Interview

国土交通省関東地方整備局 岩﨑福久局長インタビュー

2025.01.01

人口減少の中、災害やインフラの老朽化に対応するための体制の維持と確保

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2025年新春インタビュー 国土交通省
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>岩﨑 福久氏

国土交通省関東地方整備局
局長

岩﨑 福久

概要動画Overview Video

 関東地方は、政治、行政、経済の中枢機能を有し、経済の集積度が高く、都市機能を支える社会基盤のネットワークが巨大化・高度化していると同時に災害リスクエリアに人口が集中している地域でもある。さらなる地域の発展、また防災や災害への対応、さらにDXの活用等を岩﨑福久局長に聞いた。

橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 鉄に寿命を与え、社会インフラを支える ラック足場

直轄国道2,429km、河川8水系約1,544kmを管理

事業を興して形にしていく事業者の仕事へ

 −−建設分野にご興味を持たれたきっかけと、大学時代に学んだこと、現在までのご経歴は

 岩﨑福久局長 私が土木の分野を志したのは、祖父が建築士だったことと、手に職を持ちたいという思いから舞鶴工業高等専門学校土木工学科に入学しました。4年生の学外実習、現在のインターンシップで本四公団の児島・坂出ルートの現場に1ヶ月くらい行かせていただいた際、企画や計画など事業を興して形にしていく事業者の仕事に関心を持ちました。その後、北海道大学に編入して、現在、中央大学の名誉教授である山田正先生に師事し、雨が降って川に出てくる降雨流出という過程を現地フィールド試験、実験、理論、数値シミュレーションと一通りのことを指導していただきました。京都大学の大学院に移ってからは、髙棹琢馬先生の下で、雨が降って川に流出し、氾濫するまでの一連の現象をリアルタイムシミュレーションするモデルの研究開発や、遊水地の多くの樋門を人が操作するのですが、それがとても大変なので、開発したモデルを用いて川の水位を予測し、それをお渡しして、操作の参考にしてもらうという応用研究的なことを行っていました。

 その後、建設省の土木研究所に入りました。全体的に見ると河川系に長く携わったという印象です。足羽川ダム工事事務所や治水課の事業監理室などではダムの仕事に携わっておりました。また、企画課長、企画調整官、あるいは企画部長など、技術系の横断的な仕事にも長く携わってきました。

道路下面施工が容易で発泡ウレタンの圧縮変形特性を活かした非排水用乾式止水材 プレスアドラー 鋼構造物の再生と環境の調和 循環式ブラスト工法、循環式ショットピーニング工法 安心で快適な生活環境の創造

足羽川ダム建設事業での町長の決断

 −−印象に残った仕事は

 岩﨑 印象に残った仕事というと、足羽川ダム建設事業で、もともと計画されていたダムの位置だと水没戸数が多く地元の同意を得ることが難しかったことから第三者委員会から見直しが求められ、ダムサイトを上流の池田町に移さなくてはならず、そのために合意形成をとる必要がありました。

 ちょうど私が足羽川ダム工事事務所に着任する1年前の平成16年に福井豪雨があり、足羽川が決壊して福井市内に甚大な被害が発生しました。着任してから河川整備計画をまとめるプロセスの中で、水害対策をしっかりやらなくてはいけないという気運が高まり、被害に遭われた下流の福井市などの首長・議会の方々がダムの必要性を理解され、池田町を訪問し、町長さんにダム建設の受け入れを要請されました。ダム建設によって水没地域には大きな影響が出ますが、町内で議論が重ねられ、「福井豪雨のような災害を繰り返さず、下流域住民のために必要なら」と苦渋の決断の末、池田町としてダム建設を受け入れていただきまして、合意形成の難しさを実感し、池田町長、町民の重く大きな決断に応えるためにもしっかりと事業を進めなければならないと強く意識したことが心に残っています。

直轄国道2,429km、河川8水系約1,544kmを管理

圏央道久喜白岡JCT〜大栄JCTの4車線化に向け事業を進捗

 −−関東地方整備局の2024年度の道路・河川・港湾の管理状況と地域特性や整備局管内の置かれた状況、それらを踏まえた事業計画について予算規模、概要と主要事業を教えてください

 岩﨑 直轄国道は2,429km、河川は8水系約1,544kmを管理しています。港湾は、国際戦略港湾3港、国際拠点港湾1港、重要港湾4港で事業を実施しています。

 今年度の予算は直轄事業費が4,653億円(前年度比1.00)、補助事業費が5,041億円(前年度比1.08)、社会資本総合整備事業費(社会資本整備総合交付金、防災・安全交付金)が8,051億円(前年度比1.02)合わせて1兆7,745億円です。

 また12/17に令和6年度補正予算が成立し、関東地方整備局には、主に「防災・減災及び国土強靱化の推進(防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策分等を含む)」等に4,189億円の事業費が配分されました。(ゼロ国債(約39億円)を除く事業費は4,149億円)

 

(関東地方整備局提供、以下注釈なきは同)


 



 

 道路の主要事業は、首都圏3環状道路の整備を進めています。圏央道については未開通区間の大栄JCT~松尾橫芝IC間の令和8年度の暫定2車線開通(※1)、高速横浜環状南線、横浜湘南道路の一日も早い完成、更に暫定2車線区間の久喜白岡JCT~大栄JCTについては令和8年度(※2)までの全線開通を目指し、安全に留意しながら事業を進めています。

(※1)大栄JCT~国道296号IC(仮称)間は、1年程度前倒しでの開通を目指す。

(※2)資機材の調達等が順調な場合。

 



 


 



 

  また、品川駅西口の基盤整備事業も進めております。国道15号に面する品川駅西口は、鉄道・バス乗り場が分散し、駅・まちの連絡性が低く、駅前広場の容量不足や歩行者の空間不足等による交通の輻輳など、交通結節点として多くの課題を抱えています。自動車交通の円滑化や歩行者の利便性向上のため、駅前広場の拡張や国道上空デッキの整備を行います。

 



 

 河川の主要事業としては、令和元年東日本台風により、甚大な被害が発生した関東4水系において、国、都県、市区町村が連携し、概ね7~8年で実施するハード・ソフト一体となった「緊急治水対策プロジェクト」により、復旧・復興と合わせた対策を進めています。また、令和5年6月の大雨(台風第2号)で、約4,000棟の甚大な内水被害が発生した埼玉県にある中川・綾瀬川流域においても「中川・綾瀬川緊急流域治水プロジェクト」を進めており、沿川の自治体と協力しながら浸水対策を行っています。

 地元の方々の強い思いをしっかりと受け止め、流域の防災・減災に向けた取組を強力に進めているところです。

 



 


 

 このほか、抜本的な治水安全度を向上させる対策として、荒川水系では荒川第二・三調節池整備事業を進めております。現在、第二調節池の囲繞堤、排水門等の整備を行うとともに、第三調節池の周囲堤、樋管を整備する等、早期の効果発現に向けて着実な事業進捗を図っております。

 


 

  また、那珂川下流部、霞ヶ浦および利根川下流部を導水路(地下トンネル)で結び相互に水をやりとりすることで、霞ヶ浦や桜川等の水質浄化、那珂川や利根川の流水の正常な機能の維持及び新規都市用水の確保を目的に霞ヶ浦導水事業を行っており、シールドトンネル工事について最盛期を迎えています。

 





 

  港湾空港事業は、羽田空港においては、空港機能の拡充や防災・減災対策等に資する事業、国際戦略港湾の横浜港・川崎港の国際競争力強化のための事業に取り組んでいるところです。

 また、国営公園等事業においては、明治記念大磯邸園の整備を進めております。令和6年の11月23日に旧大隈重信別邸及び陸奥宗光別邸跡の邸宅改修工事が完了したことから、両邸宅を公開しています。

 



 


 

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