横河ブリッジ 中村 譲社長インタビュー
3年の離職率は10%未満 育成プランは大きく3ステージを作成
「後方回転・自走式手延機解体装置」で国土技術開発賞を受賞
――技術的なトピックは
中村 7月31日に「後方回転・自走式手延機解体装置」で国土技術開発賞を受賞しました。水上部や環境保護のために、解体用クレーンが使用できない場合の新しい手延機解体工法です。手延機1ブロックを後方へ回転させ解体し、自走式で後方へ 運搬・搬出する装置となっています。
「後方回転・自走式手延機解体装置」
手延機上および橋脚上で撤去・搬出作業を完結させることができるため、クレーン等を据え付けるための仮桟橋の設置・ 撤去が不要で河川内の作業が少なく、自然環境にやさしい工法です。対岸の騒音問題等、なんらかの事情で作業ができないときには、逆に送り出した基地側に戻すという形で工事を行えるので、到達側で出来るだけ工事を少なくしたいなというときにも使用できる工法です。
本工法は過去に桁の架設について研究したことを生かして開発した工法です。意外に新しいことではなく、保有する技術で工夫したことで評価をいただき、我々もとても嬉しく思っています。
3年の離職率は10%未満 育成プランは大きく3ステージを作成
スペシャリストも育成し、待遇は部長と同等にして厚遇
――最後に働き方改革について教えてください。人の確保という意味では進めなくてはいけない反面、人の教育という方向には逆にそれが枷になってしまうこともあります。「ある程度仕事をすればいい」という人間と成長したい人間もいるわけですが、成長したい人間が45時間ルールなどの縛りで仕事がそれ以上できず、仕事で学ぶ時間がなくて、逆にあるいはやる気を削いでしまうこともあると聞きます。横河ブリッジとして働き方改革、担い手不足に対する問題というのはどういうふうに考えているか。逆に成長したい人を育てるという意味ではどういうふうにやっていきたいかということを教えていただければと思います。
中村 社員の年齢ピラミッドでは35歳から45歳までの10年間が極端に少なく、ここ5年間はその凹みを補うことを目標に新卒採用を増やしてまいりましたが、事業拡大のためにそれを継続するとともにキャリア採用も積極的に行なっていこうと考えています。
DXにも力を入れており、ICTや新技術を活用した現場の省人化を10%達成するという目標をたて、2年間活動しましたが、今年度には達成できる見込みも立ちました。
2020年からは、各生産本部、設計本部、工事本部、計画本部で、それぞれの人材育成のためのワーキングを行い、部門ごとの育成プランを作成し、運用をはじめています。育成プランは大きく3ステージを作成し、運用して4年目ですが効果があると思っています。
ステージ1は、技術系社員は入社して半年間現場を経験してもらいます。最初は現場のことを余り知らない人が多いので、内勤希望が多い状況です。設計ももちろんこれからの時代にも必要ですが、事業を伸ばすためには現場の配置、技術者の問題は欠かせません。そのため全国の現場にペアで経験を積んでもらうことにしました。そうすることによって、「現場はつらそう」、「職員が厳しそう」などの現場への先入観をなくすことができました。実際、半年間経過した後は「楽しかったです」や「現場の皆さんが優しくて」などの感想を聞くことが多く、現場に対しての変な先入観、変な意識がなくなっているように感じます。ステージ2に行く前に、本人たちの次の配属の希望を聞きます。会社にも枠があるため、もちろんあくまで希望ですが、面接の中で改めて希望を確認します。今まで現場勤務はいきなり希望を聞いても希望者は少ないのですが、半年間経験してもらうことによって、希望を挙げてくれることも多くなってきました。どうしても当社は現場の比重が高いため、このプランで現場の希望も増加したことは良い結果になったと思います。
ステージ2では配属された部署(設計本部、生産本部、計画本部、工事本部)に3年間、実践しながら基本を学びます。
次のステージ3では6〜8年間で実務能力の習得を目的とします。その中でも2年に1回は自己申告制度で面接を設けているので、それによって次のジョブローテーションで異動できるようにしており、従業員の意見を聞きながら、配置に取り入れることができます。入社して10年目までの教育プランを実施して今年で4年目になりました。社会では3年目、30%の離職率ということが問題になっていますが、当社は3年の離職率は10%未満です。若手のモチベーションを上げるという意味では、本人の希望をかなえるようなシステムを作っている効果が出ていると思います。
ステージ3以降のステージ4では自立期として各コース(管理者、スペシャリストなど)に応じたスキルを習得していきます。まず、スペシャリストとマネジメントを選択できるようにしています。また、スペシャリストになりたい人もいれば所長になりたい人、スタッフで良い人、研究者になりたい人がいると思いますが、通常のラインでないキャリアアップの仕組みも行なっています。上級主幹という役職があって、主幹の上のレベルとなりますが、これが各部署のスペシャリストになり通常のラインでの部長と同格の役職となります。
「私も将来そういう人になりたい」という希望
――今まで横河ブリッジには数多くスペシャリストの方々がいると思うのですが、そういう人材を育てていくにはどのようなことが必要ですか
中村 目の前にいる職場の先輩方が生き生きとやっている姿を見せることでしょうね。今の若い人で、この部分に秀でたところを頑張ればこういう形でキャリアが築けるということを先輩方が見せていれば若い人にとっても、「私も将来そういう人になりたい」という希望も出てくるし、上級主幹になることはすぐには無理だとしてもスペシャリスト候補のように抜擢するということはできると思います。実際スペシャリストとして着実に成長している人材は何人かいます。
――ありがとうございました。