において海上長大橋の工事を技術提案交渉方式で契約し、現在、詳細設計を進めているところです。
今後も様々な技術的課題があると思いますが、品質・コスト・工期の最適化を図って、後世に誇れる海上長大橋並びに西伸部事業の、より一層の整備促進に努めてまいりたいというふうに思っております。
――ありがとうございました


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