Interview

福北高速 福岡高速空港線延伸事業は難易度の高い工事

2024.10.22

北九州高速の大規模修繕、耐震補強事業に着手

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福岡北九州高速道路公社
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橋梁、トンネル等の構造物の補修・補強のスペシャリスト 近接目視点検 非破壊検査 おまかせください コンクリートを”はつる”

福岡高速 千鳥橋JCT~榎田間で通行止めして大規模修繕工事  

北九州高速大規模修繕 現行基準より薄い床版を炭素繊維シート貼付補強  

はつり方法は電動チッパーを採用 断面修復材は低弾性PCM

 ――先ほど理事長がおっしゃった老朽化対策について、北九州高速の1~3号線の概略をまず教えてください。

 喜安 3号線(愛宕JCT~東港JCT間)1.8kmは全線が供用してから40年以上経っています。1号線は平成12年に延伸した区間を除く、横代~下到津間7.7kmが対象です。2号線(小倉駅北~若戸)は土工区間が多く、橋梁部のみ3.0kmが対象です。一部先行して補修した区間も含めて合計12.5kmを対象としています。

 いずれも床版防水は未設置ですので、基本的に全区間に渡って床版の補修および防水工を施工していきます。

 令和4年度に最初に勝山~日明間の工事に着手しました。舗装を剥いで床版の部分補修と床版防水工を行っていきます。北九州高速は、福岡高速と比べると交通量は少ないので、片側車線規制で施工しています。時間を要しますが、順次対策していきます。現在は2号線勝山~日明間のうち0.1kmと3号線の約0.8km、先にお話ししました1号線の約1kmが完了しており、1号線紫川JCT~東港JCT間約1kmと、3号線愛宕JCTの0.2kmを実施中です。

 ――床版補修ですが、都市高速は床版上面をはつる際、押並べてウォータージェット(WJ)を使う方針が多くなっています。従来のブレーカーはつりではマイクロクラックやフェザーエッジが出てしまうためですが、どのようなはつり方法を考えていますか。またその上の補修材は母材の損傷状況に合わせてジェットコンクリート、UHPFRC、あるいは低弾性の補修材を用いる。防水工は通常のアスファルト系防水材だけでなく、主にウレタン樹脂系の高性能床版防水、あるいは複合床版防水工を用いる事業者もいますが、福北公社としてどのような工法を用いているか教えてください

 喜安 はつり方法は電動チッパーを採用しています。マイクロクラックの発生、鉄筋の付着切れ防止の観点からブレーカーは使用しておりません。

 防水工は床版の損傷度に応じて複数の工法を使い分けています。損傷が軽い順から①塗膜防水、②複合防水を用いており、特に損傷の著しい床版には③改質グースアスファルトを床版防水として基層に採用しています。


床版防水層の施工



鋼製ジョイントの取替①


 断面修復材は従来速硬性コンクリートを使ってきましたが、(損傷した母材に比べて)強度が出すぎて、高弾性となるため、平成末期からはそのような「硬い」断面修復材は使わないようにしています。

 ――では断面修復材は名高速などと同じく低弾性ポリマーセメントモルタルを使っているということですか

 喜安 そうです。

 ――断面修復材を施工する前にはどのような表面処理、打ち継ぎ処理を行いますか

 喜安 細かいはつりガラも除去するなど表面の清掃を徹底しています。表面断面修復材の施工にあたっては対象となる全面に接着剤を塗布したうえで施工します

 ――下面からの床版補強などは行いますか

 喜安 施工予定です。手順としては、先に上面の補修および防水工を施工してから、下面補強を行います。S48道路橋示方書に基づき設計された床版厚の薄いRC床版が対象です。1号線、2号線、3号線に対象となる床版があります。まずは床版上面の施工が完了した3号線の0.8km区間に関して炭素繊維シート貼付けによる床版補強を順次施工していきます。


炭素繊維シートによる床版下面貼付け補強


 ――上面においては床版防水や補修というメニューは提示されましたが、伸縮装置や伸縮装置周りの補修は行わないのですか

 喜安 損傷状況に基づき必要な箇所は補修ないし取り替えていく方針です。

 ――塗装なども大規模修繕工事の一環で塗り替えていきますか

 喜安 桁端塗装や部分塗り替えなど損傷を確認した上で塗替えを行っていきます。 


桁端部の塗装(施工前⇒ブラスト完了状況⇒上塗り塗装状況)


 ――PCBや鉛を含有している塗装を有する橋は残っていますか

 喜安 PCBに関してはかつてそれを含んだ既設塗膜を有する鋼橋がありましたが、それらの塗膜除去は令和元年度までにすべて完了しています。塗膜処理は県内の無害化処理認定施設にて行いました。鉛を含んでいる既設塗膜はありますので、塗り替えの際は対策を施しながら施工していくことになります。

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福岡高速 千鳥橋JCT~榎田間で通行止めして大規模修繕工事  

千鳥橋JCTの太宰府方面から天神方面への渡り線を10日間の通行止めして工事

 ――福岡高速における老朽化・予防保全対策について教えてください

 喜安 福岡高速では平成24年から老朽化・予防保全対策に取り組んできました。しかし、千鳥橋JCT~榎田間が、騒音の問題で夜間工事が難しいこともあり、まだ床版防水工が未設置です。交通量が多い区間ですが、施工方法については検討した結果、区間を区切って通行止めを10日ほどさせていただいて、その間に工事を行うこととしました。昨年11月に千鳥橋JCTの一部区間(天神方面から太宰府方面への渡り線)で初めて10日間の全線通行止めを行い、工事を実施させていただきました。

 ――具体的な工事の内容は

 喜安 床版の補修と、床版防水層を設置する工事です。いずれにせよ舗装を剥がないと施工できません。片側ずつ規制するやり方も模索しましたが、規制期間が長くなってしまうこともあり、10日間の全面通行止めにより施工しました。

 今年度は秋に昨年度と反対方向となる千鳥橋JCTの太宰府方面から天神方面への渡り線を10日間の通行止めとし、昨年と同様の床版補修および防水工を施工していきます。今後は、千鳥橋JCTの香椎方面と太宰府方面間の両方向、呉服町~榎田間の施工も残っており、段階的に施工していく予定です。

 ――以前、1号線の香椎の方を取材した際、ジョイントの撤去・再設置や床版防水層の施工などを行っていました

 喜安 香椎付近は一番古い路線の一部だったのですが、その修繕はほぼ完了しています。


鋼製ジョイントの取替②


 ――千鳥橋JCT付近の大規模修繕は何年ぐらいのスパンを考えていますか

 喜安 渋滞の状況などを考えて、施工時期および施工期間を決めていく必要があり、ある程度の年数はかかると考えています。

恒久足場設置箇所 防食塗装系のグレードを内面塗装レベルへ  

維持管理支援システムを活用 改質グースの採用も福岡高速で進める

 ――維持管理に関して新技術新工法の適用事例やその詳細について教えてください

 喜安 まず橋梁下面の恒久足場の設置があります。福岡高速の老朽化・予防保全対策のメニューの一環として取り入れているものです。福岡高速は高架橋下の街路の交通量もかなり多く、とりわけ交差点部は福岡高速の高架橋を下から点検しようとしても、規制などが難しい状況です。そうした箇所に設置していく予定です。既に3か所に設置済みです。工事中が9か所に上ります。材料指定はせず、性能規定で定めています。


恒久足場設置状況①

非常に交通量の激しい交差点に設置されている / 恒久足場の内部状況


 

 今後も恒久足場については設置場所を増やしていく方針です。

 ――恒久足場を使った場合、中の防食塗装系のグレードを落とす考え方がありますが、福岡高速については、どのように考えますか

 喜安 塗装塗替えについては、ふっ素樹脂系で塗り替えることをやっています。一方で、恒久足場で覆う箇所については、大規模な塗装塗替え自体をしなくてもいいのではないかと考えています。具体的には損傷している塗膜だけをケレンして部分的に塗替えるだけで良いと考えています。経過の確認は必要ですが、塗替え塗装系も桁内面塗装程度としていきたいと考えています。

 ――ほかに新技術系は

 喜安 公社では3次元点群データを福岡、北九州の両高速とも取得し、同データを用いた維持管理支援システムを導入しました。現場に行かなくても、画面上で計測すれば、そこで離隔等はわかりますので、維持管理作業の効率化を図れます。

 ――維持管理支援システムはいつから稼働しているのですか

 喜安 福岡高速は令和4年度から、北九州高速は令和5年度から稼働しています。

 ――今からは点群データを維持管理に活用していくということですか

 喜安 維持管理作業における事前準備などに利用していきます。

 ――最終的には橋梁台帳の4D化は国交省をはじめとして各事業者とも狙っていますが、福岡北九州高速道路公社も、この3D点群データを取り扱いしやすいようオブジェクト化し、時系列的にまとめ4D的な橋梁台帳にしていくということですか

 喜安 現在、取得データは3D化した構造物データで格納されています。

 今後は、オブジェクト化した3Dデータの部位をクリックすることで過去の
点検データが出力されるといった維持管理支援システムの整備を検討していきます。


維持管理支援システム


 ――床版の保全分野の維持管理にも力を入れていますが、新技術・新材料の採用事例などがあれば教えてください

 喜安 福岡高速では、従来のアスファルト塗膜系に加えて、一部改質グースアスファルト防水も採用しています。イニシャルコストは高いですが、同防水は舗装基層も兼ねる35~40mmの厚さであるため、品質は従来の防水工(厚さはμm単位)と比べて安定しており、基層も兼ねることから施工効率も向上します。コストアップ分はライフサイクルコストを縮減するということで回収できればと考えています。


改質グースアスファルト防水


 ――床版の点検にAE法を採用して床版コンクリートの点検を行っていましたが、これは本格的な適用に至っていますか

 喜安 コンクリート床版の補修工法のひとつとして、福岡高速2号線ではIPH工法を試験的に採用し、深さ方向評価、面的評価、定量評価の3点で補修効果の確認を行っています。深さ方向の評価はコア抜きによる目視確認で充填を確認していますが、面的評価は(株)東芝と京都大学が保有する床版内部のひび割れ検出技術であるAE(アコースティックエミッション)センシングを用い補修の前後に計測し弾性波計測密度の改善を確認しています。この技術は舗装上面を走行する一般車両から発生される弾性波を計測するというものです。さらに、補修効果の確認に加え、床版に損傷を内在している可能性のある床版のスクリーニングとしても適用できないか(株)東芝と共に検討を行っています。定量評価は補修の前後に活荷重たわみ計測を実施し、たわみ量の改善を確認しています。

AEセンシング を用い補修の前後に計測し弾性波計測密度の改善を確認


 今後は、一部のRC床版に対し、恒久足場を設置後に補修を行い、床版の使用限界を判断するため、活荷重たわみ計測による状態監視を継続していきます。

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