Interview

IHIインフラシステム 鋼・PCの垣根を超えた良質な橋梁を提供

2025.11.28

保全と新設の割合を7対3に 海外橋梁も積極受注

Tag
鋼橋
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橋梁が好きな人材を確保したい

国内の長大吊橋の維持管理のためにも技術力を磨く

自治体橋梁の維持管理に役立つシステムを提供

 ――下北道路の第二関門橋もあります。 

 井上 ぜひチャレンジしたいと考えています。吊橋技術は磨いていかねばなりません。日本は島国であり、関門橋、本四架橋、若戸大橋などのメンテナンスもしていかねばなりません。たとえばイギリスは、長大橋を施工できる橋梁会社はもうなくなってしまいました。日々の生活においても、緊急時においても、とっさにメンテナンスができなくなる、あるいは新橋が造れなくなるというのは、国民生活、安全の危機を招きます。

 ――本当にそう思います。さて、IHIグループは「スマホ点検士」と「AIcon診断」などのシステムコンテンツも作り、橋梁のメンテナンス分野にも力を入れられていますね。当インタビュー中でも触れられましたが、橋梁の修繕を選別するという考えは、良いと思います。IHIインフラシステムはそうした判断分野にも踏み込み、自治体橋梁の点検・維持管理などをPPPやPFI業務で受注することなども念頭に置かれているのですか

 井上 日本国内には2m以上の道路橋が72、3万橋、15m以上の橋に限っても15万橋が存在しています。これから老朽化と人口減少が重なっていく中で、点検や維持管理の効率化・適正化を図っていかなくては、年々マネジメントが難しくなっていきます。それを何とかできないか? と考えてスタートしたのが開発した諸システムです。
ただ、基本的に橋梁の点検・維持管理は地元で完結する形で守っていくのが理想であると考えています。当社のシステムはそれをサポートし、なおかつ地元では賄いきれない特殊橋・長大橋のみ我々が点検・維持管理あるいは架け替えという形で関与できれば、と考えております。

 ――姿勢はよくわかります。ただシステムは母データの蓄積数で性能が変わります。現在のIHIの橋梁支援システム群は、基本的に自社データで完結していると思います。これをどのように母データを増やし、信頼性を増していくのか? という取り組みは必要であると感じますが、そこはどのように考えますか。そもそもこれらのシステムは売ることを考えているのか、それとも無償で使用していただくことを考えているのでしょうか

 井上 試行錯誤しています。ただ、システムの売上でペイできるとは思っていません。無償での使用は考えていませんが、使用しやすいような適正な価格で使っていただき、内容をフィードバックしていただいた上でシステムの完成度を上げていき、さらに良いモノを管理者やコンサルタントに提供していきたいと考えています。

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橋梁が好きな人材を確保したい イベントや授業で認知度を高める

 ――担い手の確保。技術継承の課題、働き方改革などについて取り組んでいることは。また、どのような人材を採用していきたいと考えていますか

 井上 橋や水門など当社の造る構造物の分野が好きで興味のある人を採用していきたいですね。ただ、今は来て欲しいと待っているだけではなかなか採用できませんので、共同研究を大学や高専などと行ったり、高校や中学で出張授業をさせていただいたりなど、いろんなイベントを現場も含めて行う事で、まずは橋梁や水門など構造物分野に興味を持ってもらう、我々を知っていただくということを中心に行っています。

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ジェンダーレス、ボーダーレスに人材を採用

働き方改革 専門性を活かす仕事の割合をいかに増やすか

 ――どうしても男性が多い世界ですが、人口減が進む中でジェンダーレス、そしてIHI自体が企業の世界化を図っている中でボーダーレスな人材の確保はどのように行っていますか

 井上 採用のジェンダーレスという点では当社は進んでいます。採用年によりますが、最近でも女性の採用が4割となる年がありました。外国籍の方も毎年コンスタントに採用しています。
言葉の壁は存在しますが、海外案件もありますので、必ずしもディスアドバンテージにはなりません。今後もそうした採用の傾向を加速させていきたいと考えています。日本は保全の時代に入っていますが、世界を見渡すとかつての日本のような高度経済成長下の国も数多く、そうした国々には建設業界の技術者を志望する若い方が溢れています。インドやトルコ、ベトナムなど、当社が実際に業務を受注した国々からも採用しております。

 働き方改革は難しい課題です。「働き方改革をどうするんだ」という視点で動くと大概行き詰まります。

 私はよくエンジニアリング部門で仕事をしている人に問いかけるのですが、「皆さんの100%の時間の中で、学校で学んできた専門性がないとできない業務は何%なの?」って話をします。

 専門性を活かせる業務はせいぜい2割ぐらいしかないと思います。しかし、その「2割」は個人にとっても、会社にとっても将来的なスキルアップのための貴重な能力を開発する時間でもあります。その「2割を」いかに増やすことができるか? が業務の効率化です。単に仕事の時間を短くすることが働き方改革じゃないんです。そのため、残りの8割をできるだけ、専門とする他の人に頼めるようにする(Aの専門外はBにとっては専門になりうる)で時間を作ることが真の働き方改革であることを意識づけていきたいと思っています。とはいえ、現在の会社のシステムを崩してそうした理想に近づけるのは大変な労力であることも理解しています。今後の課題です。

 ――先代の上田社長とも話したことがありますが、若く体力がある時代の苦労や技術者同士の関係性の構築は、40代以上になった時に良質な蓄積となり、引き出しになりえます。あまり声高に言えることではありませんが、海外業務でそうした働き、知的好奇心を満たしたい方に満たさせるような働き方もあり、とは考えますか

 井上 うーん、私も猛烈に働いた時期は当然ありますが、その時に効率良く、しかも適切なアウトプットが本当にできていたか? というと、そうでもありません。

 従業員は育児や介護を抱えている方もいます。私も子供が小さいときに保育園の送り迎えを担当していました。当然、送り迎えの時間に拘束されるじゃないですか。その時の仕事に対する集中力は自分でも凄かったと思っています。

 また、育児や介護をしている方々に対するタイムシフトをずらす働き方も実践しており、できるだけ各自の事情を組んで働きやすい環境・職場を実現しようと対応しています。
最後に技術伝承ですが、最も大きい課題は、従業員の歪な年齢バランスです。最近は若手の採用を頑張っていますが、教え育てる中堅層の人員が少なく疲弊が見えています。そこをどのようにサポートして、効率化していくかを試行錯誤しています。

 ただ、この3~5年をしっかり乗り切れば、非常に強い組織になるとも考えています。技術者個人の踏ん張りはもちろん、システマチックな教育の構築も行っていきます。

 ――中堅は仕事をこなしながら教えなければならず、大変だと思います。シニアやOBの活用はどのようにしておられますか? 国内の吊橋や斜張橋などの建設技術を体感しているのはむしろその世代ですが

 井上 当然シニアにも若手の教育に入ってもらっています。実際の仕事をこなしながらの教育は業務の最前線にいる中堅が行いますが、それ以外の技術審査や定期的な面談はシニアが行うようにしています。

 ――橋梁の製作や架設は一次協力業者の技術力にも助けられています。そうした協力業者の技術力確保については、元請として助けていることはありますか

 井上 資金援助や制度的な技術教育というのは、あまり行っていません。ただ、感じるのは、昔に比べると計画の場や現場において1次協力会社の方と一緒にワイワイやりながら相談して決めるという頻度が減ってきています。そのあたりを少し見直して、時間的な制約はありますが、できるだけ一次協力会社との「相談」の頻度を上げて、さらに当社や協力会社の若手もその場に入れて経験の多い技術者と議論していく場を増やしていきたいですね。

 ――ありがとうございました。

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