Interview

福北高速 福岡高速空港線延伸事業は難易度の高い工事

2024.10.22

北九州高速の大規模修繕、耐震補強事業に着手

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福岡北九州高速道路公社
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>喜安 和秀氏

福岡北九州高速道路公社
理事長

喜安 和秀

 福岡北九州高速道路公社は福岡高速の6路線59.3kmと北九州高速の5路線49.5kmを管理するとともに、福岡高速3号線(空港線)の延伸事業および北九州高速5号線の延伸(戸畑枝光線)事業を進めている。さらに、北九州高速では、老朽化対策として1~3号線の床版などの大規模修繕事業や耐震性能を2まで上げる耐震補強事業を実施している。また、福岡高速でも1~5号線の老朽化対策として床版などの修繕や、1、2、4号線で交差点部への恒久足場の設置などを進めている。これらの事業について喜安和秀理事長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

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北九州高速では5号線の延伸事業や耐震補強事業が進む

就任は令和元年11月 翌年1月には新型コロナが発生

令和3年にはアイランドシティ線開通と公社設立50周年

 ――理事長に就任されて以来のなしえた成果や今後の改善すべき点について教えていただけましたら幸いです
 喜安理事長 私が就任したのは令和元年の11月ですが、翌2年の1月に国内で新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」)が発生しました。4月には初の「緊急事態宣言」が出され、公社でも在宅勤務やテレワークを導入しました。ただ、料金収受員や建設現場で働く方については、そうした在宅勤務ができず、現場での感染対策が大変でした。

 一方で、事業としては当時アイランドシティ線の工事が最終局面に入っていました。同事業は九州地方整備局の港湾整備事業および福岡市の街路事業と公社の有料道路事業の合併施行であり、令和2年度内に供用する目標でしたが、目標に間に合わせるために、いろいろ調整しました。アイランドシティ線は既設の1号線から分岐する線形ですが、分合流部での既設の橋梁と拡幅する橋梁の接合が、当時鋼部材のひっ迫もあり、当初想定していたやり方ではうまくいかず、現場でかなり苦労しながら施工しました。施工業者の方にも非常に協力していただき、公社職員も頑張ってくれて何とか令和3年の3月に開通させることができました。

 開通式については、新型コロナの時期と重なったことから規模も縮小しましたが、無事開催することができました。


アイランドシティ線


 引き続き公社では福岡高速空港線の延伸事業を行っています。令和3年5月に整備計画を変更して、同年7月に事業着手しました。現在は用地買収を進めています。

 令和3年の11月には、公社が国、福岡県、福岡市、北九州市の3者によって昭和46年に設立されてから50周年を迎えました。新型コロナもあり大規模なイベントはできなかったのですが、写真コンテストやお仕事体験を開催するなど記念行事を行い、50年史もまとめました。

 ――名古屋高速道路公社と時期的にはほぼ一緒ですね。

 喜安 そうですね。名古屋公社が昭和45年と1年ほどはやいです。

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最初に供用した区間は40年が経過  

北九州高速では5号線の延伸事業や耐震補強事業が進む

 ――老朽化対策と北九州高速の延伸事業は

 喜安 福岡・北九州高速とも最初に供用してから40年が経過しており、老朽化対策が課題になっています。福岡高速では平成24年から老朽化対策を始めており、北九州高速は、令和4年に料金認可で償還期間を50年から10年延長することによって財源を確保し、老朽化対策にも着手することになりました。北九州高速で一番古いのは、旧日本道路公団から引き継いだ4号線ですが、既に平成15~20年度に大規模補修を行っています。令和4年4月からは1、2、3号線の老朽化対策に着手して、現在実施中です。


床版の損傷

中央分離帯の大規模補修(平成15~20年度実施)


 北九州高速5号線の延伸(戸畑枝光線)事業も進めています。戸畑枝光線は、北九州高速の整備計画から平成16年に削除されましたが、北九州市が平成23年以降、街路事業として着手して工事を行っていました。その後令和5年の整備計画変更で北九州高速5号線の延伸事業として、公社の有料道路事業としても再度これに取り組むことが決定し、同年4月に公社として事業着手しました。合併施行で、本体部分は北九州市が施工しますが、公社は表層(基層・中間層までが北九州市施工)や付属施設などを施工し、有料道路として管理する予定です。


北九州高速5号線の延伸(戸畑枝光線)事業


 本事業は戸畑~枝光間に1ヶ所牧山出入口を新設する計画であり、牧山~枝光間が1期区間、戸畑~牧山間が2期区間となっています。

 1期区間については、北九州市の施工によりほぼ本体構造が出来上がっていますが、昨夏に大雨があって、市が施工していた擁壁が変位するという事象があり、外部有識者も含む検討会議での検討の上、現在市の方で復旧工事を進めています。公社としてはそれが終わり次第、舗装工や付属施設の施工を進め、令和6年度内には工事を完成させたいと考えています。

 2期区間は、北九州市が現在用地買収を行っており、公社は当面は設計などを行う予定です。

 ――耐震補強事業は

 喜安 北九州高速では過年度の対策で、兵庫県南部地震と同程度の地震に対して落橋・倒壊しないレベル(耐震性能3)を全線で確保していますが、速やかな機能回復が可能なレベル(耐震性能2)は5号線を除く1~4号線の多くの区間で達成していません。緊急輸送道路として耐震性能2を確保するため、令和5年に北九州高速の耐震補強事業も整備計画に組み込み、令和5年度に事業着手しました。老朽化対策工事と併せて、支承部の補強、縁端拡幅、落橋防止装置の設置などの耐震補強事業を進めていくこととしています。

 ――結構な量になりますね

 喜安 そうです。令和5~21年度までの17年間で実施する予定です。現在行っている橋梁補修工事と一緒に足場を共有して、効率的に施工できればと考えています。

福岡高速空港線 高架橋が7割、空港口交差点は地下構造  

福岡国道事務所との事業連携が重要

 ――2番目に新設事業ですね、先ほど空港線の新事業のお話しをされましたが、主な構造物を教えてください。アイランドシティ線もかなり難易度の高い現場でしたが、空港線はもっと難易度が高いのではないでしょうか

 喜安 空港線は延長の7割ぐらいが街路空間の中の高架橋となります。国道3号との交差点は地下構造で、3割くらいが地下構造とその前後の擁壁構造となります。空港北口交差点では平面交差になり、空港へは右折してアクセスします。

 一方、国土交通省九州地方整備局福岡国道事務所(以下、「福国」)は国道3号博多バイパスを一部立体化する事業として、高架橋で空港口交差点を立体化するという事業を進めています。


博多バイパス(下臼井~空港口)事業概要図(九州地方整備局発表資料より抜粋) それと交差する形で空港線は建設される


 ――空港口交差点付近は上も下も交錯して大変複雑な工事になりそうですね

 喜安 公社と福国の事業が輻輳しますので、福国と事業の連携や調整が大変重要となります。街路も国道3号も交通量が多いですが、公社、福国とも、街路および国道3号の切り回しをしながら施工する必要があります。

 ――そもそもこの事業の延長は

 喜安 本線の延伸区間に、既存の高速道路の拡幅区間や連結路を含めた総延長で1.8kmです。現在空港方面は空港通り出入口がありますが、天神方面からしか出入りができず、太宰府方面からアクセスができません。空港北口出入口(仮称)を新設するとともに、太宰府方面から来た車も空港方面にアクセスできるよう、連結路0.4kmも新たに施工します。本線関係の施工延長が1.4kmですので、合わせて1.8kmです。

 ――太宰府方面からの連結路の構造は

 喜安 全て高架構造となります。

 ――空港口交差点の上は博多バイパスが通るわけですが、博多バイパスの橋脚と都市高速の地下構造が非常に近接しているように感じます。施工はほぼ同時に行っていくようで、お互いの施工に影響を与えないようにすることがすごく重要になってくると思うのですが、どのような配慮をされていますか。地盤の内容も含めて教えてください

 喜安 検討中ですが、基本的に土留め工を用いて掘削する形になると思います。施工については、福国とも調整しているところです。

 地盤は、上が沖積層で下が洪積層となっており、支持層は10~15m程度と見込んでいます。


空港線地質条件図


 ――地下構造物は何mぐらいの深さを掘るのですか

 喜安 深さ的には10m近くに達すると考えています。掘削時のネガティブフリクションなどを防ぐために土留めをセットしたうえで掘削を行います。土留めの詳細な手法は検討中です。

――現状でも街路は5車線なのにさらに複雑な形状になるのですね

 喜安 都市高速としては、立体交差構造にすることで渋滞が発生する交差点をスルーすることができるというメリットが生じます。博多バイパスも部分的に連続立体化されますので、渋滞緩和面でのメリットは大きいと考えています。

 ――事業の進捗状況は

 喜安 現在は用地買収中です。

 ――工事着手はいつごろになりそうですか

 喜安 まず、福岡高速本体を施工する際に支障となる物件の移設をしないといけないので、昨年度から移設工事をはじめています。本体施工は用地買収の進捗次第ですが、できるだけ早く着手したいと考えています。

 ――橋梁・高架の橋梁形式および延長比率は

 喜安 鋼橋が8割でPC橋が2割程度を予定しています。

 ――床版構造は

 喜安 RC床版と合成床版を採用する計画です。

 ――橋種の選定理由は

 喜安 下の街路との関係上、橋脚配置が制約となり、スパンを飛ばせる鋼橋を多く採用することになりました。連結路は曲線区間となり、橋が輻輳するため、構造も複雑です。

 ――鋼橋の架設方法は

 喜安 クレーン+ベント工法が基本です。ただ、まだすべての架設工法は確定できる状況ではありません。

 ただ、最近の静岡での事故などの教訓も踏まえて、ベント架設においても転倒防止などの安全対策はしっかりやる必要があります。特に桁架設時はかなり注意をしなくてはいけないと考えています。

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