国土交通省 東北地方整備局 西村拓局長インタビュー
インフラ分野におけるDX推進と業務効率化の取り組み
インフラ分野におけるDX推進と業務効率化の取り組み
働き方改革から自動化施工まで、現場の負担軽減と安全向上に取り組む
−−国交省ではDXの推進・活用を大きなテーマとしておいでですが、新設や災害復旧はもちろん、維持管理業務においても、点検作業の効率化や立会の効率化、工事や点検などの安全向上の面(無人化技術など)など用いている取り組みを教えてください。
西村 東北地方整備局では、建設DXを「発注者と建設業界の双方がICTやBIM/CIMを日常的に活用し、インフラ整備と維持管理の両面で業務をスマートに変革すること」と位置づけ、広範な取り組みを展開しています。東北6県や仙台市、建設業団体と連携した「東北未来『働き方・人づくり改革プロジェクト』」では、働き方改革、生産性向上、担い手育成の三本柱を軸に、情報共有システムによる書類作成負担の軽減や、遠隔臨場・WEB検査の標準化による移動時間・立会時間の削減を進めています。また、全事務所で三次元設計(BIM/CIM)の導入や新技術活用を推進し、ICT活用工事では発注者指定方式の適用範囲拡大も図っています。

人材確保に向けては、令和5年に「東北インフラDX人材育成センター」を開設し、シミュレーターやXR環境を活用した研修を提供しています。令和6年度には約800名が利用しており、今後も研修内容の拡充を進める予定です。
実際の現場では、i-Constructionモデル事務所である鳴瀬川総合開発工事事務所が、CIMを活用した「事業監理プラットフォーム」を構築し、調査・設計から施工・維持管理まで一連のプロセスで情報活用の高度化を進めています。


成瀬ダムでは自動化施工システムを導入し、神奈川県にいるITパイロットが400km離れた現場の建設機械を管制するなど、省人化と安全性向上を両立する取り組みも進んでいます。

さらに、吉田川の大規模河道掘削では、AIカメラやGNSSを用いたダンプ運行管理により渋滞防止を図るとともに運行日報の自動生成など省力化を実現しています。

維持管理分野でもDXの導入が進んでおり、三陸縦貫自動車道・気仙沼湾横断橋では、橋梁下面点検にドローン、主塔や斜材の点検にロボットを活用し、従来必要だった通行止めを行わずに日中の点検が可能となりました。また、除雪機械操作の習熟支援として、ワンマン除雪グレーダの操作シミュレータを開発し、東北各地を巡回させながらオペレーター育成に活用しています。


中山平大橋の施工では、鉄筋干渉の事前確認や作業員への周知、協議資料作成、地元説明などにBIM/CIMを活用し、施工精度と安全性を高めています。八戸港では、水中視界が確保できない環境に対応し、ブロック据付など各工種に適したDX技術を導入することで、工程を25%、人員を40%削減するとともに、安全性を大きく改善しました。港湾物流の効率化では、秋田港でトラック追随走行による自動運転技術の実証実験を進めており、労働環境改善と輸送力確保に向けた検討を支援しています。



また、港湾施設の計画・整備・維持管理情報を一元的に扱う「サイバーポート」を構築し、これまで重要港湾以上で運用してきたものを令和7年度からは東北の全44港に拡大しており、港湾アセットマネジメントの高度化にも取り組んでいます。

人口減少と災害リスクにどう向き合うか
防災・脱炭素・DXを踏まえた今後の取り組み
−−最後に一言お願いいたします。
西村 東北地方のインフラを取り巻く課題は多岐にわたりますが、大きく言えば、人口減少への対応と、災害リスクの高まりへの対応が重要だと考えています。地震への備えに加え、近年は雨の降り方が明らかに変わってきており、豪雨災害への対応は喫緊の課題です。
人口減少が進む中では、地域のサービス機能を単独で維持することが難しくなっていますが、道路ネットワークを強化することで、一定時間内に到達できる人口規模を維持・拡大することが可能になります。人口減少下においても、地域の機能を持続させるために、道路整備は重要な役割を果たすと考えています。
一方で、豪雨災害については、従来の治水事業だけでは対応しきれない状況となっています。河川整備などのハード対策に加え、田んぼダムの取り組みや、都市政策・住宅政策といったソフト施策とも連携し、関係者が一体となって取り組む流域治水の考え方が、今後ますます重要になります。
また、脱炭素への対応も国としての大きな目標です。東北地方、特に日本海側の風況を生かし、洋上風力発電の導入を進めるとともに、それを支える基地港湾の整備にも取り組んでいく必要があります。
さらに、東日本大震災を経験した地域として、その教訓を将来にわたって継承していくことは大きな責務です。国営追悼記念公園の整備を進めるとともに、福島国際研究教育機構(F-REI)の施設整備など、復興に向けた取り組みを着実に進めていきたいと考えています。
加えて、担い手不足が進む中では、DXの推進が不可欠です。生産性向上や働き方改革、安全性の確保につながるDXを現場に実装しながら、人口減少、災害の激甚化、脱炭素といった複合的な課題に対応し、東北の特性を生かした持続可能で強靱なインフラ整備に取り組んでいきたいと考えています。
−−ありがとうございました。





